第12回あいち経営フォーラム(11月9日)
進化のための、打ち手は無限 〜学びを実践するのは、今

6年連続で1000名を突破!

打ち手は何か

今年で12回目となる「あいち経営フォーラム」が、名古屋国際会議場で開催されました。

今年のテーマは「進化のための、打ち手は無限〜学びを実践するのは、今」。無限にある「打ち手」の中からあなたが「打つ手」は何なのかを会員に問いかけました。

参加者は1141名で、6年連続で1000名を突破。厳しい経営環境の中でも、経営へのヒントを1つでも得ようとする会員経営者の熱心さがこの数字にも表れています。

基調講演には、三重同友会の前代表理事(現相談役)の宮﨑本店の宮﨑由至社長をお招きし、「伝統産業を生き抜く『正統派異端系』経営」と題して講演を頂きました。

常に新しいことに挑戦し続けることの大切さや、そのために些細な情報も見逃さずに次の戦略に生かす発想力、また、市場ニーズの変化を素早くとらえて対応する柔軟性や、地域と共に歩む中小企業の姿などを余すところなく語っていただきました。

 

県外の分科会報告者を紹介

企業変革支援プログラムに沿った15の分科会

分科会は、「企業変革支援プログラム」の5つのカテゴリーに沿って15の分科会を設営しました。

内容は、厳しい時代だからこそ求められる経営者の姿勢や社員との共育ち、また、次の一手として新規事業展開や新商品開発・新市場創造、あるいは地球環境問題やライフワークバランス・海外対応など時代のテーマでもある課題などを取り上げました。(後日、報告集を作成)

 

受付で他地区の会員と情報交換。グループ討論で学び方を学ぶ。
経営課題別に15の分科会が設営される

 

交流会は、昨年に引き続いて会員企業の協力を得て、参加者の手づくりで設営されました。そして今回は全参加者の6割を超える、700名以上が交流会まで参加しました。

基調講演の宮﨑本店の清酒「宮の雪」や、第14分科会報告者の早和果樹園からは1本950円もするみかんジュース「味まろしぼり」もご提供いただきました。

また愛知同友会の会員が提供するローストビーフ・ジャンボエビフライ・無添加ソーセージや、味噌おでん・カレーライスなど自慢の料理に舌鼓を打ちました。全員で行う後片付けも定番となり、会は和気藹々と進みました。

最後に、実行委員長を2年間務めた宇佐美隆行氏へ酒井副実行委員長から感謝の花束が手渡され、来年11月2日第13回フォーラムでの再会を誓って閉会しました。

 

実行委員長を2年務めた宇佐美氏(右)に花束が。交流会の料理は会員が提供する自慢の一品。

 

第12回あいち経営フォーラム 基調講演
伝統産業を生き抜く 「正統派異端系」経営

 

宮﨑 由至氏 (株)宮﨑本店代表取締役(三重同友会・相談役)

 

宮ざき由至氏

デフレ下での戦略

私は、隣の三重県楠町でお酒を作っています。私が7代目になります。創業は1846年。人口1万人の楠町に、最盛期には36軒の酒屋がありましたが、現在では当社だけです。「リーマンショックで売上が8割減った」と言われていますが、当社は36分の1で生き延びて、今も仕事をさせていただいています。

今、デフレが止まりません。こういう時代は、同じ商品を同じマーケットに同じやり方で売り続けていると、必ず値段は下がります。値段を下げないためには、違う商品を出すか、同じ商品を違うマーケットで売るか、他の企業と連携を組むか、この3つしかありません。

連携に必要なのは、各社が自社の強みを正確に知ることですが、そう言う私も、自社の強みが分かりませんでした。

客層を明確に

数年前、大手量販店のバイヤーが当社にみえて、私に強みを尋ねました。その時に自信を持って答えた回答は、他の酒蔵と地名が違うだけで、ほとんど同じ内容だったのです。困った私は、当社を選んでいただいた理由をバイヤーに聞きました。

工場、品質、商品を見て「安心、安定、ストーリー性がある」という、そのバイヤーの明確な回答に私は唖然としました。そして自社の強みが分かったので、戦略を描くことができました。これはとても大切なことです。その強みを生かし「お客様が誰なのか」を考えます。

数年前まで、私は「20歳以上のお酒を飲む人」がお客様だと思っていました。本当に必要なのは客層の明確化です。当社のメインの商品は「宮の雪」と「キンミヤ」ですが、この両者は客層が全く違います。自社の強みを理解し、その強みを生かしてお客様を探す。これがデフレに対応するためのフローチャートだと思います。

 

基調講演に熱心に聞き入る参加者

会社経営の3つの鍵

会社を経営していく上で、3つのキーワードがあります。それは、顧客満足(CS)、社員満足(ES)、社会的責任(CSR)です。

数年前に社員満足度日本一と言われている中小企業を見学に行き、そこで聞いた方法を当社でも試してみました。それは「いちばん嬉しかったこと」と「いちばん辛かったこと」を社員に記述させるものでした。

結果は明らかでした。社員は、商品や会社を褒められたときにいちばん嬉しい。一方、辛かったことのトップはクレーム対応で、商品を貶されることがいちばん辛い。つまり、究極の社員満足は、顧客満足なのです。

「地域の誇り」と言われる会社に

私は健康のために毎朝、散歩をしていますが、その先で知り合った地元の方から、世界で唯一モンドセレクションで25年連続金賞を受賞したことを「楠の誇りだ」と言われ、涙が出ました。私達中小企業は、「地域の誇りだ」と言われる会社になることが、最大かつ唯一の社会貢献だと思います。

フランスにロマネコンティという高級ワインメーカーがあります。ブルゴーニュの聖地とも呼ばれるその村には葡萄畑があるのみですが、そこで採れた葡萄からしかロマネコンティは作れませんから、そこの村人や職人は皆「ロマネコンティに関わっている」ことを誇りにしていると思います。売上だけを比較すれば当社よりも小さな会社が、CS・ES・CSRをちゃんとやっている。そのことに感動しました。私はさらに、このロマネコンティのような会社を目指していきたいと思います。

 

【文責・事務局 井上】