第48回定時総会
第3分科会
4月21日
自社発展のステップを発見
〜企業変革支援プログラムで経営課題を浮き彫りに〜
パネリスト:
加藤明彦氏エイベックス(株)
徳升忍氏(株)ドライバーサービス
コーディネータ:
青木義彦氏(株)サンテック
よい企業づくりの成熟度を診断
同友会理念の視点から開発
〈青木〉いよいよ本格運用がはじまりました企業変革支援プログラムのステップ1。この分科会でご参加の皆さんにも実際に体験をしていただきましたが、いかがでしたか。「ステップ1」は、同友会が培ってきた「労使見解」や3つの目的といった視点で、よい企業づくりの成熟度を診断するツールとして開発されました。この診断によって何が見えてくるのか、また自社経営にどのように活かせるのか。昨年夏「テスト版」から診断を実施されているお二人にうかがいます。まず、診断を行ってみてどのような事に気づいたか、全体的な感想をお聞かせ下さい。
自社の状況を冷静に振り返る
〈徳升〉経営環境の悪化も影響してか、テスト版の時と比べ、全体的に厳しい診断結果でした。ただ、プログラム冊子にも書かれている通り、その時の情勢や自分の気分感情によっても評価は変化するので、その時の点数が絶対的に「よい会社」「そうでない会社」を示すものではないことを踏まえておいてください。重要なのは、自社の状況を冷静に振り返り、考えながら行うことで、今まで見えてなかった問題がいろいろと発見できることです。また指針や共育など、今まで同友会で学んできたことが随分と会社に活きてきていることや、まだまだ不十分な点にかなり気づかされました。
同友会らしい視点で
〈加藤〉昨年テスト版で行った時は、状態の説明などをあまり見ずに直感で点数をつけました。その時の経営状況がよかったこともあり、比較的甘めの評価だったと思います。今回は、急激な不況で業績が大幅に下がっているなか、じっくりと読みながら行いました。すると、例えば「この項目のレベル3は、自社だと何がどうできている状態か」「実際の状況はどうか」など、プログラムの項目を自社に具体的に当てはめて考えることができます。その結果、社内で見直すべき点がいくつも見つかりました。このプログラムは「労使見解」をはじめとした同友会らしい視点で、自社を具体的に見つめ直すことができるのが最大の特長といえます。もし同友会にいなければ、自分も真っ先に雇用に手をつけていただろうと思います。しかし「人を切ってしまったらおしまい」ということも、このプログラムから気づかされるのです。
具体的な社内実践や仕組み
気づいた課題への取り組み
〈青木〉その時々の診断結果が高点数イコール必ずよい会社ではない。逆もまた然り、ということが言えると思います。その人ごとの経営への考え方や企業像の捉え方の特徴が、目に見える形で現れるということですね。考え方が明確になっているか。それが具体的な社内実践や仕組みとしてどこまで反映できているのか。その根拠は何か。お互いの考え方を比べ合う事で、自社課題がさらに明らかになってくると思います。さて、お二人とも課題発見ができたとのお話でしたが、具体的にどのような課題に気づき、社内で何を取り組もうと思われましたか。また、同友会での学びはどこまで実践できていたでしょうか。
強い会社の基礎は「人を生かす経営」
〈加藤〉会社全般について「できている」つもりで、実は中途半端な状態にあることがわかりました。幹部社員にも診断を行ってもらい、比較する事でそれが鮮明になりました。経営指針作りと共有そのものについて、原点に立ち返って取り組もうと思いました。具体的課題は、例えば「経営の主要数値の正確な把握」という項目があります。まず経営者が決算書の各項目・各数値の意味をよく理解することは当然ですが、会社全体から数値を集約し時系列的に分析し経営指針に落とし込んで、今後の見通しを語れるようになれば、例えば銀行交渉などにも力を発揮できるようになると思います。しかしそこまで行うには、社内に数値把握の仕組みをつくることが必要ですし、それを行う人材育成も不可欠と気づいてきます。結局のところ、強い会社づくりの基礎は「人を生かす経営」だということがあらためてわかります。
社員の理解と組織変更が可能に
〈徳升〉自分ではかなりやってきたと思っていた「人を生かす経営」の実践にしても、結局賃金の切り下げなどを行わざるを得ない状態になりました。社員にしてみれば、生活に直結する問題です。逆に、このような厳しい経営判断でも、社員からすぐに理解を得られ、計画見直しや組織・労働条件の変更といった緊急対策が可能だったことも事実です。これらの出来事をうけてプログラムを元に経営を見直すと、カテゴリ1(経営者の責任)、2(理念の実践)、3(人を生かす経営)の取り組みが一定実を結んでいることを確認したとともに、4(市場・顧客及び自社の理解と対応)と5(付加価値を高める)に、大きな弱点があることが分かりました。高収益をあげられる経営体質でなければ、「人を生かす経営」は貫けません。今後のわが社の重点課題として取り組みます。カテゴリの一部分だけを引き上げるのではなく、全体のレベルを引き上げていく取り組みが重要だと感じます。
素早い判断と対策が必要
基本的な仕組みが必要
〈青木〉現在のような時期には特に、素早い判断・対策が必要とされますが、社員がついてくる社風や、基本的な仕組みができていなければ対応は難しいでしょう。またカテゴリ4・5は、時代変化に対応して経営を維持発展させるためにも不可欠な課題だと思います。カテゴリ1〜3の部分を、同友会が活動の力点に置いてきた重要性を再確認したとともに、今後の活動についての問題提起も受けたと感じます。そこで、同友会活動のリード役でもあるお二人に、今後の同友会活動についてのポイントや、プログラムの活用法について、その考えをうかがいます。
自社の変化や認識の違いを発見
〈加藤〉「指針のつくり方」などの手法を学ぶ前に、「なぜ必要なのか」に気づくこと、自分の経営課題に気づくことが重要です。課題発見にはプログラム実施が大いに役立ちます。例えば地区でプログラムを使ってみて、共通する課題や、レベルアップについて話し合っていくと、どのような例会や活動が必要かも見えてくるのではないでしょうか。また診断は一度だけではなく定期的に、自分だけでなく幹部社員と一緒に行い、自社の変化や認識の違いを発見する事が大切だと思います。
愛知同友会の活動の柱にしていく
〈徳升〉財務体質強化や収益性の向上なども重要です。しかしそこに「即効性」や「近道」を求めて手法に走ってしまうと、むしろ逆の結果を生みます。社員との信頼関係がしっかりとしてこそ、あらゆる取り組みが生きてきます。カテゴリ1〜3を基本に据えて取り組んでみてください。社員に会社の方向性を示し、同じ方向に全社で向かっていくために、経営指針が必ず必要になる事に気づいて頂きたいと思います。人を生かすために指針づくり、強い会社づくりに取り組むということを、愛知同友会の活動の柱として行きたいです。
診断データを分析
〈青木〉プログラムの自社経営への活かし方、同友会活動への活かし方が数々述べられました。自社経営の変革に、同友会活動の発展に、プログラムの大きな可能性を感じます。
現在、課題解決の道筋をより具体的に示すものとしてステップ2の開発が進められており、今年度末の発表をめざしています。また全国的な取り組みとして、「全国定期診断」や、診断データを集約・統計し、中小企業全体の課題を分析して会内外に発信・提言していくことも計画されています。今後プログラム活用によって、多くの会員企業の経営体質強化や、同友会運動の発展につながっていくことを期待したいと思います。
(文責:事務局政廣)