金融アセスだより
第11回
地震保険によるリスク対策
地震大国である日本において、地震発生時に損害を受けた場合の資金調達は中小企業において大きな課題といえます。しかし、経済産業省等の調査(平成18年)によると、大地震の発生について約九割の中小企業が「企業経営上の重大なリスク」と認識しているにもかかわらず、約半数の企業が緊急時の必要資金の手当てをしていないとしています。また、対策をとっている企業の中でも充分な資金手当をしている企業は約2割です。これは対策にかかるコストが比較的高額であることに原因があります。
2〜3割の保険料が削減可能
地震に対する事前対策として代表的なものに“地震保険”があります。これは火災保険と比較すると、高いのが特徴です。まったく異なるリスクなので、比べる対象ではないのですが、コストダウンが大命題の中小企業にとっては大きな出費となります。企業が最少のコストで最大の効果を得るためには徹底的に保険会社間で競争させることが必要です。大手の保険会社は地震保険も強気の見積を持ってくる(引受けない場合もあります)ので中堅・外資保険会社等幅広く検討し、好条件の保険会社に自社の保険をすべてまとめ、さらによい条件を引き出します。このような方法で地震保険やその他の損害保険の保険料を2〜3割削減できる場合もあります。
間接損害も補償
また先の調査で、中小企業に地震保険が普及しない理由の1つに「地震保険では間接損害が補償されないから」とありますが、必ずしもそうではありません。地震による休業時の利益補償や従業員の給与支払費用を補償する“費用保険”を取扱っている保険会社もあります。ただし、地震保険については各保険会社が地域ごとに引受可能な限度枠を設定しているので、限度枠がいっぱいで引受けないこともありえます。他の保険と異なり“早い者勝ち”的な要素もあるので入りたいときに入れない可能性は充分あります。地震破損による建物や設備の復旧費用・被災後2ケ月(インフラ等の復旧期間)程度の運転資金を確保し、大規模地震が発生しても企業存続できる体制を整えておくことが企業や従業員の生活を守ることにつながるといえます。
東海保険ブローカー(株)藤田洋志