全国広報・情報化交流会
9月16・17日(宮崎)
記念講演
「中小企業憲章」と企業づくり、同友会づくり
鋤柄修愛知同友会代表理事(中同協幹事長)
中小企業憲章は会員それぞれが自分の言葉で語ることが大事だと思います。そして、みんなでグループ討論し深めていく、その過程で「私の中小企業憲章」との確信を得ていくことが必要であろうと考えます。
欧州の中小企業家に啓発されて
私がこの憲章にたどりつくプロセスとして、2002年9月、愛知同友会創立40周年を記念して行われた欧州中小企業政策視察(オランダ、ベルギー)への参加があります。この2カ国を選んだのは、EU本部がベルギーの首都ブリュッセルにあり、ヨーロッパ中小企業政策の典型を両国から学べるという期待感があったからです。「百聞は一見にしかず」の言葉通り、両国の経営者と会って大いに啓発されました。彼らは一国の国家戦略を超えて、ヨーロッパ全体の生き残り戦略を長い時間をかけて考えてきているのです。日本では「アメリカンスタンダード」を「グローバルスタンダード」とする向きが強いのですが、これでは視野が狭く危うい。ヨーロッパの中小企業家は、経済、社会の主体者は自分たち市民であるとの意識が強く、「EU経済を支えるのは中小企業である」との自信に満ちています。(視察団レポート『グローバル化に挑戦する中小企業の連帯』愛知同友会発行)このような歴史的背景があって「ヨーロッパ小企業憲章」(2000年発表)がまとめられたのですね。これはリスボン憲章ともいいますが、中同協訳がでていますので(「研究センターレポート第15集」所収)ぜひ読んでください。日本国憲法も主権在民をうたっており、主権は我々にありますから、中小企業政策はもちろん、国の政策の検証は私たちがやらねばなりません。しかし、勉強しなければ発言はできない。ですから、大学習運動を提起しています。
中小企業の社会的使命を深めよう
学習運動を進める上で大切なことは、自社の経営を見つめ直すこと、中小企業の社会的使命・役割を深くとらえることです。中同協赤石会長は、「今や日本列島は空洞化現象が蔓(まん)延(えん)し、山でいえば『赤ハゲ』が広がっている。そこに木を植え緑化を進めるのが中小企業だ」と説いています。つまり、中小企業の最大の特徴は開業、起業です。そこに雇用が生まれます。その点、アメリカの中小企業に学ぶ必要があると考えます。当社は設立35年、本社には360名の社員がおり、グループ全体で500名以上の会社になりましたが、戦略的には中小企業であることを志向しています。水処理、環境問題で東海地方に深く根をおろす、サービスの行き届いた会社であるためには、中小企業の良さを最大限生かすことです。そのために、私たちは同友会で勉強しているのです。赤石会長はさらに、10名の社員がいれば、9名で今までの業務を遂行し、一人は新しい分野に挑戦できないかと提案しています。別事業部や分社化した場合、そこに新たな雇用が生まれ立派な社会貢献となります。
「中小企業が世の光に」
中同協では、全国総会を前に「中小企業憲章」(討議素案)を発表しました(『中小企業家しんぶん』7月15日号掲載)。これも大いに活用願いたいのですが、冒頭の「憲章の理念」の最後の文章で、21世紀の中小企業・自営業の役割、可能性を次のように表現しています。「21世紀の中小企業・自営業は、(1)公正な競争の促進、(2)豊かでより良い国民生活への寄与、(3)心の触れ合う雇用機会の創出、(4)独立開業機会と創造挑戦の場の提供、(5)多様な需要への効率的対応や資源の効果的な配分の達成、(6)教育、文化、福祉、人権擁護など人間尊重の社会への挑戦、(7)魅力的で個性ある地域づくりへの貢献、(8)草の根レベルの国際化の担い手などで、その社会的役割をはたすでしょう」、そして、「中小企業が世の光」となることをめざそうとしています。つまり、中小企業が光を当てられる立場から、光となる存在になろうという高い志、決意を表明しているのです。日本には、1999年に改定された中小企業基本法があります。旧基本法は、大企業との格差是正が主眼でしたが、新基本法は、伸びる企業、やる気のある企業は支援することを本旨としています。そのことは一理ありますが、それでは600万ある中小・自営業を元気にして、日本経済を活性化させるダイナミックな政策発想は生まれません。その証拠が毎年の国の中小企業予算で、今年は1千7百38億円(一般歳出に占める比率は0.36%)で年々減らされているのです。これで、中小企業重視の政策といえるでしょうか。学習課題の1つに中小企業基本法の研究はあると思いますが、基本法を上回る位置づけの憲章を、国会で決議することがどうしても必要なのです。
憲章は心で語ろう
「同友会3つの目的」は系統的に追求していく課題です。第1の良い会社をつくる、第2の良い経営者になる、これは同友会で真剣に学び実践し、自己努力で実現をめざす課題です。第3の良い経営環境をつくるは、連帯し、他団体とも協力して達成すべき課題です。金融アセスメント法制定をめざす運動はその良いお手本となりました。この運動も学習が基本であり、同時に経営指針策定、「労使見解」をベースにした企業づくりを進める同友会が提起することで説得力を持ち、共感を呼ぶことができました。中小企業憲章制定の運動も、まず私たちが同友会のめざす21世紀型企業となるため学びあい、相互に厳しく指摘しあい、地域になくてはならない企業づくりを進めていることに、満々の自信を持つことです。日本経済再生のため、自社の努力と同時に、地域や業界が抱えるさまざまな課題の解決の方向を研究し、会の内外に発信することです。憲章と同時に研究している中小企業振興基本条例も、文章化すればA4一枚に収まります。おそらく憲章もその程度でしょう。皆さんが語るときはもっと短く、5つくらいのキーワードにまとめて話す力も求められると思います。憲章には「中小企業こそ国の政治の中軸にすえ、明るく豊かな日本につくり変えていこう」という全国民的熱い想いが込められ、憲章は心で語るものではないでしょうか。この壮大な胸の躍る大事業に参加する仲間を増やし、広報を担当する皆さんが語り部となり、動く広告塔となることに期待するものです。
※「中小企業家しんぶん」(No.947)より転載●「中小企業憲章」の素案全文に関しては以下をご覧下さい。(http://www.doyu.jp/material/doc/charter_draft.html)