愛知同友会 創立50周年記念シリーズ⑰
時代を創る企業家たち
「中小企業は地域づくりの主役」

山本 榮男氏  (株)サカエ会長(愛知同友会顧問)

愛知同友会は1962年7月9日に会員34名からスタートし来年には創立50周年を迎えます。そこで同友会運動に永年関わってこられた会員の皆さんにご登場いただき、その歴史に学びつつ次の時代に継承すべき課題について考えていきます。

山本榮男(やまもとひでお)氏

 

1943年生まれ、1990年入会、1992年緑地区会長、1996年第3支部長、2000年尾張支部長、2003年理事(ものづくりセンター長)、2004年副代表理事、2005年代表理事、2007年会長、2011年より顧問を歴任。

荒波を耕すがごとく

同友会への入会は東海ECの石井正己氏から紹介を受けました。入会して2年後に緑地区の会長を頼まれ3年務め、その後、新しい地区(豊明)の発足にも関わりました。その礎を作る力になれたと思います。

第3支部長や研究会担当理事などやりましたが、尾張支部長を務めた時は一番大変でした。地区の皆さんに支部を位置づけてもらうため各地区をまわったのですが、座布団が飛んできたり、「県行事に参加する意味がわからない」など激論を交わすこともありました。どれだけ、にらめっこをしたのかわかりません。

まるで荒波の寄せてくる場所を耕してきたように思えます。波乱ずくめでしたが、最後には多くの会員に思いが伝わっていきました。

増強は良いことずくめ

会員増強は良いことずくめです。新たな地区ができることは、その地域に同友会のポジションを置くことになります。新会員を迎えると刺激的で会に科学変化が起こります。また細胞分裂のように会が活性化し、多くの方が役員をすることにより会員も組織も成長できます。

過去の転機として、2001年に会費値上げを検討した時期がありました。その当時、支部長の1人として会費値上げをせず、会員増強して賄う事を決めたのです。しかし、すぐには結果が出せず他の支部長と一緒に頭を丸めましたが、その後もねばり強く皆と協力して全力を傾けたことにより、増強数の飛躍のバックアップができました。

増強は何なのかの議論が現在でも行われていると聞きます。新しい考えを入れること。新しい選択肢を増やすこと。新しい出番をつくること。この3つがその答えだと思います。

瀟洒な外観の事務所

同友会で良かった

印象深い活動のひとつに1995年に設立したエントロピー豊明があります。これは同友会の会員を中心とした産学連携の異業種交流グループのことで、共同受注や共同開発を行っています。ここで開発されたロボットを愛知万博に出展させたり、豊田高専と共同開発した耐震補強用具は震災の影響もあり、現在も好調に販売されています。

同友会で学んで実践してきたのは、事業継承についてです。これは時間のかかることでした。会社は社会の公器で私物化してはいけません。結果的に息子たちが別の道を選んだこともあり、赤の他人に会社を継承しました。

今の会社があるのは同友会のおかげだと思います。自分も人間として成長でき、会員の皆様に育ててもらいました。難しい役職もたくさんやらせて頂きましたが、この判断は間違っていなかったと思います。

他団体と事務局が違う

他団体と同友会が決定的に違うのは、事務局の担う役割にあると思います。まず事務局には歴史を継承する役目があります。愛知では来年50周年を迎えますが、50年の愛知同友会の経験を法則化し蓄積していくのです。

また同友会運動の進んでいく道を提案すること。全国から情報を集め、同友会専属のプロとして情勢分析をし、他団体とも結びつくのです。これは四六時中同友会活動をしている事務局でないとできません。

最後に労使問題や経営指針の作成など、経営の諸課題を解決する手助けをして頂きたいのです。企業変革支援プログラムの活用や、中小企業地域活性化条例の制定など事務局のサポートが必要です。

欲を言えば博士論文を書けるぐらいに能力が高まるといいですね。というのも、中小企業の進むべき方向のテーマはたくさんあり、大学の先生方や専門家の話を聞かせて頂くのですが、思うように消化できないのです。

なぜかと言うと先生方は学問の視点から分析されるので、私達がその内容を生かそうと思っても後を辿ることができないのです。

その点、事務局員は、会員企業の会社を多数訪問しているので、私達の経験を疑似体験でき、ツボを外れずに表現できると思うからです。

組織の血液になる

会員の皆様へは、同友会に限らず様々な組織を活用していって欲しいのです。地域で自分の力を使い、会合に参加する勇気を持つこと。バラバラな動きでは大きな力になりません。東日本大震災でいえば、現地にボランティアに行くとか、義援金を継続的に寄せるとか、何かやってみて下さい。

私の興味関心といたしましては環境問題にあり取り組んでいます。大きな目で周りを見渡せば、自然エネルギーへの転換や国内の森林の活用など大きな課題が山積みです。

自分の会社だけ良くなることはありません。とりわけ私達中小企業は、地域と深く結びついているのですから。中小企業は地域の人々が持続的に生活できる環境を創る主役なのです。その意味で地域で行動を起こせば自分に跳ね返ってきます。

同友会は自主的に考え行動するオピニオンリーダーの集まりとも言えます。私達が声をあげなければ誰にも伝わらず、何も変わりません。中小企業憲章にも謳われています。私達が中小企業の役割に目覚める時代が来ています。このことに意識を持って、前面に立つ勇気を持ち続けて頂きたいと思います。

 

【文責・事務局 八田】