金融アセスだより
第13回
改正建築基準法が及ぼす影響
2005年に発覚した構造計算書偽装問題(姉歯事件)を受けて、06年に成立した改正建築基準法(以下、改正法)が今年6月20日に施行されました。この日以降、建築確認申請は滞ったままの異常な状態が続き、住宅着工数の激減につながっています。国土交通省(以下、国交省)発表の07年8月における新設住宅戸数のデータによると、前年同月比で43%減、9月に至っては前年同月比44%減の63018戸と連続で、過去最大の下落率です。
規制緩和から一転
これについて国交省は、申請手続きの円滑化に取り組めば現場の混乱がなくなると認識しています。しかし現場の声は、根本的な解決がなくては、現在の混乱が収束することはなく、更に悪い状況を招くと危惧されています。民間の検査機関では、仕事が忙しく、しばらくは新規の仕事は受付けない場所もあります。公的機関でも長蛇の列で、申請自体が困難であるのに加え、不備を指摘され受理されないことも多いといいます。中には、並んでも受理されないのだから、体制が整うまで新規申請自体を止めている業者もいます。
早急な対応が必要
この問題を受け国交省は10月30日に、改正法を一部緩和すると発表しました。しかし、構造計算プログラム(大臣認定ソフト)の不備などの状況は変わっていません。基準の厳密化と安全な住宅の提供を目的とする法律が、建築業界を支える中小の設計事務所や建築士が廃業に追い込まれるのでは本末転倒といえます。今日では、建築設計関連業界はもちろん、建設・不動産など関係業界、さらには広く社会全般に経済的損失が広がっています。
融資姿勢が硬化
さらに、10月1日にスタートした「責任共有制度(金融機関の20%負担)」の施行に伴い金融機関の融資姿勢が硬化してきそうです。そのため、年末にかけて小規模企業を中心に、倒産件数は引き続き増えると予測されます。国交省は、中小企業庁と連携した支援策の一環として、10月に、改正法施行の影響で資金繰りの悪化が懸念される工務店などの中小建設会社を対象に、セーフティーネット貸し付け制度の導入を発表しました。これらの支援策も有効に使いながら年末に向けて早めの対策が必要です。改正法成立から早1年。この改正法制定は、既に対岸の火事ではないといえます。
(株)長大商事 長谷川睦