愛知同友会 創立50周年 記念シリーズ⑤
時代を創る企業家たち

愛知同友会は1962年7月9日に会員34名からスタートし2年後には創立50周年を迎えます。同友会運動に永年関わってこられた会員の皆さんに登場いただき、歴史に学びつつ次の時代に継承すべき課題について考えていきます。

先人の知恵を後世の人達に

愛知同友会名誉会員(創立会員・中村地区)
小瀬木 昭三氏

 

(写真)小瀬木昭三(おぜきしょうぞう)氏

 

1928年1月生まれ。1962年7月の名古屋中小企業家同友会(当時)の創立に参画、長年にわたって理事や政策委員長を務める。また中部同友会協同組合の常務理事や愛知県中小企業研究財団の常務理事を務める。

「ザイルが必要なんだ」

愛知同友会の草創期を思い出します。最初は名古屋中小企業家同友会という名称でした。当時は傾斜生産方式が取られ、今よりももっと様々な悩ましい課題がありました。「どうしたら生き残れるか」、「明日の手形資金の不足を社員にも話せない」など、酒を酌み交わしながら悩みを語り合いました。

そんな時、誰かが「ザイルが必要なんだ」と独り言をいいました。高く険しい山を登るには、パーティーを組んで、ザイルで身体を結びあって登るものです。それでは、何かないかと話をしていると、東京の方で何やら官製の団体ではなく、経営者の仲間が自分たちで自主的に作った会があると聞きつけました。

「天は自ら助くるものを助く」の精神を自覚した団体。同友会に情熱とロマンを感じたのを覚えています。

言葉には歴史がある

「名古屋」と冠していたのは、岐阜県や三重県の人も参加できるよう限定をつけないようにしたためです。それから76年には「愛知」という名称になりました。

東京や大阪と比べて、それほど激しい労働組合との対立も目立たず、いかに自社経営を守り、発展させるかというテーマでの活動が前面に出ており、その意味では実践的だったと思います。

同友会は言葉を大切にしてきました。その運動の歴史から同友会の先人達が学びとってきたものが、言葉ひとつひとつの背景となっているのです。

例えば、「協議会」という言葉です。同友会のセンターである中同協は、正式名称を「中小企業家同友会全国協議会」といいます。上意下達の組織は今でも多いと思います。しかし同友会では、これとは対照的に、上下関係ではなく、対等平等の関係であることを大切にしており、この表現になっているのです。

「3つの目的」の先がけ〜愛知の「4つの柱」

現在、同友会には「3つの目的」がありますが、愛知同友会には66年に決定した「4つの柱」がありました。それは(1)会員の多面的な要望に応える会にしよう、(2)経営者の姿勢を正し、企業活動を発展させ、赤字企業をなくそう、(3)中小企業の当然の要求を声を大にして訴えよう、(4)会員を増やし同友会を大きくしよう、というものでした。

この4つの柱は、その後、73年に名古屋で開催された中同協総会で定式化された同友会の3つの目的の礎にもなっています。

両者を比較すると、違いは活動の柱として会員増強を位置づけたことです。新しい仕事を作り出し、辞書の1ページを増やす。何より地域の発展を支える人材を輩出し、行政や他団体に対して私達、中小企業の声を届ける。「数は力」を重視したからです。

 

(写真)小瀬木氏も参加した財団主催の研修視察の書籍

隔世の感あり

私は政策委員長を10年近く務めました。同友会の政策活動で印象深いのは、1963年の旧中小企業基本法制定をめぐっての会内討議や、67年に売上税創設反対署名運動のアピールを発表し、署名運動を始めたことなどです。

国政や県政の選挙になればすべての政党の候補者を集め公開討論会を開いたり、金融機関との勉強会や県や名古屋市に政策提言を続け、中小企業の視点に立った意見を伝えてきたつもりです。

その集大成として今年6月18日には中小企業憲章が閣議決定されましたね。全国でわずか4万社程度の同友会が、他団体や学識経験者を巻き込み、国の施策として世に生み出すということは、当時からすると想像もできない快挙です。

しかしもうひと押しが必要になります。よく読むと、できた憲章は政府が行う「お触れ」のように感じます。私達が求める憲章は、国会決議を経て、「私たち国民の総意」として実行していくものです。そこにどう鋭く切り込んでいくかが今後の課題といえます。

歩く「広告塔」

同友会はよくここまでこれたと思います。しかし、組織の力が大きくなったことは逆に、社会的責任も発生することになります。

私達は「歩く広告塔」として、同友会で学んだことを社内でも社外でも実践していき、日々、自らを検証し直さなければなりません。「良い会社」と「良い経営者」は労使見解に、「良い経営環境」は同友会が掲げる中小企業憲章(草案)に繋がります。

多くの先人達が知恵と勇気で築いてきた経験をぜひとも皆さんが後世の人達に伝えていって欲しいと願います。

 

【文責:事務局 八田】