名古屋第4支部例会(8月29日)
環境変化に生き残れ

岡田 知弘氏  京都大学教授

 

重視されるべきは「人間の復興」だと語る岡田教授

 

京都大学教授の岡田知弘氏をお招きし145名の参加で例会が開催されました。

講演では、岡田氏が東日本大震災の被災地を調査するなかで得た教訓とともに、激甚自然災害や急激な円高、欧米の財政危機などの環境変化を見通した企業経営の大切さが語られました。

巨大な変化の渦中で

日本では1980年代から生産拠点の海外移転に伴う地域の衰退が問題視され始めます。こうしたなか、地域経済にとって政策的対応はもとより、中小企業個別での対応が重要といえます。

東日本大震災の被災地では復興計画が策定中ですが、その内容は地域によって大きな違いが見られます。かつて、阪神淡路大震災の時には「創造的復興」の名の下に地域や住民を顧みない計画が推進されました。結果、地域経済が再生することはなく、多くの課題が突きつけられたのです。

人間の復興が最優先

本来、経済とは人間が生活するための営みであり、地域とは人間の生活領域です。こういった地域の復興において本当に重視されるべきは「人間の復興」であり、人間の生存の機会を復興することが本質でなければなりません。これは非被災地にもあてはまります。

「地域が豊かになる」とは、住民ひとり一人の生活が維持され向上することです。まさに地域経済の持続的発展の鍵は中小企業にあるといえます。さらに、グローバル競争に左右されない個性あふれる地域経済社会の再構築には、地域内再投資力を高めることが重要です。

そのためにも、地域住民と行政との共同で中小企業振興基本条例等を活用し、系統的に地域づくりを行うこと。さらに、中小企業家自らが運動の担い手となることが肝要であるといいます。そして、地域の住民と経営を科学的に分析し、その将来方向を合理的に提起しうる新たな質の運動が要請されます。