障害者問題委員会
2月7日
共に働き 共に生きる
海津歩氏(株)スワン・代表取締役社長
経営理念の重要性
(株)スワンは、ノーマライゼーション「障がいがある人もない人も、共に働き共に生きていく社会の実現」を理念に立ち上げた会社で、おいしい焼きたてパンの店スワンベーカリーを全国に展開します。1998年銀座店のオープンを皮切りに、現在は26店舗に273名を超える障がい者が社員として働いており、そのうち7割が知的障害者です。経営ポリシーは「事業は、世のため人のために役立つものであるなら、必ず繁栄し持続的経営ができる」というものです。給料は最低賃金法の適用除外をせず、きちんと支払うために利益をどう確保するかという組立で考えます。中には、経営に行き詰まる店舗もあります。ある店では、商品価値のないものを出していたため売上が伸びません。ある店では社員間で相手を見下す関係ができ雰囲気が悪くなっていました。こうした問題を1つ1つ解決する中で、どの店にも共通していたのが理念のぶれでした。障がい者雇用と経営の両立には、雇用の理念がしっかりと据わっていることが重要です。
自発的な意志、決定力を引き出す
現在、ベーカリー業界は、カフェやコンビニが台頭する中、デパ地下でのパンの客単価は高く、高齢者施設では朝食をパンにシフトするなど、商機もあるが難易度も高いという状況です。買っていただける商品の開発や販路の開拓をしなければなりません。当然、社員の能力開発が必要です。能力開発は、自発的な意志決定力を引き出すことをポイントに2つのことをやっています。1つは、褒めること。まず、初日につくったパンを褒めます。パンは初心者でもうまくできますから嘘ではありません。褒められることで、これまで自己否定の塊だった人生ががらりと肯定に変わり、ものすごく成長してきます。2つ目は、指示を控えること。仕事を一通り覚えたら、次は指示をせず待ちます。作業工程が進む中、周りの状況を見て自分が何をするかを考えなければなりません。見守る側はかなりじれますが、本人が判断し選ぶことで初めて乗り越えていけるのです。
違いを受け止める
仕事は「単純化、パターン化、細分化」し、パンづくりから接客まで職域を広げていきます。できることが増え、自分が必要とされることで、さらに働く意欲が引き出されます。企業とは人を介して業績をあげるもので、社員のやる気がなければできません。企業のCSRとは、社員を仕事に夢中にさせることではないかと考えます。自分の理想と現実のギャップでうつ病になる人が増えていますが、今の自分で勝負すればよいのです。もし、足が不自由で移動が困難ならば、周りの力を借りればできます。
全社一丸体制
スワンは、それぞれの長所をいかし、短所は仲間がたすける全員経営です。障がい者が定着した職場は健常者も定着すると言われますが、それはパワーハラスメントとは無縁だからでしょう。今、私は、障がい者も健常者も同じように見えます。人は違っていて当たり前。特別視せず、適材適所で人を生かしていきたいと思います。