中同協総会in石川
第13分科会
自社の経営指針、外部環境も変えて実現を!〜『中小企業憲章』を力に
「広げよう同友会運動、健全で活力ある社会を我らの力で」をスローガンに、7月13日〜14日、中同協第38回定時総会が石川県金沢市で開かれ、全国から1456名(愛知82名)が参加しました。今総会の第13分科会では、愛知同友会の中小企業憲章学習運動の実践事例として原田氏が報告を行い、学習資料(初級編・中級編)のパワーポイントも紹介されました。
●報告者原田晃宏氏原田酒造(資)(政策委員長)
●助言者大林弘道氏神奈川大学教授
●座長小熊光男氏(株)こがね(前政策委員長)
中同協議案書にも「中小企業憲章を自社の経営課題から理解する学習に取り組む同友会が広がっています」と、愛知同友会で行っている、自社の経営課題を大局的な視点から整理する試みが紹介されています。また、この方式に従って学習会が愛知同友会で進められており、40組織、1416名が参加している事が明記されています。分科会では、愛知で進められている学習内容を、全国の会員に実際に体験してもらいました。つまり、会員自ら日頃感じている自社の経営課題と、その経営課題を克服する上での阻害要因は何かを「我が社の現状と自社の方向性、外部阻害要因」分析レポートに書き込んでもらい、業界や中小企業の置かれている現状について、出席者自身が問題点を明らかにしました。
●原田氏の事例報告
阻害要因を的確に把握流通ルートへの対応魅力ある商品づくりに力を尽くす
まずは業界の全体像を把握する
業界の現状として、ここ20年で日本酒メーカーが半減し、小売業も5年後には半数以上が廃業を余儀なくされる状況です。その原因として、大手メーカーの工場拡大や海外生産への移行、一般小売店の廃業増加と卸売業者の統廃合です。また、老舗ゆえの経営体質の弱さ、新商品開発における酒税法の括りです。
酒造業界での外部阻害要因
酒造業界にとって大きな変化がありました。小売免許の規制緩和による参入の自由化は、昔ながらの酒屋さんの廃業を激増させる深刻な問題となっています。その他、酒税改正に伴う支払いサイトの長期化、減反政策による原料米の生産打ち切り、地産地消を妨げる農業改革、食の安全基準等の法改正など、分析した外部阻害要因を列挙します。
経営体質強化の方向性が明確に
その課題を克服する対策として、まず、流通ルートの的確な対応と販路拡大を考えています。そして、原料へのこだわりによる自社ブランド力の強化をすることです。また、売れ筋になりそうな商品への対応を早急にして、コストパフォーマンスのとれた商品開発に対応できる技術力の強化が求められます。これらを視野に差別化をはかれる商品づくりへの対策を行っています。
【文責事務局・八田】
●大林弘道教授の助言
企業づくり、同友会づくり、地域づくり」―3つの視点から
経営指針と自社分析の関係
最初に、経営指針を成文化する運動は同友会運動の輝ける成果であり、同友会の「3つの目的」や「労使見解」の精神を引継ぎ、「共同求人」や「社員教育」に引継がれていきました。経営指針は自社分析の中の「自社の方向性」として生かされ、自社の分析活動は、経営指針作成の前提である経営環境や自社の位置の分析です。また、企業の存在価値を自覚し、経営の目標を明確にした「自社の方向性」の実践を阻害する要因を明らかにすることによって、「望ましい経営環境」を展望し、その先に中小企業憲章の具体化を見ようとするものです。
望ましい経営環境を創造
愛知方式の自社分析は、愛知同友会の調査を重視し、同友会運動を常に自社経営との関係を重視する伝統的精神から生まれたものです。業界の現状の特徴を把握し、その変化を検討することによって導き出された「自社の方向性」は真摯に追及すればするほど、経営環境の問題や課題が理解され、あるべき、望ましい経営環境が明らかになります。同友会運動の特徴は,このような経営環境を変革し,創造することを課題とするところにあり、その集大成としてあるのが中小企業憲章の制定運動です。
自社分析レポートの課題
自社分析レポートは、自社の位置けを明確にして、その位置から出てくる具体的な戦略を引出しています。一方では自社の方向性と望ましい経営環境を徹底的に具体的に考え、他方ではその望ましい環境が他の部門、他の業界と共通的な点があるかどうかを探し、望ましい経営環境を社会に対する夢に結び付けていくことが大切です。
激動する経営環境
また、今回提出された分析レポートから、経営環境が凄まじく変化しており、その困難さは、戦後60年の過程とはまったく違う変化が読みとれます。第1に、アメリカの改革圧力による、制度改革や法律の改正の変化で、たとえば、指名競争入札から一般競争入札に移行した建設業、酒造業における免許制度の緩和に伴い販売ルートの変化、日米保険協定による保険代理店の自由化による保険代理店の半減、薬事法の改正による化粧品製造販売の激動等々です。第2に、大企業の規模力や独占力を誇る行動にともなう激動で、大企業による海外進出による国内製造業の空洞化、大規模小売業の優越的地位の濫用による購入態度や購入条件の激変です。第3に、アジア諸国の興隆です。世界でも有数となるアジア諸国の興隆の流れのブラジル、ロシア、インドへの拡大。アジアの中で日本だけが興隆国だった時代は過去のものになっています。
外部環境も変えられる
今回の自社分析レポートは、凄まじい経営環境を冷静に分析し、果敢に挑戦している中小企業家の姿が顕著に表れています。そして、大変優れた発想で、先を見通した事例が書かれています。自社の経営指針をもとに、自社分析を加え、外部環境を静的対象ではなく、動的対象であるという意識改革が始まっています。
同友会理念の総合実践が憲章
中小企業憲章は新しい経済社会の構想であり、本当の中小企業観を実現するものであり、中小企業重視の政策の骨子です。全国同友会の中には、「企業づくり、同友会づくり、地域づくり」の3つの視点から、中小企業憲章制定運動のきっかけとして、同友会自身の刷新や発展につなげる戦略を持っている同友会もあります。今、同友会の「3つの目的」の総合的実践が中小企業憲章の課題に関連しているという視点が重要になっているのです。
【文責事務局・八田】