金融アセスだより
第32回
融資担当者の本音
最近政府与党では、年内の選挙を控え、中小企業の金融安定化のため緊急保障の政策を出すよう、金融庁や経産省へ積極的に指示を出しています。その成果として特別保証融資が進んでいますが、実態はどうなのでしょうか。今回、ある地銀融資担当者に現場の本音を聞いてみました。まず、よほど業績のよい企業であったり、新たな担保提供がない限り、プロパー融資はできないといいます。さらに、顧客から相談があると緊急保証付融資に回しますが、希望の満額はほとんど確保されず、1〜3割は減額されるそうです。各地銀とも支店別に保証協会の評価があるようで、支店によっては、断られたり、減額の率が高い場合もあるようです。
今後の対応を考慮
また、昨年11月に金融庁は「貸出条件緩和」の見直しを実施しました。従来は実現性の高い計画が策定されていない場合は、「貸出条件緩和債権」として不良債権に位置づけられていました。それがかなり緩和されましたが、実際には、リ・スケジュールを行った企業に対しての融資条件は厳しくなっているようです。金融機関は、融資を断る場合、金融庁から理由を説明するよう言われています。その時に、「返済能力不足」を理由に取引先に説明することは抵抗があると思います。その結果、断る理由として「総合的に判断した結果」という表現になるのです。4、5月は融資の需要が極端に減ったといいます。一様の手当は済んだのか、今後、8月危機や選挙後の対応を見ながら、私達は金融情勢を学んでいかなければなりません。
(株)三恵社 木全哲也