第32回青全交・第8分科会
9月9・10日(高知)
お客様と社員と自分の共育ちで社員数倍増!売上倍増!
吉田幸隆氏 エバー(株)社長(尾張南青同)
プロフィール
●創業1966年
●資本金2000万円
●社員数80名
●事業内容金属プレス加工・金型設計制作
地域住民に迷惑を
わが社は主に自動車部品のプレス加工を行っており、私は1991年に、今の「エバー」の前身である「エノキドプレス」に入社しました。当時、社員20名で売上3億円程でした。社長であった父親は職人そのもので、「ものづくり」には非常にこだわりを持っていました。一方私は、納期や品質管理で自社の特色を打ち出し、売上を伸ばして社員を増やしたいと思っていました。入社1年後、工場を増築することとなり、近所にあいさつ回をしましたが、そこで愕然としました。当社の工場の騒音と振動で、「被害を受け続けてきた」という方が多数いたのです。その後、裁判所から騒音・振動問題で当社は訴えられ、工場増築中止の勧告を受けました。その対策に追われ、私は社長や社員に辛くあたる日が続きました。
ピンチをチャンスに
そんな時、同友会に入会し、これが私自身を変えるきっかけとなりました。入会当初は話を聞くだけの受け身でしたが、ある会合で自分が抱えている悩みを率直に打ち明けたところ、周りの仲間から励まされ、「自分の悩みなど小さなものだ」と気づかされました。また同友会でアドバイスをいただき、市役所や商工会議所に工場増築について相談をしました。そこで偶然、郊外の工業団地で2000坪の敷地が空いたと言う話が出されました。それまでの工場敷地が300坪でしたが、将来の発展をめざし、移転を決断しました。
永遠に続く企業ただ、現実は…
移転にあたり、市や金融機関からの勧めで経営計画をつくりました。また、レッテルを貼られてしまった社名を改め、「永遠に続く企業にしたい」という想いを込めて「エバー」としました。しかし、これだけでは独り善がりの未来図です。社員の理解は得られず、いかに私が社内を見ていなかったか、痛い程気づかされました。私が留守の間は、思うように工場は稼動していません。納期に追われ、私が休日出勤して機械を動かす日々が続きましたが、そんな姿を見ていた社員は、だんだんとやる気になってきました。また、私の想いを理解してくれる人を入社させたいと思い、積極的に人材を採用し、面接では私自身が自社への想いを語ってきました。
コスト削減の中で
とにかく目の前の仕事をがむしゃらにこなし、6年後の97年には売上がそれまでの5億から11億に、社員数は20名から60名にまで増えました。しかし、「いつまでも仕事はあるのか」と不安になり、めざすべき会社の姿を考え始めました。それが「要望にジャストミートし、驚きのある提案を行い、素早く行動に移せる会社」で、この考えをお客様にも伝え続け、支持を得られるようになりました。しかしその後、すさまじいコスト削減要求があり、そのことをきっかけに、あらためて何のために会社を続けるのかを考え、「情熱を持って挑戦・行動し、感謝し、感謝される会社」という当社の経営理念ができあがりました。
経営者の仕事とは
全社一丸でコスト問題の解決にあたり、会社の基礎データを社内に公開して一緒に対策を考えました。会社の方向を目に見える形にしたことで、社員との共通認識が生まれました。様々な改善策が出されるようになり、2002年には、これまでの倍以上の仕事を依頼されるようになりました。社員の努力とお客様の励ましのお陰です。しかし、この途上で幹部2人が責任の重さに耐え兼ねてリタイア、私にとって一番つらかった出来事です。しかし他の社員がこの2人の穴を埋めてくれました。社員は自分を表現する場があれば、力を発揮します。その場を提供することが、経営者の仕事だということを学びました。この実績と経営指針が認められ、金融機関からは無担保で融資を受けることができるようにもなりました。
素晴らしい社員たち
同年10月、社長に就任しましたが、とまどいは全くなく、「社員と一緒に達成感の味わえる会社に」という想いがますます強まりました。経営理念を何度も全社員の前で発表したり、賞与の時に一人一人面接して想いを語るようになりました。また、給与袋に社員とその家族の方へメッセージを入れるようにしました。ある時、来客向けの看板を作る話があり、社員から「ぜひ社長がいつも語っている経営理念を看板にしませんか?」という意見が出てきました。私自身の反省をすると共に、こんな素晴らしい社員たちとずっと一緒にやっていきたいと思いました。
光り輝く自立型企業に
今期は「ルールを明確に」ということで、ISO取得への取り組みと、社員教育の一環として客観的に社員の評価ができるようにと、社内での「技能オリンピック」を行うようになりました。これは社員からの提案です。社員はそれぞれ「学ぶ・挑戦する」という姿勢で、必死に自己表現をしてくれます。社員一人一人が目標を持てる場、自己表現の場の提供が必要である事を、ますます実感するようになりました。次のステップは「自ら光を放ち輝く自立型企業」です。系列を飛び越え、商品の価格を自社で決めることができ、お客様とパートナーとして必要とされる会社づくりです。青年経営者であるなら、必ず夢があるはずです。その夢を見すえ、次のステップに進む自分の姿を思い描きながら、今、頑張っています。