本業での問題解決を『新連携』で実現
〜「瓦のプレカット」がパイロット事業に認定〜
松澤考宏氏(株)マツザワ瓦店(名古屋第4青同)
職人が誇りを持てる職場環境を創りたい
中小企業施策の目玉として今、注目されているのが『新連携』ですが、愛知同友会から初めてパイロット事業認定企業が誕生しました。中部経済産業局より2月24日「コア企業」として認定を受けたのが(株)マツザワ瓦店の松澤考宏社長(名古屋第4青同)です。認定を受けたのは新規事業会社として設立した「(株)伍社」です。テーマは、「住宅建設のコスト低減とゼロエミッション化に貢献する瓦のプレカットとカット残片のリサイクル一貫事業」です。戸建住宅では、施工瓦の約3分の1がカットを必要とされ、全廃材の約4分の1が屋根材という現状です。その環境対策は、ハウスメーカーをはじめ業界全体の急務な課題でしたが、具体的にはまったく進展していませんでした。また施工現場では、暑い真夏でも職人が屋根の上で寸法を測り、手作業で瓦を切るという大変な作業を行っていました。松澤氏は、「職人さんが笑顔で楽に仕事ができるようにしたい。環境対策にも取り組み、お客様からも喜ばれる仕事を、誇りを持ってできる環境にしたい」と様々な小さな工夫を重ねてきました。
誰も手をつけない業界問題に乗り出す
その延長線でもあり、誰も手をつけない業界問題の解決に乗り出したのが、今回の松澤氏の新規事業です。取引先のハウスメーカーから精度の高い建築設計データを入手し、特殊開発したCAD(建築業界のCAD開発に実績のある企業と連携)で屋根のカット寸法を割り出し、そのまま瓦をプレカットするライン工場を新設しました。さらに、工場でのカット残材についても、建築資材や培養土にリサイクルする(培養土業界有数の企業と連携)ゼロ・エミッションのしくみをつくり上げました。それにより、(1)瓦や残材の運搬燃料やコストの削減、(2)人工(ニンク)数の削減、(3)残材処理コストの削減、(4)作業環境の改善、(5)周辺環境への騒音粉塵公害改善、(6)環境対応型企業としての評価を得ることができました。今回の成功要因は、環境対策への業界ニーズが強く、すでに既存の取引先への営業契約ができていたこと、他のハウスメーカーからも打診があることがあげられますが、さらにマツザワ瓦店としてタイや中国で瓦生産工場を持ち、製造業のノウハウを保有していたこともこの要因です。とはいえ、日本でのライン稼動にあたって、松澤氏は同友会役員企業を十数社訪問され、製造業の各分野に渡って猛勉強しました。
『同友会理念』の 共鳴者とともに
利用施策は、(1)補助金三千万円、(2)低利融資、(3)各専門家やコンサルタントの活用、(4)出資金の確保等です。「認定に相応しい企業」として事業計画等の支援を受ける過程で、「人とのご縁ができ、連携の責任分担や契約書の交わし方、計画の細部具体化なども学んだ」と言います。松澤氏は、「このプランに多くの人が出入りしたが、最終的に残ったのは、『同友会三つの目的(良い会社・良い経営者・良い経営環境)』を本当に実践している人だけ。理念に共鳴できる人しか、継続できない」と語ります。また、「すべての出発点は『人』。モノや情報に目が行きがちだったが、同友会で目を覚まさせられた」とも語ります。「人間性」に基づく「理念」への情熱が今回の『新連携』の認定を実現させたといえます。なお、この事業に関連して、「新市場創造経営研究会」有志メンバーを中心に、3案件ほどが「新連携」へ向けての研究を深めています。また、マツザワ瓦店では、3月17日に愛知県の「CO2排出削減マニュフェスト登録企業」としても認定を受けられたことを、最後につけ加えておきます。
(株)マツザワ瓦店
・設立1848年
・資本金2900万円
・社員数21名
・事業内容屋根工事、板金工事
(株)伍社
・設立2003年
・資本金1000万円
・社員数4名
・事業内容瓦のプレカット等
◎『新連携』とは
2005年度に新しくできた中小企業支援施策で、2社以上の異分野企業が各社の強みを持ち寄り、高付加価値の新事業を行う場合、その認定企業に各種支援や補助が行われます。連携体構築支援事業と事業化・市場化支援事業がありますが、詳細は以下をご覧ください。http://www.smrj.go.jp/shinrenkei/