特集 第8回あいち経営フォーラム
10月28日
基調講演・分科会ダイジェスト
基調講演 優しさの創造 モノづくりの心が伝わるIB―ZAの顧客満足
吉田 茂 氏 (株)イビサ 取締役会長
モノづくりの原点
講演はまず約20分の映像による「(株)イビサ」の会社説明から始まりました。ファッションバッグといえば、さぞかし流行の最先端をいく華やかな世界かと思いきや、意に反してモノづくりの原点をただひたすらに朴訥に追い求めてきた吉田氏の信念のお話でした。何か特別な奇をてらった訳でもなく、特異な戦略を成功させた訳でもありません。丹精込めて自分たちが作り上げたモノを、お客さんに喜んで使ってもらいたい。永く使ってもらいたいという想いを感じました。これは金儲けに勝る最高のものだと思います。この当たり前のことを追求し続けているところが素晴らしいところです。そしてポイントはそのための適切な手を着々と打っている事です。
自分の信ずる所を追求
「たくさん売れば良いというものではない」と吉田氏。素材を生かしムダは出さないこだわりから、大量生産はせず、安売りもしないといいます。そして問屋への卸売りはせず、創業以来、手形取引はしないようにしているそうです。また「子から孫までの永いお付き合いがしたい」という思いから、アフターサービスを徹底し、永久保障をするなど、時代の検証に耐えるモノ作りを追求しています。「お客様が第一」という姿勢から、徹底したクレーム対応をしています。お客様との対話とニーズを把握するため、作り手と使う人の顔あわせができる会社見学ツアーやパーティを開催。年間4万通の手紙を顧客に出すなど交流作りもしています。高邁な理念であったり、難しい経営学や複雑な戦略を組み立てなくとも、いかに自分の信念を追求することが大切かという経営の原点を再認識させてくれた講演でした。
竹内襖材(株) 竹内 武司 (刈谷地区)
第1分科会
小さくても輝く経営に目的あり〜良い会社目指し、地域・業界の要請に応えて
下島 和子氏 (有)シュバインハイム(碧南・高浜地区)高見澤 義充氏 (株)ライフホームズ(天白地区)鷲野 守彦氏 丸太衣料(株)(第3青同)
第1分科会は、衣・食・住それぞれのジャンルから報告して頂きました。行政の参加も含む125名の参加者は、準備された内容の報告とテーブル討論に秋の1日、充実した時を過ごしました。地域に根ざしたよい会社を目指すという思い。確たる理念に裏打ちされたヴィジョンを持ち、自社の強みをしっかりと見極めたうえでの実行力と勇気こそが、3社の現在の位置を築いているのだということを実感しました。さらにグループ討論では、中小企業ではおざなりになりがちなPDCAの大切さを改めて考えさせられるなど、参加者自身が小さくとも輝く企業になるためにどうすればよいのかの討議が深められました。
藤井窯業原料(株) 藤井裕子 (瀬戸地区)
第2分科会
社員の人間性が最大の商品!!〜『物』だけが売り物じゃない!無形の強みで企業成長を
川畑 保夫氏 (株)沖縄教育出版 (沖縄同友会)
川畑氏は、企業である以上、利益を出すことが絶対条件だといいます。年商18億、経常利益4億を出す企業として、その言葉には重みと信念が感じられました。そして経営は、科学性・人間性・社会性を併せ持った理念経営でなければならないこと。企業にとって重要なのは人であり、経営者の仕事は社員が仕事をしやすい「場」と「人を支えるシステム」を提供することだといいます。また社員の教育について、教育より採用が重要であり、採用時から理念に共感してもらえる人を採用するのが一番の近道であると話されました。そして報告のなかで、何度も経営者自身が社員のやる気をそぐ様な事をしていないかと問いかけていました。社員の人間性が最大の商品!!と言い切る川畑社長の報告に参加者一同感銘と重要性を感じた分科会でした。
天徳管材(株) 坂野 正幸 (尾張南青同)
第3分科会
こだわりの品質でブランド構築を〜顧客の求める〓本物の味(健康と安心)〓を追求
山田 謹一氏 (株)若菜 (海部・津島地区)
(株)若菜では、徹底した減農薬・無添加というこだわりの商品づくりを、社内一丸となって突き進めた結果、健康・安全面における「信頼のブランド力」を得ることができたという内容でした。グループ討論では「各社が追求すべき本物とそのための戦略」について活発に意見が交換されました。(株)若菜の経営実践を自社に置き換えて学んだ結果、以下のポイントに結論付けられました。第1には、顧客から信頼を持たれる企業であること。第2には、顧客の期待に応えられること。第3には、社内外の信頼を裏切らないこと。最後は、常にお客様の立場に立つことです。ブランドを構築するには、日々の実践が必要となり、一朝一夕に結果を出せるものではありません。各企業が経営理念を改めて認識し、目標を掲げて経営者と社員が一丸となって進めていく覚悟を新たにした分科会でした。
(株)三井酢店 三井 哲司 (知多北部地区)
第4分科会
真の技術は「磨かれた心とともにあり」〜「テクニアカレッジ」に見る技術伝承の取組み
高橋 弘茂氏 タカハシテクニア(株) (第2青同)
高橋氏が社長に就任した時、社内の雰囲気はギクシャクし、会社の業績も悪く、悔しい思いをしたといいます。そこで高橋氏は会社の業績回復のために戦略を練りました。その一つが社員一人一人とのヒアリングで「何の為に会社に来ているのか?」を問い、これからは自分を育てる場所としての会社であって欲しいと話しをしました。会社の改革を推しすすめ、徐々に売上げが回復していく中で、ベテラン社員の稼働率の低さに気付きます。そのため、ベテラン社員を講師に社内研修を始めます。この取り組みが社内に変化を起こし、社外から研修生を受け入れるレベルまで達し「テクニアカレッジ」へと発展します。最後に高橋氏は、今後も他社や教育機関からも多くの生徒を受け入れ、子供達にものづくりの魅力を伝えていきたい」と展望を語りました。
(株)伊藤精密工具製作所 伊藤 政憲 (第2青同)
第5分科会
国際競争に勝ち抜く〜観光産業から学ぶ
西山 譲氏 (株)富士ツーリスト (中村地区)
西山氏から、国土交通省における観光戦略、観光における世界の流れ、ヨーロッパの特にドイツとの比較、日本の現状(環境、景観の面)、旅行業界の実態、外国人に聞く日本の観光、街づくりへの取り組み等を中心に報告していただきました。グループ討論では、各自が自身の地域の振興という面での討論が中心となりました。名古屋を中心とした愛知の経済は、トヨタ自動車への依存度が高く、今後はトヨタを中心とした“ものづくり”を世界にアピールできる街づくりをしていくこと。そして、この地域の文化(食文化・祭・歴史等)のアピールや、広域な視点からの中部圏の観光との連携も今後のテーマになってくるという意見が出ました。地域振興をテーマに、行政の方と意見交換ができたことは、大きな収穫があったと感じました。
原田酒造(資) 原田 晃宏 (知多北部地区)
第6分科会
強みを磨いて時代をつかむ!〜差別化した技術の確立で、新たなニーズを開拓
村田 幸洋氏 大同紙工印刷(株) (東地区)
大同紙工印刷の四つの基本思考。それは、「だったらどうする」「いつもスタートライン」「とにかくやってみる。失敗したら教育費」「先々に問題になる事は早く対処」です。これらをふまえて、村田氏が大同紙工に入社時から、今日に至るまでの経過と今後の展望を報告しました。なかでも、一般総合印刷から特殊印刷に移行するきっかけになったお客様の一言からの社長の思考と行動力は、まさしく経営者のあるべき姿を感じさせるものでした。さらに「差別化した強みはすぐにはできず、物事のあるべき姿を明確にし、それを追求し続ける事が強みつながる」との話が印象に残りました。グループ討論では、自社の現状を踏まえて「今のままで良いのか」と参加者に危機感を感じて頂きます。次に「だったらどうする」をテーマに、あるべき姿を踏まえた明日からの取り組みを真剣に討論しあいました。
(有)ゑぐち 江口 知宏 (第1青同)
第7分科会
経営理念は魂の叫び!〜何のための企業経営か
樋口 義高氏 (株)トータルサービスネットワーク (東地区)
同友会の例会で経営指針を作成し、それを会社に取り入れ成果をあげたという報告は聞いたことがあります。しかし、樋口氏の報告は、仕事での体験やお客様に対しての考え方であり、自社の経営の仕方という普段私たちが行っている経営活動そのものの話でした。つまり、日々の活動を成文化したものが、実は経営理念だという事に気付かされました。同友会に入ってからの学びや実践。目的と目標の違い。経営指針の3つの柱である理念・方針・計画の話を聞きました。それらを、会社だけでなく一個人にあてはめたり、理念が明確になると永続性のある会社になることなど大変学び多き報告でした。私たちが会社を経営する目的は何なのか。お金や家族のためか。顧客や社会のためなのか。こんな根本的なことを考えると、自社の存在意義が見えてきます。それが経営理念に繋がる事に気付くことができました。
井手企画 井手 由紀夫 (第1青同)
第8分科会
社員との信頼関係くりはまず社長から!〜信頼される社長の経営姿勢とは
大島 良和氏 協栄産業(株) (尾北地区)
大島氏は車の部品製造の下請の仕事で、若者をリーダに据えたり、外国人を雇用したりする課題の多い環境のなか成果をあげています。ハンディを抱える人達を中心に据えての経営は大変です。まさに報告者の温かい人間性がほとばしる内容でした。こんな「人を人として認めて経営している」報告に参加者は聞き入りました。グループ討論では、「信頼関係」の定義や意味を再確認する事から始まりました。そして、会社内で経営者と社員の間で「信頼関係」を築く事の難しさと、コミュニケーションの大切さが指摘されました。また、社長の人間性を高めること、情報公開をすること、社長が覚悟を持って経営することなど、多くのまとめが発表されました。最後のまとめの「自分が変わり続ける事が必要であり、人を頼って任せると信じる事ができる」という言葉を忘れてはいけないと感じました。
(株)サンテック 青木 義彦 (海部・津島地区)
第9分科会
新卒採用で会社が変わった〜先輩社員も変わり風通しのよい組織に
白井 美佐子氏 (株)ライアス (北地区)
白井氏は、父親の経営する会社に入社し、数年後、新卒採用を始めます。社内では、古参社員が自分達の仕事がなくなるという不安に駆られていました。そのため、事前の社内勉強会を開き、その講師にベテラン社員を起用することで、社員の不安感がなくなり、プラス発想に変わってきたといいます。新卒採用は、中途採用に比較し、費用がかかるといわれますが、ライアスでは、採用が売上増加に結びついています。いつも人的余裕があることで、急な仕事の依頼にも対応できるからです。採用する上で大切なのは、理念を語ることです。白井氏は後継者で、決して先代と同じことはできません。でも、理念は共有できます。現在では、採用を自分の仕事とし、事業継承を考え、自分のブレーンをそこから育てようと考えています。理念の共有と、それに基づいた経営をすることが大切だと改めて感じました。
(株)丸竹 服部 勝之 (春日井地区)
第10分科会
<あてにし当てにされる関係づくり〜お互いの自立と連携
水野 宏幸氏 (株)天狗堂 (豊田地区)
(株)天狗堂はバブル後も商売が順調に拡大しますが、8年前に突然売上が落ち、経営危機に陥ります。その時、社員数も減ってしまいました。水野氏の人材育成の決意はこの時期から始まりました。社員研修に費用をかけ、効果を出しますが、依存型社員を作ってしまった事に気がつきます。同友会に入会し学ぶなかでいかに社員を自分の都合で動かしていたかを知ります。その後、社員の意見を積極的に聞く事にしたといいます。社員の考えを引き出し、尊重することで、社員の自律を図りました。そうした自立型社員の意見で会社が動くようになる、「協働型組織」経営を目指しています。最後に、「自律」とは自分がやるべきことを自らやることであり、お互いを尊重して意見を聞くことが自律の始まりであることを強調しました。あてにしあてにされる関係づくりの挑戦は続きます。
(株)加藤設計 加藤 昌之 (千種地区)
第11分科会
共生・人を大切にする経営とは?〜高齢者・障害者雇用企業に学ぶ
石川 喜一朗氏 (株)石川マテリアル (千種地区)小出 晶子氏 タイヨー機械(株) (稲沢地区)森部 克明氏 豊栄工業(株) (一宮地区)
石川氏より、健常者も障害者も高齢者も同じ人間であり、働く意欲も個性もあること。自分がやれる役割を持ち、存在を認め合うことが本当の幸せであり、会社自体が周りから生かされていると思えることが共生であるとの報告がありました。森部氏からは、人を大切にするとは、目標に向かって共に学び喜びあえる事。社員は一つの家族であり、共同体である事が指摘されました。小出氏は、働くことが喜びにつながり、社員同士が支えあい、補い合うこと。そのために、誰でもが働ける環境作りが大切と強調しました。グループ討論では、共生とは命を輝かせること。この会社へ入って良かったと心から思ってもらうこと。そして、ひとり一人の個性を持ち味として生かし、適正を生かした仕事を見つけることなど、心に響く奥深い話の数々が報告がされました。
(有)進工舎 田中 誠氏 (千種地区)
第12分科会
金融情勢の変化を企業体質強化に〜金融機関からみた中小企業のあるべき姿とは
松波 正晃氏 (株)クリエイティブ・プロダクツ・ウェーブ (中区北地区)金原 義彦氏 FMCオフィス (碧南・高浜地区)
松波氏は、企業の支援者である金融機関に、経営課題を正確かつ明確に提示することがまず必要といいます。経営指針や計画をいくら作っても、根拠がなくては金融機関の支援は得られません。過去の検証と未来の計画から現在の経営課題が見え、何をやれば良いかがわかります。そして、毎月・半期単位で状況把握する必要があります。これが「足元の見える化」で、金融機関との信頼関係が生まれるといいます。助言者のFMCオフィス代表、金原義彦氏(碧南・高浜地区)からは、金融機関の現状と金融情勢の変化についての報告がありました。激減した銀行数や融資残高。定性分析による格付け評価。そして、一律適用から変わった信用保証料など、同友会アンケートの調査も紹介しながら説明をしました。
(株)エコシステムズ 内野 孝幸 (中区南地区)