第38回中小企業問題全国研究集会(宮城)
第13分科会
「人が島をつくり、島が人を育てる」中山勝比古氏(有)日間賀観光ホテル
3月6日〜7日に宮城県仙台市にて開催されました第38回中小企業問題全国研究集会の第13分科会で、愛知同友会の会員、(有)日間賀観光ホテルの中山勝比古氏(知多地区)が報告をされました。以下、報告要旨を紹介します。
若者が流出する中で
高度成長期に第1次産業が疲弊する中で、漁業中心であった日間賀島も若者が島を出て行かざるを得ない状況がありました。そこで漁業者は冬場の収入源として海苔養殖を始め、これが新たな仕事づくりの第1歩となり、過疎化は止まります。また日間賀島漁協は片名漁協と提携し、魚市場を設立、近代化資金制度の活用で造船を奨励しました。さらに日間賀島漁協は、主婦の働き場所を観光業に求めて、海水浴場、島一周道路、港の拡張、下水道事業など島のためにハード施設の事業を展開して観光業の支援をしてきました。
日間賀の魅力とは
観光業者は「漁師のために何が出来るか」を考え、島らしい魅力づくりを展開していきます。島外企業との連携とキャッチフレーズで「多幸の島」、「ふぐの島」など次々とビジネスを起こしていきました。「ふぐの島」は大企業の名古屋鉄道(株)との連携です。高付加価値商品の企画を、1年がかりで採用まで漕ぎ着けました。当時はこの地方では、「ふぐ」を食べる習慣があまりなく、日間賀島で水揚げされた「ふぐ」は鳥羽を経由して下関に行き、全国に出回っていました。始めは泣かず飛ばずでしたが、一気に軌道に乗りました。当初は3年ほど、下関唐戸魚市場(株)社長の松村久さんと最高の料理を作られる方のおふたりに、「ふぐ料理」を教えに来ていただきました。
島の収支を黒字に
始まりは個人の人の縁ですが、その心を動かしたのは「島の共生の精神」といえます。初年度には17件で始めた「ふぐ」料理は、翌年には60件の民宿も全部取り組みを始めました。そして講習会を開き、末代までこれで食べていこうと調理技術の標準化を図りました。海水浴客が減っている今、「ふぐ」料理がなかったら日間賀島は今頃過疎化の一途を辿るところでした。漁業と観光業が“想いを共有化”して仕事づくりをして来た原点は、「島の収支を黒字に」という考え方です。観光業は外貨を稼ぎ島の中で消費するという、地域における利益循環システムが存在しています。1人勝ちではダメで、地域活性化は地域経営の黒字化をめざすことなのです。経営が厳しくて地域の活動に参加できないというのはむしろ逆で、そんな時こそ地域の活性化に取り組んだ方が経営は上手く行くのではないでしょうか。
【文責・事務局野副】