第43回定時総会 第3分科会 4月28日
仕事を通じて、豊かな人生を社員と共に
佐藤元一氏
(株)佐元工務店社長(宮城同友会代表理)
(株)佐元工務店
●設立1978年
●資本金5000万円
●社員数32名
●事業内容 総合建設業
経営理念
一、私達は、共に成長し、豊かな人生を実現出来る自立した会社を目指します。
一、私達は、人と人とのつながりを大切にし、明るく豊かな社会を築きます。
一、私達は、自然との調和を図り、優れた技術で快適な生活環境を創造します。
「不渡り」から学んだ3つの教訓
佐元工務店は総合建築業で住宅をメインにリフォームにも力を入れています。私は26歳の時、後継者として父親の会社に入りました。当時は非常に儲かり、利益はすべて自分のものになるという個人企業の時代でした。その後、社員が3人になった時に、年間工事高に匹敵する大きな仕事を受けました。この仕事をきちんとやって、事業拡大につなげようと思っていましたが、発注主が倒産してしまい、1700万円の不渡りを掴んでしまいました。しかし、これを教訓に多くのことを学びました。第1に、「ダボハゼ経営」は駄目であり、第2に、手形取引は一切せず現金主義に徹底する、そして第3に分相応な仕事をすることです。この3つを基本的な判断基準に、現在も仕事を受注しています。
次々と社員が辞める
入社3年後、私は後継者という立場で同友会に入会し、「経営指針」については、言葉は知っていましたが、「俺が俺が」という姿勢で経営をしていたので、まったく必要性を感じませんでした。ある時、今後の展開を考えて、大手の現場監督を1年掛かりで口説き入社させました。しかし3カ月後、彼は辞めたいと言い出したのです。原因は、私がある幹部に対して、しかも他の社員がいる前で、「辞めてしまえ、クビだ」と言ったことで、些細なミスでクビだと言われようなら、「自分もいつクビになるか分からない」という不安を、彼が持ったからです。せっかく引き抜いた社員が辞めると、これから育てていこうと思っていた若手も毎月1人ずつ辞めていき、最後には常務にも辞められ、8人いた社員が3人となりました。これでは、私が現場に入ってどんなに頑張っても仕事が回りません。「会社とは社員がいないとやっていけない」とやっと気づいたのです。
小さな「一流会社」?
社員がどんどん辞めていったもう1つの背景に、「小さな一流会社」をめざしていたということもありました。これは成長の通過点としての目標だと思っています。社員は5000万の仕事をやり遂げると、次は1億円の仕事をしたいと思うのが当然です。優秀な社員ほど、そういう想いは強いのです。つまり、いつまでも小さな会社ではなく、社員が育った分、それに見合って会社を大きくしていかないといけないのだと思います。このような失敗から、「経営指針をつくらなければ」と思い、何とか一人で成文化しました。しかし、経営理念が浸透しません。なぜなら、押し付けの経営理念だったからです。
「俺の会社」から「みんなの会社」へ
バブル崩壊の頃、社長が突然のトラブルでいなくなると、仕事が回らなくなるような中小企業をたくさん見てきました。社長がいなくて潰れる会社は、本物の企業ではありません。こういった企業を見てきましたから、危機意識がありました。そこで、「人が育つ(後継者が育つ)」企業をめざし、宮城同友会の「経営指針をつくる会」に参加しました。まずは、理念を社員と共有しようと思いましたが、社員と共にという視点がなかったため失敗、「すべては社長の責任」と覚悟し、「第2の創業」という意識で、新たな経営指針の作成に取り組みました。指針をつくる会で仲間に意見をもらい、3人の幹部社員と議論し、3カ月かけて経営理念をつくり上げました。理念に基づいた長期計画から、短期の経営計画も社員と共につくりました。結果、当社は「快適生活環境創造企業」をめざし、基本的なスタンスは「軽トラ路線」です。強い企業が取るような仕事はやらずに、分相応の仕事を大切にしています。「軽トラ路線」とは、大型ダンプと軽トラが高速道路で競争すると、大型ダンプが勝ちますが、4メートル道路では軽トラが勝ちます。これと同じ発想です。
120%の満足を
また当社では地域密着経営を追求し、当社から半径500メートル以内の地域を社員が分担して、イベントのチラシなどを撒いています。すると住民から顔を覚えられ、リフォームなどの相談が持ちかけられるようにもなりました。今ではリフォーム部門のリピーターが七割を占め、今後9割まで増えたら、この範囲を100メートル伸ばそうと思います。「お客様には120%満足していただく」という活動の基本計画を持ち、第1に佐元工務店で得をした、第2に期待した以上の仕事をした、最終的には、「感動した」と言われることをめざしています。このような姿勢でお客様と接すると、多少値段が高くても仕事をいただけるようになります。最近では、涙の着工式や引渡式といった感動を与えるイベントもできるようになりました。社員教育では、「人に喜んでもらえることが自分の喜び」であるという人間に成長させることが大目標です。例えば、1対1で上司と面談し、目標を設定して毎月達成度をチェックします。こうして能力の向上と達成感で、社員の自主性をどんどん伸ばしています。このような実践から、突然会社がなくなっても、同業他社から「佐元工務店の社員なら喜んで受け入れる」と言われるような社員を育てていきたいと思っています。
私達の街は私達が創る!
今後は「21世紀型企業(自立型企業)」として、地域の期待に高い水準で応えるために、「私達の街は私達が創るリーディングカンパニーになる」ことをめざしています。また、社員の自主性が十分発揮され、「行け行けドンドン企業より、生き生きルンルン企業」を、社員との共通認識にしています。「生き生きルンルン企業」とは、社員が生き生きと働ける企業であり、業績ばかりを求めずに、地道に一歩一歩、社員も会社も共に成長していける企業です。私たちは経営者にならなければなりません。私は同友会で「社員はパートナー」だと、頭では学んでいましたが、心と体では学んでいませんでした。これでは理念の共有はできません。今、あらためて思うことは、命令なき管理こそが、社員のやりがいや働きがいにつながっていくということです。私は、企業とは「社長を含めた全社員が幸せになるため」にあるのだと確信していますが、さて皆さんはいかがでしょうか。
【文責事務局・輿石】
参加者の感想
◆本当の社員の幸せを考えているか。社員一人一人が「自分の会社」と自信を持って、地域やお客様の幸せを仕事にすることに人生の喜びを感じる会社づくり。「人生は良かった探し、仕事は困った探し」。社員とともに夢と未来を共有できる経営者になりたい。才能を発揮できる大きな土壌があれば、才能も開花し、会社も強くなれることを学びました。(H氏)
◆理念なくして何もなし!真の経営者とは何か?経営者の哲学である。(U氏・T氏・K氏)
◆21世紀型の経営とは、社員と喜びを分かち合えることのできるリーダー型経営が大切。夢や希望を社員と共有すること。社員の教育により社員の夢の向上。(Y氏)
◆いかに社員と常に人生生活を共有できるのか!会社の経営は社員(みんな)と心の共有ができる。社員が夢や希望を託せる会社づくり。視野の広い大きな強い経営者にならないといけない。(H氏)
◆想いを高く持ち続け、あきらめずに実行継続していきながら、社員(みんな)と同じ目線で見ていくこと。理念は一日二日では共有できない。社長の後姿を見て社員は理念を共有する。(K氏・H氏)
◆経営理念と指針を早急につくらなければと、つくづく思った。分科会のすべてが勉強になった!(I氏)
◆理念が絵に描いた餅にならないためにも、語り続けることが社員への浸透実践に繋がる。(S氏)
◆ターニングポイントを自分で感じつかめるか。社員が社員の立場で自分の会社と言えるか。自分の子供に入社を勧められるか?社員のニーズをどれだけ多く聞く耳を持ち解決していくか。(K氏)