愛知県中小企業研究財団 記念の集い(9月15日)
アジアと日本の中小企業を考える

黒瀬 直宏氏 嘉悦大学教授

 

東アジアにおける中小企業連携

愛知県中小企業研究財団は、中小企業の中長期的課題の研究を目的に愛知同友会を母体として1993年に設立されました。これまでイタリア、スイスの中小企業振興の視察、東京都大田区の産業集積研究、会員の共同開発の事例研究などを行い、2002年には愛知同友会と共催でEU視察を行い中小企業憲章制定運動の必要性を発信しました。

毎年講演会を開催。今回、東アジアの中小企業連携の展望について嘉悦大学の黒瀬教授に講演いただきました。

まず実体経済から独立した投機的金融活動の拡大(カジノ資本主義化)が進行し先進国のものづくりが行き詰るなか、東アジアが世界のものづくりの中心へと歩み始めたこと、アジアの中小企業の共同連帯が期待されることを指摘しました。

 

講演する黒瀬教授

経済発展は原始的蓄積から

次に東アジアの経済発展をもたらしたのは「原始的蓄積」(資本、労働力、技術、土地、諸制度)の進行であり、海外から持ち込まれたもの、政府から推し進められたもの、中小企業から進んだものの3つの要素があることを解説しました。

具体例として中国浙江省の温州市では産業集積、ネットワーク化が進んでおり、各地の市場の場面情報などが集まり新たな産業の創出が活発に起こっている事例を紹介しました。

一方、中国の中小企業では低賃金、使い捨て雇用、劣悪な労働条件や、中小企業金融制度の未整備などの課題があることも指摘されました。

また日本で販売されるオーダーの和服の刺繍はベトナムで作られていることにも触れ、草の根的な中小企業同士のつながりが始まっていることを強調しました。

今後、日本の中小企業の経験を交流することでアジア圏の中小企業の発展に寄与し、アジア各国の社会的自立に協力することで、中小企業相互のアジア圏での連携が広がる可能性があることを示唆しました。