第43回定時総会4月28日
第5分科会
同友会で学ぶリーダーシップとは〜学び、実践する仲間づくり〜
立石克昭氏(株)タテイシ広美社社長(広島同友会福山支部長)

会社概要●設立1980年●資本金1000万円●社員数18名●事業内容広告看板企画・設計・施工
「仕事は楽しく」
当社は看板と自社開発の電工掲示板製造の2本柱で経営しております。高校2年生の時に「経営者になりたい」と思い、絵を描くことが好きで、これを活かせる商売として看板屋を思いつきました。その当時からすでに、「5年後に独立」「10年後には社員10名の株式会社にする」という目標を立てていました。高校卒業後は大阪の看板屋で修行し、5年たった24歳の時、地元に戻り、結婚と同時に会社を立ち上げました。地域での人脈もなく創業したため仕事はありません。そこで、ベランダの手すりの塗り替え工事を妻と2人で始めました。妻は初めての経験で、毎日ペンキだらけになって仕事をしてくれましたが、私は申し訳なく思い、「後悔していないか」と尋ねると、「汚いものがきれいになっていくこの仕事が楽しい」と言ってくれました。この「楽しく仕事をする」ことをわが社の心情として、今でも大切にしています。社員にも「人生の一番良い時期の大半を仕事に使うのだから楽しく仕事をしよう」と話しています。
新たな事業転換、経営理念を成文化
その後、事業も順調に発展し、好景気にのって社員も増えましたが、バブル崩壊とともに売上がダウンしました。結果として、やむなく2名の社員に辞めてもらいましたが、「もう2度とこんな思いはしたくない」と経営者の姿勢を新たにしました。売上が減少する中、何かを始めなければと思っていた時、ある大手メーカーから電光掲示板の販売をやってみないかと誘われ、早速取り組みます。実際に販売する中で、お客様から「もっと違ったサイズのものは作れないか」との問い合わせがあり、メーカーに相談してみると、「小ロットではラインが動かせないので無理」との返事でした。この時、「これは中小企業でいけるな、一品勝負やろう」と思い、電光掲示板のオーダーメードを自社開発しようと決めました。わが社の事業転換のきっかけでした。周りからは「大手メーカーもやったことがない、まして看板屋が電子の世界に踏み込んでも上手くいくはずがない」と反対されました。同友会のネットワークや知人に相談して「できる」とわかり、取り組みました。まったくゼロからのスタートでしたが、現在10年目を迎え、おかげさまで全国から受注をいただいています。こうした経過から、わが社の経営理念は「お客様の繁栄を考えることが、わが社の繁栄に繋がる」としました。経営理念は昨日入った社員にもすぐ理解できる、わかりやすいものでなくてはならないと思っています。また、お客様を大切にすることが結果として自分に還ってくるということを理解してもらう意味もあります。
「いこる」経営者になろう
6年前、福山支部内のある地区の地区長を引き受け、あまり活性化されていない地区だったため、どのように活性化させるか悩みました。当時、社内でも会社の方向性が見えないと社員から指摘を受けていたので、「よし、同友会で会社のシミュレーションをしよう」と思い、地区方針を発表することにしました。その方針とは「いこる地区にしよう。いこる会社づくりをしよう」です。「いこる」とは、炭をおこす(炭が赤々と燃えている様子)という意味の備後弁です。発表では、「焼肉を思い浮かべてみてください。炭火の上に網がしいてあり、当然、焼ける部分に肉や野菜を置きます。この炭がいわば経営者で、肉や野菜は仕事であり、情報です。最近仕事がないと思うのは情勢や政治のせいではなく、経営者自身が『いこって』いないからですよ。同友会で言えば、まず役員がいこらないと人も集まりません」と話しました。これが分かりやすく役員の腹にすとんと落ちたようで、「うちの会社はいこってないな。どうすればいこる会社になるかな」と、役員会で話しあうようになりました。この話しあいが非常に盛り上がり、役員会が楽しいと言ってもらえるようになりました。さっそく自社でも「わが社はいこっているか」と問い掛け、最近では幹部会が盛り上がるようになりました。中には厳しい指摘もありますが、こうした意識を持って仕事をする雰囲気になったことを、同友会から学ぶことができました。
役員に必要な「経営の匂い」
私は会社経営と同友会活動は両輪だと思っています。同友会には会社を良くするために入っているわけで、これは役員も一会員も同じです。広島同友会では「同友会おたく」という人がいます。事務局よりも同友会のことに詳しく、運営について非常に熱心に語りますが、経営の話は一切出てこないんです。そういう人には、私はあまり魅力を感じません。私が一会員だった頃、この人ならついていけると思った役員の方は、やはり自社の話をされました。地区長や支部長が会議の冒頭であいさつをする時、必ず会社の現状を話すことで、役員を身近に感じることができました。今の代表理事の大西さんは理事会で毎回自社の話をされ、時には悩みも素直に出されます。その話を聞くと、悩んでるのは自分だけじゃないと非常に救われ、理事会のあいさつが毎回楽しみです。ぜひ役員の皆さんは、あいさつの中に、自社の話を盛り込んでください。やはり役員には、「会社を良くしたい、こんな会社にしたい」というパワーが見え隠れする「経営の匂い」がすることが大切だと思います。
リーダーの役割とは
役員の方は、運営のために同友会活動をするのではなく、自分の会社のために同友会運営をしてください。そうした姿勢を通じて、会員は同友会の魅力を感じるのではないでしょうか。リーダーの役割は自らが率先して学び、必ず実践することだと思います。役員は同友会で学んだことを自社で試して、その結果うまくいったことや困ったことをどんどん会で議論する。役員が自分の会社を良くしようとしていることが新会員から、そして地域からもあてにされる同友会になる第一歩だと思います。ぜひ皆さん、いこる役員、いこる経営者、そして経営の匂いがする役員になってください。
【文責事務局・多田】
参加者感想
●「いこる人間になろう、いこる会社になろう」。いい仕事がない、人がいない、情報がこないというのは自分や自社がいこってないからだ。「いこる」ためには想い続けること、言い続けること、やり続けること。(K氏)
●「経営者の匂いがする役員になる」。役員は同友会運営のプロになるのではない。役員は進んで自社の経営についていつも発言の中に現れるような「経営の匂いがプンプンする」役員になり、同友会活動を通じ、経営者として資質向上・企業の発展をしていくことが重要と学んだ。(K氏)
●絶対に「同友会ごっこ」になってはいけない。そういうことを堂々と言える同友会の良さを再認識した。私達は経営のプロであって、同友会のプロではない。同友会オタクにならずとも、組織のわからないことは事務局に頼ればいい。「勉強ごっこ」になっている部分もある。とにかく実践がなければ、実践して結果を出さなければ、すべてが「ごっこ」に終わってしまう。こういう同好の志が得られるのは、まさに同友会の醍醐味だ。少しの努力で見逃すのはもったいない。(R氏)
●熱気を感じ、みんながいこった状態。報告者のパワーが皆を勇気づけた。これだけの人が集まって会が行えて、これだけの人が経営について勉強していることはすごいことと思った。(K氏・S氏)
●「楽しければ…」ではなく、「いかに自社に生かすか」が大事。(T氏)