第1回新会員オリエンテーション
「自分を知るバロメーター」江口知宏氏
(有)ゑぐち社長(名古屋第1青同)
今年度第1回の新会員オリエンテーションが5月27日に開催され、名古屋第1青同元会長の江口知宏氏((有)ゑぐち社長)が体験報告を行いました。当日は新会員40名、ゲスト5名を含む73名が出席し、参加した新会員からは、「入会して1年近くになるが、もっと早くに受講していれば、違った学びがあったかもしれない」などの感想も聞かれました。
兄の遺言で会社を継いで
私には2歳年上の兄がおり、会社を継ぐつもりはありませんでしたが、私が20歳の時に病気で早世してしまいました。病院で最後に兄と会った時、「両親と会社を頼むな」と言われたことが、私が今の会社を継ぐきっかけでした。「やるならしっかりやりたい」と、東京の洋装問屋に就職しました。私自身は新鮮で充実した毎日を過ごすことができましたが、先輩社員のただ単に作業を行う姿勢や、暇があれば喫茶店へ行く姿を見て、がっかりしました。それから数年が過ぎ、今の会社に戻りました。入ってみると、前の会社と同じような状態でした。社員がサボっているのが目につくし、父もそれを注意しないし、私は「今まで両親が築いてきた会社がこれか」と、そのことで悩みました。
求めていた応えがあった
そのうちにお客様から同友会を紹介され、例会に参加しました。その時の例会は、大学教授の講演会で、私にとっては全然興味のない話でした。終わったらすぐに帰ろうと思っていたのですが、強引に2次会に誘われました。その場で、隣に座った方から話しかけられ、私は自社の悩みや不満をその人に喋りまくりました。その時に何をアドバイスいただいたか、まったく記憶にありませんが、とてもすっきりして帰ったことだけは覚えています。私の内の「求めていた応え」があったからだと思います。次の月も例会に誘われました。その例会は、創業経営者と2代目経営者とのパネル討論会で、お互いの置かれている立場の違いを生の言葉で聞くことができました。そういう世界は見たこともありませんでしたし、会社でも考えたことはありませんでした。この例会で、私は入会を決意しました。
実行委員長になって
入会した翌年、青同25周年の実行委員長になりました。私はサッカーのキャプテンの経験があっただけに「できる」と思って受けたのですが、始めてみると会議はまったくうまく進展しません。正直、「もう辞めよう」と何度も思いました。その度に、先輩会員がサポートしてくれました。それが嬉しくて、とにかく自分のできることから少しずつ始めていきました。結果、その行事には700名が参加し、成功を収めました。「一人ではできないことでも想いが伝わり一人一人が力を合わせれば、できないことでも可能にできるんだ」と感動しました。同友会は「自分を知るバロメーター」です。「できる」と思って引き受けた実行委員長でしたが、実は「全くできない自分」を発見することになりました。それからは、「一生懸命やれば、得るものがある」と信じて、いろいろな役員を受けました。
自分の仕事に懸命だったが
また私が役員会議長(副会長)という役を受けた年のことです。自分としては「役員会をうまく回そう」という気持ちでやっていました。その時にある人から、「議長としてはそうだけど、お前は副会長だろう。副を取ったら会長じゃないか。会長が1年どういう思いで会を運営したいか、ちゃんと理解してやっているか」と指摘され、はたりと思いあたりました。当時、私は専務でしたが、会社全体のことや社長が今期やろうとしていることを何も理解せず、自分のことだけを一生懸命やっていました。この時の副会長としての経験が自分の身になり、今の成長につながっているではないかと思います。ある時、自分の右腕だと思っていた社員が、突然「辞めたい」と言い出しました。お客様が潰れていくのを目の当たりにし、会社の将来に希望が持てなくなってしまったのです。私は、自分がこの先会社をどうしたいのか、まったく考えていなかったことに気づき、同友会の経営指針研究会に参加しました。結局、経営指針はつくれませんでした。専務だった私は頭のどこかで、「会社の方向性は社長が考えるべきじゃないか」と思っていたからです。
「社長になります」
そういうことで悩んでいる時に、愛知で全国総会が開催され、経営指針の分科会に参加しました。グループ討論で、「経営指針が必要だとは思っているが、社長でもない私が作っていいものなのか」と発言をしました。「そんなに想いがあるのなら、社長になりなさい。あなたがこれからやるんでしょう。逃げてるんじゃないですか」という言葉を、他県の会員から言われ、ぐさりときました。これで腹をくくりました。「ここで逃げたら男がすたる。絶対にやろう」と、次の日、社長に「社長を替わって欲しい」と伝え、その場で承知してもらいました。一大決心でしたが、社長もそれを待っていたのかも知れません。
「自分のためにやる会」
最後に、同友会は「自分のためにやる会だ」と思います。自らが主体者となって、「自分がやらなきゃ誰がやる」という意識を持って、自分から積極的に掴み取りに行くんだ、という姿勢が必要な会なのです。そういう姿勢の人には、必ず仲間が助けてくれます。同友会とはそんな会です。ぜひ、自分と自社の成長と発展のために頑張っていただきたいと思います。
【文責事務局・井上一馬】