人を生かす経営全国交流会(11月15〜16日)

昨年11月15〜16日、「『希望創造』の時代、人が輝く企業づくりを〜経営者の覚悟と実践」をテーマに、第3回人を生かす経営全国交流会が愛知で開催されました。この交流会は愛知同友会50周年事業の一環として位置づけられるものです。その学びの様子を紹介します。

<記念講演>
生きること 働くこと 学ぶこと 〜教育とは何か

植田 健男氏  名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授

植田 健男氏

「学ぶこと」は「生きること」

今、「生きること」「働くこと」「学ぶこと」の3つがバラバラに切り離されてしまっています。教育とは、生物としての「ヒト」を「人間」へと成長させていく非常にダイナミックな営みですが、実際には点数競争の中で「鍛え抜く」ことが教育になっています。そのため「進路指導」の名の下に、将来の生き方など関係なく受験へと誘導され、人間としての育ちを妨げられているのが現状です。「子どものために」と言いますが、「子ども不在」という重大な問題が横たわっています。

学生が本気で学びたくなる価値ある生きた教育現実に出会わせたいと、北海道・宗谷に教育調査に入るようになり、21年目になります。宗谷では地域や父母と学校が連携し、教育における共同が行われていました。衝撃を受けた学生は、たちまち学ぶ姿勢が変わりました。知識の受け渡しだけの無味乾燥な学びでは、決して「人間」は育ちません。

人を人として尊重する

生まれたばかりの人間の赤ちゃんは、生物としての「ヒト」でしかありません。ただ栄養を与えるだけでは、時間が経っても自動的に「人間」には育っていかないのです。持って生まれた人間的諸能力を、現実のものに転化し、それを使いこなせるようになるためには本当の意味での「学び(学習)」が必要であり、それを実現させる「教育」の働きかけが不可欠だといえるのです。

「教育基本法」に、教育の目的は「人格の完成」にあると書かれています。それは、「人間的自立」を意味していると思います。人を人間として尊重し、何があっても人間らしい生き方を貫き、一人ひとりが自分の命、性、身体、生き方、仕事の主人公として生きていくことです。

今考えなければならないのは、「生きる・働く・学ぶ」をしっかりと結び付けていくことです。「働くこと」を原点に、それが人間らしく「生きること」につながる「学び」をつくり出していく必要があります。

経営者の皆さんは企業の現場で、「生きること」と「学ぶこと」を結び付ける実践をして頂ければと思います。私たち一人ひとりが「人間的な自立」を自らの課題として、育ち合っていくことが大切です。現場は違いますが、共に頑張りましょう

 

(文責・事務局 伊藤)