第45回定時総会
第2分科会
4月17日
人を生かす企業風土づくり
パネリスト青木義彦氏((株)サンテック・労務労働委員長)加藤輝美氏((株)ケイ・クリエイト・共育委員長)服部勝之氏((株)丸竹・共同求人委員長)コーディネーター加藤明彦氏(エイベックス(株)・産学連携プロジェクト長)
人の問題で壁にぶちあたって〜悩みを持って同友会に入会
【加藤明】まず会社の紹介と入会の動機、また現在までの変遷をお願いします。
【青木】当社は、1982年に創業した従業員51名の組込ソフト開発会社です。私自身がソフトの開発技術者で、仕事が増えるにともない法人化しました。社員が30名を超えると組織化しないといけなくなりましたが、人を育ててこなかったので壁にぶつかりました。何をやってもうまくいかず、いっそ会社を解散して、自分ひとりで一からやり直そうかとも思いました。このように何とかしなければと考えていた時、同友会に誘われて入会しました。
【加藤輝】私は広告代理店をやっています。具体的には折り込み広告、一般チラシと無料情報誌(約18万部)の発行をしています。1985年に脱サラして、アパート1室から始めました。92年頃、岐阜同友会の未来工業を訪問した時に入会を勧められ、同友会を知りました。この時は一旦お断りしたのですが、97年に自ら志願して入会しました。それまでは非常にワンマンな経営者でしたので、社員との間に亀裂が激しくなった時期で、何とかしなければいけないと思ったからです。
【服部】当社は納豆を中心にこんにゃくや、ところてん等の製造販売をしています。私は創業者から数えると5代目になります。現在では物流の形態が変わりほとんどなくなりましたが、以前は小口の配達をやっていましたので、非常に沢山のドライバーを抱えていました。そのドライバーがいつも足りないと悩んでいた会社でした。同友会へは1989年に取引先に勧められて青年同友会へ入会しました。現在、7年目になる共同求人委員長や春日井地区の副会長も務めています。
経営者としての姿勢が変わる
【加藤明】社員とどう向き合い、なぜその姿勢になったのかをお聞きします。
気づいた経営者の責任
【青木】最初に採用した社員のことです。彼は21才で入社し、40才になった時、後から入ってきた社員に比べると、発言能力や説得力が低く、仕事に取り組む姿勢が違っていました。その原因は「労使見解」にある『経営者の責任』を私自身が果たしていなかった事であり、人を生かしていなかったことです。社員がその経験にふさわしい家庭人、社会人として生きる力を着けるように、社中で育てないといけないということです。現在では、自分はリーダーとは関わりますが、リーダーが部下に関わるようにし、私は極力口出ししないようにしています。
人間として豊かに生きよう
【加藤輝】社員が生活と夢、幸せを託す事ができる企業づくりをしようと努力しています。これが経営者の使命であり、責任だと思います。私は超ワンマンな社長でした。例えば、社員が朝礼で横を向いていただけで解雇した事がありました。このようですと、良心の重みに耐え切れなくなります。また、勇気をもって私に苦言を呈してくれた社員もいて、経営者としての私の姿勢が次第に変わってきました。それまでは社員に対して細かいことを言い過ぎ「説明が説教になっている」という状態でしたが、今では、役割分担を明確にして、会社の運営を図るようになっています。
人は支えられて生きている
【服部】入社当初と今では全然考え方が変わりました。当時は人手不足で、社員の辞め方もひどく、「今日で辞めます」といって次の日から出てこない社員もいる。社員はお金のために働いていると思っていました。考えが大きく変わったのは社長になってからです。先代から急に社長になるように言われ戸惑っていた時、意外な方から「あなたをバックアップしますよ」と言われました。非常に不思議な感覚でしたが、人は支えられて生きているんだと実感しました。その後、若い人が入社するようにもなり、社員は経営者とは立場は違いますが、一緒に会社を発展させていくパートナーであると考えられるようになりました。
社員が意見を出せる場づくり
【加藤明】社員が成長するために各社で行っていることをお聞きします。
社員自身が変わる場づくり
【青木】私は創業者として、営業を含め何でもやっていました。すると社員は仕事というのは天から降ってくるものだと思ってしまいます。そういう姿勢でやってきたので、時代が大きく変わったと言っても理解できないのです。そこで社員の考えを出させる為、社内の会議のやり方にグループ討論を採り入れました。初めは仕事が遅れるとか、時間がないとか言っていましたが、半年後には定着しました。最近では、経営指針の発表会の時にもグループ討論の方法をとり入れています。このグループ討論は、テーマも運営も社員に任せています。何年も続けていくなかで自分達の意見を交換し、自らが変わっていく場として、大きな成果が出ています。
【加藤輝】押し付けでは仕事に対するモチベーションも上がらないと思います。同友会には「自主・民主・連帯」という言葉がありますが、社員の自主性に任せることが、信用信頼の第一歩だと思います。そのことに気付いた私は、胃薬を飲みながら、口出しをしないようグッと我慢をしてきました。現在は社員の本当の力を発揮できるだける場を与えることが大事ではないかと思い、社内を三つの部門に分けてました。経営指針の部門方針や計画は各部門長を中心に策定するようにしています。
ミーティングを継続
【服部】かつては会議をしない会社でした。しかしクレーム処理にしても何にしても、情報を共有化することが必要になり、会議を行うようになりました。現在では週に1回のミーティング、3種類の会議を月1回行っています。ところが、製造現場の人は話し下手で黙々とやるタイプが多く、会議で集まっても発言しません。会議で発言が出るようになったのは、共同求人で新卒者が入るようになってからです。彼らが進めていく上でのキーマンになってくれます。まだまだ課題がありますが、お互いの思っていることを話せる場ができつつあります。
新卒採用は企業風土づくり
【加藤明】次は『採用をどう考えていくか』をお聞きしたいと思います。本日の報告者は3人とも共同求人活動に参加していますので、新卒採用の重要性や、その成果についてお願いします。
共同求人で指針を成文化
【青木】創業当時はすべて中途採用で、未経験の人を含めて来てくれる人はすべて採用しました。20人位の社員になって新卒採用を始めたのですが、うまくいきませんでした。そこで同友会の共同求人活動に参加しました。「採用セミナー」が大変参考になりましたし、経営指針をつる事も学びました。そうすると合同企業説明会の時、学生に条件ではなく、会社の理念やビジョンも語れるようになり、採用もうまくいくようになりました。また採用人数も、以前は仕事の量で考えていましたが、現在では経営指針をつくる過程で、各部門方針の中で、「3年後、何人にする」というように人員計画も作成され、それに合わせて採用を行うようになりました。
毎年の採用が組織をつくる
【加藤輝】当社も過去は欠員が出れば、補充するという中途採用でした。共同求人活動に参加するようになって4年になります。参加して教えられたことは「5年先・10年先を考えた時、たとえ1人でも毎年新卒を入れ、木の年輪のようにしていかないと組織はできない」ということです。確かに中途で経験のある社員が入ってくると、それより下の社員のモチベーションは下がり上手に組織ができないのです。それから、インターンシップの受け入れ企業になり学生を受け入れた時、学生への説明を新入社員に頼んだところ、一生懸命自分で勉強して彼らに仕事を教えていました。これが活性化なんだなと気づかされました。「先輩が後輩に教える」ということを繰り返していくことが活性化につながるのです。また当社でも、経営指針の中の各部門ごとの採用方針に従って採用活動を行っています。
定期採用を心がけて
【服部】当社も当初は人手不足でしたので、面接に来たらすぐ採用でした。ですから「今日で辞めます」というような社員もいました。私が35歳で急に社長になった時、社員に頼ろうと思っていたのですが、古参の社員から「あなたについて行く気はない」と言われ大きなショックを受けました。それでは新しい人を入れるしかないと考え、たまたま同友会の共同求人のパンフレットが目に入り、申し込みをしました。それ以降は定着の問題もありますが、たとえ毎年でなくとも、定期採用を心がけています。
活性化と定着は先輩社員が鍵
新入社員研修は若年社員が育つ場
【加藤明】最後に。新卒採用して、将来の経営幹部をどのように育てようとしているのかお話し下さい。
【青木】新卒に対して、経営理念等は私が話しますが、その後の研修は社員が手分けをしてやっています。当初は先輩社員が何を教えてよいか解らないと嫌がりましたが、とにかく技術的なこと、自分の仕事のことだけでよいからとやらせてきました。今では入社2〜3年目の社員が自分達の経験を踏まえカリキュラムを組み、担当を決めてやっています。当社ではインターンシップの受け入れも新入社員教育も、若い社員が育つ場面として活用しています。
採用も教育も部門長に任せる
【加藤輝】当社では5月の合同企業説明会のブースに、春に入ったばかりの新入社員を座らせ、会社の理念や方針をいかに学生に説明できるか試す場としています。各部門長が責任を持って新入社員を育てさせる訳ですから、採用の最終決定は部門長としています。2年目社員が1年目社員のときに何をやったかということを基に目標管理シートを上司と2年目社員と共に作らせています。その管理シートに沿って進めるようにしています。同じように3年目社員は2年目社員のためといった具合で、私はアドバイザーをやっています。
順送りで先輩が後輩を教える体制に
【服部】共同求人を始めて3年目の頃、7名に内定を出したところ、4月には7名そろって入社してきました。これには驚きましたが、もっと驚いたのはこの7名が翌年7月までには1人もいなくなってしまったことです。さすがにこれではいけないと考えさせられました。そこで、新卒者のためカリキュラムを私自身が作成し、現場の責任者にこれで教育するようにしました。その後、その教育を受けた社員らに聞いてみると、「先輩たちは特に教えてくれなかった」と言うのです。なぜかというと中途採用の社員は教えるということを知らない、つまり教育をされたことがないので、指示することしかできなかったのです。そこで、今後は新人の彼らに自分達でカリキュラムを組んでもらい、日程も決めて研修を行うようにしました。その後は順送りで、先輩が後輩を教える体制が定着してきました。また7名全員が辞めてしまった理由には、教育以前に私の問題がありました。それは説明会のとき、会社の将来や夢を語っていなかったからです。理念の共有ということは非常に重要で、最近では、先代からの古参社員よりも、理念に共感して入社してもらった若手社員の方が、ずっと私と距離が近くなりました。
【加藤明】3人のお話をお聞きし、何をどう感じるかは人それぞれだと思います。しかし重要なことは何を学び取り、それを素直に自社で実践するかどうかだと思います。みなさんぜひ1つでも2つでも実践してみてください。
【文責事務局・山田】