金融アセスだより
第29回
金融検査マニュアルの別冊の改訂
1997年に金融庁(当時金融監督庁)が中小企業に融資をする時に銀行などが守るべきルールを作成したのが、金融検査マニュアル別冊です。あれから、10年程たち、現在「100年に1度」と言う不況になり、昨年の10月にこの別冊の一部が改訂されました。これは、かって、小泉政権時代の金融再生時にも言われた「リスケジューリング」と言う言葉です。愛知同友会でも、当時東京同友会の三宅氏を招き、金融再生に取り組む講演の中で「リスケジューリング」が話されました。今また、「リスケジューリング」がこの別冊改訂により、表面化してきたのです。
リスケしても格付けが下がらない
「リスケジューリング」とは、金利の引き下げ、金利・元本の支払い猶予、返済期限の延長、債権放棄などを言います。早い話が、この様な「条件緩和」をしたら、いままでは金融機関の不利益となる条件変更として、貸出金の回収リスクが高いと判断され不良債権に査定される事が多かったのです。そして、その企業は、金融機関より、貸し渋り、貸し剥がしなどの厳しい対応を受けてきました。それが10月の別冊の改訂により、リスケがあっても、金融機関が不良債権に格下げしなくても良い基準が明記されたのです。
賢い経営者に
具体的な内容としては、まず、3年以内に経営が健全化する「経営改善計画」が必要であったものが、原則5年、進捗良好の場合は10年になりました。次に計画の期間中は一定以上の金利の確保が必要でしたが、必要としないと大幅に基準が緩和されました。このように、リスケを金融機関に申し出た場合でも、以前は「不良債権」と見なされていた企業が「正常先」として取引を継続してもらえる可能性が高くなったと言う事です。このように、金融庁の動向を経営者が知っているか、知っていないかにより、金融機関との交渉もスムーズに進む事でしょう。同友会の会員は、金融情勢や金融動向を学び賢い経営者になっていただきたいものです。
村上電気工業(株) 村上秀樹