第33回青年経営者全国交流会
9月15〜16日
滋賀県大津
青同中心に131名が参加しました!
「先達の教え“三方よし”から未来を拓(ひら)く」をメインテーマに、第33回青年経営者全国交流会には全国から1085名、愛知同友会からは青年同友会を中心の過去最高の131名が参加しました。パネル討論の感想もいただきましたので、紹介します。
第10分科会自立型社会人を創出し、自立型企業を目指す!
〜社員と共に高い志を持ち「人間力」を高める〜
小川康則氏(株)北斗社長(尾張北青同)
わが社は愛知県北部の一宮市にあり、エクステリアの仕事をしている会社です。愛知県の「北」で「斗(たたか)う」という意味で社名を「北斗」としました。エクステリアとは、庭や塀など住宅の外構にかかわり、一般住宅の売上に左右される業界です。住宅の着工自体がバブル期の3分の2程度に減り、客層の若年化もあって、一般顧客の成約率は減っています。また、「悪徳リフォーム会社」が取りざたされて業界全体の信用も下がっています。同友会に入会してからのこの5年間は、わが社の業績は伸びていますが、業界全体としては非常に厳しい状況に置かれています。
「自分の分身」が必要
高校卒業後、石油関係の会社に就職した後、中古車屋さんなどをやり、1991年1月に「北斗営繕」という会社を創業したのが、現在の弊社の始まりです。創業から99年までは10人ほどの小さな会社で、自分以外は職人という状況の中、今考えれば、具体的な夢も目標もないまま「こんなものかな」という感じでやってきました。そんな中、可児に新店舗を出すこととなり、今までになかった営業責任者という仕事、言わば「自分の分身」がいなくてはやっていけない状況になりました。同時に同友会に入会して、さまざまな経営者を目の当たりにしました。また、「労使見解」(「中小企業における労使関係の見解」)との出合いで、今まで自分が自社で「当たり前」と思ってやってきたことが、いかに「当たり前」でなかったかに気づかされました。私は「営業」を任せることが不安で、ある一人の営業マンを、それこそ軍隊方式で指導し、逃げ道を与えないほどに追い詰め、批判して、結局辞められてしまったことがありました。自分の分身にしようと、彼に合わないことを無理やり押し付けていたのです。彼にとっては苦痛以外の何ものでもなかったはずです。人の痛みを知り、いたわる心が自分になかったのです。この時の反省から、現在では採用を「戦略的・計画的」に行い、その分野に適した人を確保しています。そしてできる限り本人の意思を尊重し、その人に適した仕事の方向性を示しています。また、同友会と出合う前は、公私混同も当たり前で、会社のお金を平気で個人的に流用していました。現在では、公私の区別はキッチリしています。
「自主・民主・連帯」なくして企業は成長しない
もう一つは「自主性」の意味の取り違えです。当初は社員にはいつも「言われなくても自主的にやれ!」と怒鳴っていました。しかし、言われずにやるから「自主的」なのであって、怒鳴られてばかりの社員は、私に怒られる時の応対が得意になるばかりで、自主性は育ちませんでした。最近でも、毎日遅くまで残業していた新入社員を早く帰らせて、その仕事を私が片付けたことがあります。私は彼の負担を少なくしてあげようという親切のつもりでしたが、その新入社員は涙を流して悔しがりました。周りに迷惑をかけないようにと、必死で仕事を覚えようとしていた彼の自主性の芽を、私が摘んでしまうところだったと、大いに反省させられました。同友会では、自分が言ったことに対していろいろな反応が返ってきて気づかされるのです。社員の自主性、やる気、連帯感など、すべて社員ではなく社長に責任がある、ということにも気づかされました。会社の中では社員にとって社長の立場は絶対。「神様」です。神様には勝てないので、会社を辞めるか黙り込むしか社員には選択肢はないのです。結局、社長自身が「自主・民主・連帯」をよく理解し、相手を思いやるように変わっていかなければ社員は成長することなく、組織も絶対に成長しません。
「共育」のスタートは社員との経営指針作り
自分やわが社を変える明確な出発点となったのは、社員と一緒になって経営指針づくりを始めたことです。以前から指針らしきものはありましたが、社員の立場からの考えがない、独り善がりのもので、浸透もなければ組織としての目的もなく、売上で一喜一憂し続ける会社でした。経営者と社員、お互いの立場から経営指針を作り、会社と社員の幸福を一致させる作業が、共育の第一歩なのだと、改めて思っています。そして仕事にやりがいを持ってもらうために、仕事を社員に任せることで学ぶことの大切さと責任感に気づいてもらう、手柄を立てさせ達成感を持ち、目標達成する癖をつけることなどを実践中です。この実践をやり続けることで、理念は徐々に浸透し、「自立型社会人」を育てられる企業風土が段々とできてきたのではないかと思います。
「自立型社会人」の共育に「彊めて息まず」
テーマにも掲げた「自立型社会人」とは、自分自身も社員もこうでありたいという、私自身の哲学です。自立型社会人とは、プロ意識を持って、仕事のスキル向上や自分で高い目標を立てて、自ら進んで学び続けることができる人、そして相手の良いところを謙虚に見て学べる「人間力」を身につけている人です。私も経営者として、社員の良いところを見つけて伸ばす努力をしています。同時に社員にも、私や仲間の良いところを見つけて欲しいと思っています。そして謙虚に人を尊敬できるようになって欲しい、あてにされ、期待される人物になって欲しいと願っています。自社にかかわるすべての人のかけがえのない人生を自覚させ、「自立型社会人」を作ること。これこそが自分自身の生き方であり、自社の経営理念でもあります。経営指針をもとに、経営理念と自分や社員の生き方の整合性を創造していくことが「共育」であり、本当の経営者の仕事であると実感しています。同友会に入って、切磋琢磨できる仲間ができ、叱咤激励される中で、経営者としての仕事や自分自身の生き方が見えてきました。今後も同友会運動を通じて、皆さんと共に学び、よい会社・よい世の中を築くために、「彊めて息まず(つとめてやまず:自ら努め励んでやまない)」の気持ちで頑張っていきたいと思っています。
第10分科会に参加して
高い志を持ち「人間力」を高める
第10分科会は120名近い参加者でスタート。全員に(株)北斗の経営指針書が配布され、その内容の緻密さにグループ員全員が驚きました。私の参加したグループでは、1回目の討論テーマ「会社経営を通じて社員に期待する事は何ですか」に対し、「うちの社員で良かったと誇りを持っていて欲しい」「仕事を通じて幸せになって欲しい」等の意見が出されました。また2回目の討論テーマである「自立型社会人を創出できる上司、組織とは」では、「トップは自社の指針を社員に言い続けることが大事」「社長が社員の目線に降りて、理念を説くのが中小企業の良いところ」「ビジョンを与える、ほめる、我慢する」など、闊達な意見を戦わせました。最後に、座長の山本氏が「同友会活動とは究極的には国づくり、人づくり、街づくりです。今回の学びを自社で生かし、皆さんの中から来年の青全交の報告者が出るように希望します」とまとめられ、身の引き締まる思いがしました。
(株)まるぜん野々山達也(三河青同)
パネル討論
現代に生きる近江商人の教え
「三方よし」=『売り手よし、買い手よし、世間よし』の意味を知り、普段、私が思っていることと一致していることに安心しました。この家訓を残した最大の理由が『事業を存続させるため』であり、「三方よし」のどれかが欠けても、『事業を存続させる』ことはおぼつかないとも思いました。もうひとつの理由が、あたり前だが、やることが難しいこと。例えば薄利多売、儲けに走らない等、念押し的な意味合いがあることで、自社にあてはまることです。特に奇想天外なことを家訓にしているわけではなく、合理的かつ効果的な事柄を代々受け継ぎ、『事業を存続させる』ために近江商人が残し、それは時代や業種をこえて、普遍的に当てはまることばかりであることを学びました。
竹内浩二行政書士事務所竹内浩二(名古屋第4青同)