「現代経済の本質を学ぶ基礎講座」−第7講座(12月6日)
広い視野から物事を判断

固定相場制から変動相場制へ
昨年の12月に「現代経済の本質を学ぶ基礎講座」第7講座が、名城大学の田中武憲教授を講師に迎え開催されました。今回は、固定相場制から変動相場制へという戦後の為替制度の転換が日本経済に与えてきた影響と戦後の国際貿易体制の変化がテーマでした。
戦後の相場制度は、金ドル本位制、つまり金の信用に裏づけられた、米ドルを基軸通貨とした固定相場制でした。この制度的背景のなか、戦後の日本経済は輸出主導型の復興で、高度経済成長を実現していきます。
60年代に入ると、宇宙開発、ベトナム戦争などを背景に、米ドルの濫発が問題となり、欧州においてドルに対する信用不安から金との交換要求が急増し、ドルは危機を迎えます。
こうしたなか、金とドルの交換停止を発表したニクソンショックから2年後の1973年に固定相場制は崩壊し、変動相場制がスタートすることになりました。
国際貿易に意識的な取り組み
日本経済では、80年代のアメリカの「双子の赤字」に端を発した急激な円高が以後進みます。いわゆる「円高不況」と呼ばれたもので、国内産業の空洞化が生じ、内需拡大型に向けた金融緩和政策によって一気にバブル経済に突入し、90年代のバブル崩壊、失われた10年へ歩を進めていきます。
当時の国際貿易体制に目を転じてみると、GATTによる自由貿易体制が進められます。「自由・無差別・多角主義」をキーワードとした取り組みが進む中で、関税の引き下げが広く行われ、結果として日本の輸出拡大を牽引してきました。
これに端を発し、国際貿易を巡る情勢は世界的に大きく動き始めます。WTOの成果と限界を背景に、いわゆる地域経済統合が始まります。特に最近話題に上るTPPを巡る問題についても言及されました。
TPPは一長一短
講義の締めくくりとして田中教授は「国際貿易の問題は単純に1側面から見ることはできない。つまり、今回のTPPについても、日本にとっては一長一短であるということです。ともすれば参加する、参加しないと単一で捉えがちだが、むしろ、日本は今後、国際化に向けてどう取り組むのかという意識を明確に持つことが重要」と話し、広い視野から物事を判断する重要性を示しました。