愛知同友会 創立50周年 記念シリーズ②
時代を創る企業家たち

愛知同友会は1962年7月9日に会員34名からスタートしました。このコーナーでは、2年後の2012年に50周年を迎えるにあたり、同友会運動に永年関わってこられた方々に登場いただき、歴史に学びつつ次の時代に継承すべき課題について考えていきます。

想いをバトンタッチ

愛知同友会顧問(創立会員・南地区)
こむ研究所 所長 幸村 隆夫 氏

 

(写真)幸村氏

 

幸村 隆夫(こうむら たかお)氏

1929年2月生まれ。1957年仲間と共に(株)共同機械製作所の前身企業を立ち上げる。愛知同友会創立に経営幹部として参加、1986年に先代社長の死去にともない社長に就任。2000年高齢者工学(ジエロンテクノロジー)の研究機関「こむ研究所」を設立し、現在に至る。

「君も会員にしておいたから」

私と同友会の出会い。それは仲間8人で独立して始めた会社、(株)共同機械製作所の初代社長の今井保氏(故人)が愛知同友会の創立に参画、会社に帰ってきて「君も会員にしておいたから」の一言から始まりました。

翌年の1963年に経営幹部育成のための「経営代行者育成講座」で学ぶようになり、(株)江崎本店の江崎信雄氏(創立会員、故人)にお会いしました。氏はその後、愛知同友会創立25周年に次のように述べています。

「私にとっての同友会の25年は経営者の自覚をうながし、企業が社会的な公器であることを教わりました。また中小企業が団結して努力すれば、経営環境を良くすることができることも教わった歴史でした」。私も同じように感じております。

話を戻すと、当時、江崎本店では、限りなく総資本回転率をあげなければ経営が安定できなかったようですが、私の会社では総資本利益率の向上が企業存続の鍵だったので、よく議論になりました。なつかしい思い出です。

景気の波にもまれ続けて

共同機械製作所は専用工作機械メーカーで、豊和産業やパロマ、そして本田技研工業と取引をしていました。弱小の専用機メーカーなので、好不況の波にもまれ易く、3〜4年の通常サイクル、10年の設備投資特有のサイクルなどにもまれ続けました。

このサイクルのどん底にくると、もがいてももがいても溺れそうになります。おびただしい企業倒産の数と隣り合わせに生き延びてきました。

1971年、初代社長の今井氏は病気で入院してしまいます。完治が困難だったのですが、社会派を持って任じていた氏は「俺なくしては」との気概で、あちこちの役員を引き受けたのでした。これが病気を悪化させたのですが、周りの心配をよそに10年頑張ったのです。

ゆたか福祉会の理事長、愛知同友会協同組合の理事長など、頼まれ社長などを引き受けていました。しかし本業の経営不振が命を縮めたのでしょう。1986年に逝去し、私が社長を引き継ぎました。

先代からのバトンタッチ

先代の今井氏は豪快な人でした。「俺さえいれば会社はなんとかなる」という人で、今井氏が存命の間は資金繰りも不思議になんとかなっていましたが、逝去にともない立ちゆかなくなりました。
そのために、何度も他社から資本援助を受けたりしてがんばってきましたが、最後にはある会社に吸収合併され、共同機械製作所はその役割を終えました。

赤字会社でしたが、保有特許を含めての完全吸収合併だったので社員も1人の脱落者も出さず、給与や労働条件も守られたので、経営者として肩の荷が降りたのを覚えています。

技術分野を担当して

私は技術畑出身ということもあって、愛知同友会では技術開発懇話会の世話人や技術開発委員長という役職も務めてきました。技術分野を通じて、東京同友会や神奈川同友会の経営者の方々と知り合ったのが思い出です。

地元の南地区では長い間地区役員を務めました。長く地区役員を一緒にやった(株)エステムの鋤柄修氏(中同協会長)との出会いは不思議な感覚に襲われます。氏は企業経営にも会活動にもとても純粋な人で、物事のストーリーをしっかり描くことができた方だと思います。

そして「会社を良くしたい」という気持ちのひたむきさ。この強烈な情熱は私の中にも飛び火して心の中を照らしてくれたものです。このような情熱をいつまでも燃やし続けて頂きたいと思います。

時代を創る同友会へ

同友会はとても立派な会に成長したと思います。経営指針の作成や労使見解の学びなど、一見地味ですが経営の本質に迫る活動がその土台にあると思います。その土台のもと3000名もの多くの人が同友会を盛り上げてくれている。創立当時では夢にも思わなかったことです。

私は81歳を迎え会歴は48年になります。今では同友会の創立メンバーも少なくなりましたが、中小企業家が自分達で議論し考え、自らの力で会社や社会を変えてきた歴史は、これからも続くと思います。

到達点は新たな出発点でもあります。私達は中小企業家として次なる時代に向けて新しい課題に取り組んで行かなければなりません。「人類の永遠の存続と繁栄」。同友会運動の目指すものは、このような壮大な人類史運動ともいえることを最後にお伝えしておきます。

 

【文責:事務局 八田】