愛知同友会 創立50周年 記念シリーズ⑨
時代を創る企業家たち

愛知同友会は1962年7月9日に会員34名からスタートし来年には創立50周年を迎えます。そこで同友会運動に永年関わってこられた会員の皆さんにご登場いただき、その歴史に学びつつ次の時代に継承すべき課題について考えていきます。

同友会は人生そのもの

津田 豊造氏 (株)津鉄工業(刈谷地区)

 

(写真)津田豊造(つだとよぞう)氏

 

1945年生まれ。69年愛知同友会入会。72年(株)津鉄工業代表取締役就任。86〜89年三河北地区会長、94〜97年理事・三河支部長、98〜06年副代表理事を歴任。

同友会を三河地域へ

私は1969年、同友会に入会しました。入会したものの小切手も手形も知らない20代の私には先輩経営者の話がさっぱりわかりません。そこで青年同友会に入り、同世代の人達と遊んでいました。

1972年に父が病で倒れ、他に継ぐ者がおらずやむなく継ぐ羽目になりました。27歳の時でした。翌年のオイルショックでは3カ月で仕事が半減しました。

その頃は、先の情勢が私には見えませんでした。そこで経営の勉強の必要性を感じ、自分の経営の勉強の場として西三河地区をつくろうと考えました。

まず他の経営者団体と同友会との違いを調べました。次に年齢が一回りも上の経営者にお会いし、入会を薦めました。一方で同友会をPRするため、講演会を企画し、当時の本部役員に報告者として来ていただきました。多くの方々の力を借り、1年あまりかけて地区を発足したのです。

組織運営に注力

当時は名古屋以外に地区をつくろうという方針はなかったと思います。ですから独自の動きということになります。20数名で発足した西三河地区も、今では10地区を擁し、600名の会員数を持つ三河支部に発展しているとのことで、うれしく思います。

私の30年の役員としての役目は、組織運営一本でした。その中で一貫して追求してきたのは同友会理念の浸透です。理念の内容をいかに深めていくかに努力してきました。

同友会は、組織運営1つを取っても他の団体と違います。安易に多数決で決めるのではなく、あくまでも議論を重ねます。同友会活動は会員の自主性に依拠し、民主的に運営されるものであり強制はありません。みんなで決めた目標に向かってみんなで考え、努力し、その過程で人間として成長していくものだと思います。これは企業経営にも言えることです。

人間軽視の風潮と闘う

これまでの日本社会を冷静に見ると、実にすさんできています。リーマンショックで日本の名だたる大企業が派遣、契約社員を真っ先に首切りしました。莫大な内部留保を持つ大企業が我慢できないほどの人件費だとは、とても思えません。

今でもその風潮が残る新自由主義。強いものをより強くし、弱いものは切り捨てる方向性は、同友会が大切にしている「人間尊重」の考え方とは相いれません。同友会がめざす企業づくりは、こうした人間軽視の風潮といかに闘っていくかだと思います。

会社は、社長のために社員がいるのではなく、社員のために社長がいるわけです。そういう意味で、社長は「公」に務める立場だと思います。

(写真)社員の意見を取り入れたカラフルな外観の社屋

理念の中身は深い

同友会理念は実に深いものがあります。「3つの目的」にしても深く考えることが必要です。

第1に、良い会社イコール強じんな体質の企業づくりをめざす。強じんな経営体質とはどんな客観的基準で示すことができるか、考えさせられます。

第2に、良い経営者イコール総合的な能力を身につけよう。総合的な能力とは何か、私は人間的な力が軸になると思うのです。

第3に、良い経営環境をめざす。日本経済の自主的平和的繁栄をめざすとあります。自主的な日本経済とはどんな内容か。これも中身は深く、勉強が必要です。

同友会のリーダーには、その中身をどう考えて提起するかが問われており、しかも自社の実践で裏打ちされていなければなりません。その点で、同友会のリーダーは他の経営者団体にない厳しさが要求されます。

真の同友会理念を

これからの愛知同友会にとって、事務局の役割はますます重要になると思います。同友会は中小企業の運動体ですので、前面に出るのは中小企業家であるのは当然ですが、それを支え、実質的に進めていくのは事務局員だと思います。そのため、サラリーマン化するのではなく、中小企業運動を進めるプロ集団になっていただきたい。

同友会はわが国になくてはならない中小企業の団体です。理念にあるように、真に「国民や地域とともに歩む」立場に立っている他の経営者団体がどれだけあるのか。また、企業の利益のみを追求し、国民(社員)や地域のことを考えない経営者があまりにも多いように思います。

愛知同友会も、いよいよ来年7月に創立50年の節目を迎えます。これからも理論・実践の両面において、「真の理念」で培われた同友会であって欲しいと思います。

 

【文責:事務局 八田】