金融アセスだより
第21回
社債の規制緩和
中小企業の資金調達は、現在、銀行融資のように、金融機関が投資家から預金として集めた資金を企業に融資する「間接金融」がメインとなっています。一方、株式や社債などを活用して企業が直接投資家から資金を調達する手法である「直接金融」は、上場企業では一般的な資金調達方法ですが、中小企業では今まではあまり活用されていませんでした。しかし、ここ最近では、中小企業においても直接金融がスポットを浴びつつあります。それは、平成18年から施行された会社法などの法改正によって、以下のような規制緩和や新制度の導入がされたことがその要因の1つになっています。まず、社債についての規制緩和が挙げられます。以前は株式会社しか認められていなかった社債の発行が、会社法によって有限会社や合資会社などにおいても解禁されました。縁故投資家に社債を発行することで、中小企業は資金調達をすることができる一方、投資家は銀行預金以上の金利によるリターンを期待することもできます。
株式制度が整備
また、株式制度が整備されたことも見逃せません。株式市場が存在しない中小企業においては、株式の売却先がないことや株価が不明瞭であることから、以前は株式での資金調達はベンチャーキャピタルや投資育成会社が出資をするなど限られたケース以外は困難でした。しかし、会社法で整備された株式制度を活用することでこれらの問題点をクリアできるようになりました。社員や取引先などの縁故者に株式を発行して資金調達をしつつ自社への帰属意識を高める効果を狙うなど、中小企業ならではの直接金融の実現が可能です。更に、会計参与の創設にも注目すべきです。税理士や会計士などの会計のプロを会計参与として企業に招聘し、直接金融に必須となる財務内容の信頼性を高いレベルで確保することが可能となります。非常に魅力的な直接金融ですが、これを活用したいと望む企業の目の前には間接金融以上のハードルが控えております。直接金融を活用できる企業になるべく、日々の勉強とよりよい会社づくりに一層力を入れていく必要があります。
イトー司法書士事務所 伊藤大輔