第51回定時総会(4月18日)
「同友会らしい」黒字企業をめざそう

第51回定時総会 | 分科会 | 写真で見る51回定時総会

「人を生かす経営」の実践に取り組もう

定時総会の全体会で挨拶する杉浦会長

活動方針を深める

愛知同友会の第51回定時総会が4月18日開催され、340名が参加しました。当日は活動方針を深める5つの分科会、総会議事、全体会、交流会の4部構成で行われました。

第1部の分科会では「愛知県経済の今後」「同友会理念にもとづく経営実践」「経営指針が導く企業変革」「条例元年」「50年の歴史」の各課題について、これまでの到達点と新年度の重点を深め合いました。

第2部の総会議事では杉浦三代枝会長が「今年は創立50周年の大きな節目の年。同友会で学び自社と地域を良くしていきましょう」と挨拶。

来賓の小川悦雄愛知県副知事からは「愛知県では、昨年度から中小企業基本条例制定に向けた取り組みを進めています。愛知の産業経済の基盤を支える同友会の皆さんには、活力を高められ、ご活躍いただきたい」と期待が寄せられました。

その後、「経過報告」「決算報告」「会計監査報告」の承認と新年度役員の選出が行われ、会長に杉浦氏、代表理事に加藤明彦氏が再任され、39名の理事が選出されました。

各社が「中小輝業」に

加藤代表理事は「同友会理念の真髄を確かめあい、人を生かす経営に取り組み、同友会らしい企業づくりを各社で進め、一社一社が輝きを放つ『中小輝業』となり新しい時代を創っていきましょう」と今年度の方針を語りました。

第3部の全体会では各分科会で深められた方針を共有。座長の的確なまとめにより、自社の企業づくりにつなげる契機となりました。

第4部の交流会では、名誉会員の挨拶に始まり、広報・増強関係の表彰等が行われ、最後に高瀬喜照総会実行委員長より「困難な時代だが勇気を持って一歩を踏み出していきましょう」と謝辞が述べられ、盛大な拍手をもって閉会しました。7月9日、創立50周年記念式典へのはずみとなる総会になりました。

【第1分科会】 愛知県経済の今後の展望 〜急激な産業構造の変化への対応

山田 基成氏  名古屋大学大学院経済研究科准教授

青木 太久美氏  中部経済産業局産業部産業振興課長

 

急激な円高はモノづくり拠点としての愛知県経済を直撃。今後、生産拠点の海外移転の加速化が懸念されます。こうした変化に気づかないまま市場を失ってしまう「ゆでガエル状態」に陥らないために、「イノベーションによる新市場(事業)の創出」をどう図るかを学びました。

山田 基成氏(左)と青木 太久美氏(右)

企業変革の阻害要因

山田氏は、食器や置物の陶磁器が衰退する一方でファインセラミックス市場は拡大傾向であり、愛知県はこの分野のシェアが低いことに言及。そして、産業衰退と個別企業の衰退は異なるといい、企業は自ら新たな発展の途を切り開くことが可能であるが、経営者の成功体験が変革の妨げとなり大胆な変革行動を起こすことに迷ってしまう「組織のゆでガエル化」の課題を指摘しました。

続いて、自動車産業の海外生産の拡大と国内生産および輸出の減少、次世代エコカー開発競争激化などの課題を踏まえて「イノベーションによる新市場(事業)の創出」の必要性を述べ、具体事例を紹介しました。

今後の戦略として、既存コンセプトから逸脱した「画期的イノベーションの創出」、まとまった量の販売が可能な体制を確立する「事業アイデア」の必要性、イノベーションを成し遂げるためのチャレンジ精神に溢れた人材育成、不足する資源や能力を補完する外部組織との連携の4点を提起いただきました。

支援施策の活用を

青木氏は、中部地域の高度なものづくり基盤技術の集積をベースとした新事業創出施策「中部地域八ヶ岳構造創出戦略」を紹介。航空機、次世代自動車、グリーン・アンド・クリーン、新ヘルスケア、次世代住宅の5分野の産業振興で中部地域の「ものづくり力」を高め、既存市場に加えた新たな峰を作り出すことで「攻めの空洞化対策」を推し進めること。企業では新事業に取り組むために、自社の強みの認識、企業間連携、売れる市場の創造の視点で果敢に挑戦していくこと、そのために支援施策を活用していくことを提起いただきました。

チャレンジ精神を発揮して新市場を切り開く気概で経営に臨むことを確認しあう分科会となりました。

【第2分科会】 同友会理念にもとづく実践 〜「新・活動の手引き」から同友会理念の根幹を学ぶ

馬場 愼一郎氏  データライン(株) (西三河支部長、刈谷地区)

 

「同友会らしい」という言葉の意味を理解し、深めるためには、同友会の理念や歴史を学ぶことが大切です。新・活動の手引き作成プロジェクトでは、同友会理念について議論を深め、同友会理念が形成されてきた歴史的背景を知る事により「同友会らしい」という言葉の意味を共有することができました。その過程で得た気づきや学びを報告して頂きます。

馬場 愼一郎氏

歴史を知る

「理念や考え方を共有するには、その理念や考え方が形成される過程に参加することが一番望ましい」と馬場氏は言います。しかし、現在の同友会理念は、先人たちの幾多の経験を結集して作り上げられた「結果」として掲げられています。

その中で「完成している理念を理解し、私たちが共有するためには、同友会理念の根幹、つまり歴史的背景を知り、会の活動や会社経営を通じて意識的にそれを追体験していくことが大切」だと馬場氏は考えます。

「活動の手引き」作成プロジェクトの中で、同友会理念の言葉の意味を考えた時、一人ひとりの解釈は違っていました。しかし、その歴史的背景を知り、議論する中で、解釈は一致していきました。この体験から馬場氏は、自身の経営体験と重ね合わせます。

同友会理念は「つかみ取るもの」

馬場氏が社長に就任した頃のことです。主要商品の売り上げが年々落ちている中で、自身が引っ張り新規事業の立ち上げに成功。しかし、その裏で、社内に温度差が生じます。一緒に仕事をしてきた社員は理念や考え方に共感を示すが、そうでない社員は、理念に対してよくわからないという態度を示すようになりました。

「活動の手引き」作成プロジェクトで同友会理念を議論し、同じ体験をした人との理念の共有が進んだことから、理念や考え方の共有は体験を共有することで最も深まることを改めて認識したといいます。

「活動の手引き」に記されたものは先人たちの到達点であり「与えられたもの」です。しかし、逆に「つかみ取るもの」でもあると馬場氏は強調します。つまり、活動の手引きは回答集であり、問題集でもあるのだと報告を締めくくりました。

【第3分科会】 経営指針が導く企業変革 〜労使見解と科学性・社会性・人間性の追及から

大日 常男氏  山科精器(株)・滋賀同友会副代表理事

 

経営環境が激変する中で企業変革は必須の課題です。それには「労使見解」により社員が自発的に判断行動する「創造集団」として総力が発揮されることが重要です。

「日本の技術を人の命のために生かしたい」と高い理念を掲げ、脱下請けに挑む報告者から「同友会らしい経営指針」の真髄を学びました。

大日 常男氏

コア技術を命のために

既存事業で培ったコア技術を「人の命のために」生かしたいと医療分野に挑戦する山科精器。きっかけは、滋賀同友会の「経営指針を創る会」で半年間かけて「人間尊重の経営」を徹底的に学んで腹に落とし自身の信念へ昇華、理念経営をスタートさせたことから始まったと大日氏は語りました。

入社当時は就業中のタバコや飲食など社内マナーが守られておらず、組合との対立も激しかったそうです。しかし、「社員は悪くない」「会社は社長の鏡」と大日氏は言い、そういう風土にさせている社長が悪い、リストラや将来への不安など社員が安心して働ける職場になっていなかったことが問題だったと振り返ります。

相互に独立した人格を尊重

「労使は相互に独立した人格と権利をもった対等な関係」だと社長が本気で思わなければ、日頃の行動が矛盾します。その点を社員は決して見逃しません。

「脱下請け」も人間尊重経営を貫くために決意。そうしないと生産量が不安定で突然海外生産になったり、単価を下げろと脅されたり、納期厳守のため過酷な労働環境に追い込まれる。そこから脱却をしようとしました。

また、工作機械の輸出商談の最終段階にて1億円程の引き合いも武器に使われそうだとわかった瞬間に「平和目的以外に使われることは断固拒否するとの理念に反する」として断ったそうです。

「私たちは先進の技術で広く人類の発展に貢献します」という高い理念を掲げ、自発性と創造性が発揮される企業づくり、そして「社長の人間性の発信」こそが理念の実践だとまとめました。

【第4分科会】 条例元年を迎えて 〜愛知県中小企業活性化基本条例を企業家の力に

金田 学氏  愛知県産業労働部産業労働政策課主幹
柴田 成志氏  愛知県産業労働部産業労働政策課主任主査

 

愛知県の今後5年間の産業労働施策を定めた「あいち産業労働ビジョン2011−2015」には、一丁目一番地に「中小企業を支援する基本条例の制定」が明記されており、これに基づき、条例制定のための様々な取組が始まっています。制定作業が進む現在、条例の意義と目的を学び、企業家自らの力にしていくことを目的に、第4分科会は設営されました。

金田 学氏(左)と柴田 成志氏(右)

なぜ今、条例なのか

今回の条例制定の背景として、まず次の4点があげられます。

(1)1999年の中小企業基本法の改正により、中小企業施策における地方公共団体の役割がより主体的なものに変化したこと。

(2)一昨年閣議決定された中小企業憲章により、国においても中小企業を重視する姿勢が改めて示されたこと。

(3)県内事業所数の約99%、従業者数の約73%を占める中小企業は、県内の産業と雇用を支える存在であること。

(4)そうした重要な認識から、大村秀章知事のマニフェストにも条例の制定が位置付けられていたこと。

また、今後、国内における自動車生産の縮小が予測されるなど、県内の産業構造の変化が不可避であるとの認識があります。

条例を自らの力にする

愛知県では有識者を集めた「中小企業活性化懇話会」をこれまでに3回開催したほか、7回で延べ84名の参加を得た車座集会での意見交換、ウェブを活用したアンケート調査の実施など、幅広く中小企業家の声を集めながら、今年度中の条例制定を目指して作業を進めています。

この条例は、頑張る中小企業を応援する県の施策の拠り所として制定されるもので、いわばスタートラインといえます。県内の産業と雇用の維持や発展は、そうした施策を活かして、中小企業家自らが、いかに力を発揮していくかにかかっています。

そのため条例を自らの力にして、自社をより良い企業に発展させること。そして社員の幸せを追求し、ひいては地域社会の根幹を担える存在へと飛躍していくことが、私たち中小企業家に求められています。

【第5科会】 時代を創る企業家たち 〜愛知同友会50年の歴史から学ぶ〜

渡辺 俊三氏  名城大学経済学部教授(50周年史執筆者)

浅海 正義氏  (福)ゆたか福祉会(千種地区、創立会員)

幸村 隆夫氏  こむ研究所(南地区、創立会員)

 

愛知同友会は創立50周年を迎えます。1962年に情熱溢れる34名の中小企業家が集い、さまざまな経験と知識が蓄積されてきました。その鍵となる足跡を辿り、未来への展望を掴み取ることと、先人たちの熱い思いそのものに触れ、なぜ今この事が受け継がれているのかを探求する分科会でした。

右から渡辺教授、創立会員の浅海氏と幸村氏

歴史に検証される 同友会の足跡

まず50周年記念史を編纂して頂いた渡辺俊三氏より、歴史的背景と同友会運動の3つのポイントが説明されました。

ひとつ目は、同友会運動の重点。それは経営環境の改善運動を進めていること、自助努力によって企業体質の強化を図っていること、そして「学びあい、育ち合う」という組織の質も量も強化する点が重視されてきた点です。

2つ目には、組織論と運動論の展開です。組織の拡大と運動の展開が好循環し、企業体質強化のための運動が多かったと指摘します。

最後は同友会運動の先駆性と時代適応性について。経営環境の改善、経営体質の強化と組織強化の側面で、先駆的で時代に適応した組織に柔軟に変化してきたといいます。

到達点は出発点

次に創立会員である、浅海正義氏と幸村隆夫氏より、経営者としての足跡や、同友会と歩んだ過去の思い出が紹介されました。

浅海氏は、同友会は空気のような存在で、なくなると生きていけないこと。社歴より同友会歴の方が長く、自分の人生では学びの源泉であったと振り返りました。幸村氏は、同友会でのベトナム訪問団のエピソードや、広島の原爆の目撃者として未来社会への思いを語りました。

到達点は新たな出発点でもあります。中小企業家が自分たちで議論し考え、自らの力で会社や社会を変えていくのです。この分科会で、同友会のこれまでの歩みと、その活動が目指す壮大な人類史的運動が心に刻まれました。

■写真で見る51回定時総会

※PDFファイルでご覧いただけます。

写真で見る51回定時総会
写真で見る51回定時総会(PDFファイル:544KB)

 

 

PDFファイルをご覧いただくには、Adobe Reader(アドビリーダー)というソフトが必要です(無料)。
お持ちでない方は、下記よりダウンロードしてインストールしてください。

 

>> アドビリーダー ダウンロードページへ

 

PDFファイルの表示に時間がかかる場合は、PDFファイルへのリンクを右クリックして、「対象をファイルに保存」などを選び、いったんダウンロードしてから直接PDFファイルを開くことをおすすめします。