人を生かす経営全国交流会
第1分科会〜第14分科会

【第1分科会】

経営理念を物差しに、キクチの各店舗が地域を救った

〜震災・原発事故の中、地域の「食」を支えたフレスコキクチ社員の奮闘

菊地 逸夫氏  (株)キクチ(福島同友会)

菊地 逸夫氏

菊地氏が、経営者として経営理念「お客様に親しまれ、喜ばれ、役に立つ企業であること」を物差しに地域を救ったことを心から誇りに思っている様子に感動しました。赤石義博中同協相談役幹事の言葉「理念は浸透させるものではない、共有するものだ」が思い出されます。菊地氏にとって、社員・お客様・地域と関わる物差しが正真正銘の経営理念であり、社員においても同じもので、共有されていたということです。

グループ討論では、経営者の責任として自分で考え行動できる自主性のある社員の育成と、地域に役立つ企業づくりをしていくために、理念を掲げ、社員と共に築いていく必要性を確認しました。

地域の企業としての総合力が試される場面で社員全員で乗り越え、震災後の新たな課題に取り組んでいる報告から、人が輝く企業づくりに向け、私たち経営者の覚悟と実践を決意する分科会になったことは間違いありません。

 

協栄産業(株)  大島 良和

【第2分科会】

社員が自ら会社を変革する社風づくり

〜GCHの追求(労使見解の全面実践)が、社員をその気にさせる

能登 伸一氏  日鐵鋼業(株)(広島同友会)

能登 伸一氏

能登氏が入社した当時、社内は暗い雰囲気で、労働環境・条件の悪さなどの不平不満が沢山あることを知り衝撃を受けたといいます。同友会で「全て自分に原因がある」原因自分論を学び、同友会の仲間が、変わろうとする自分の背中を押してくれました。

共同求人を勧められ行うが、1年目は失敗。2年目にやっとの思いで1名を採用し、そこから徐々に変わり始めました。入社して25年、GCH(企業内総幸福)を追求し続け、ここ3年で大きく会社が変わったそうです。

「社風は、経営者の姿勢にある」と明言する能登氏。同友会で学び、自社に持ち帰る。社員の意見を真摯に受け止める。そういった能登氏の「素直さ」があって、求める幸せに近づいているのだと改めて学ぶことができた分科会であったと思います。

 

(株)インデックス  苅谷 邦彦

【第3分科会】

共に育ちあう社風で地域から愛される企業づくり

〜同友会がなぜ障害者問題に取り組むのか理解を深める

土井 善子氏  (有)思風都(京都同友会)

土井 善子氏

土井氏はアトピーの子どもとの出会いから、安全に食べられるレストランを開業し、地域に支えられ成長していきます。お客さまを中心に「新店舗を作る会」が発足したほどで、確固とした理念によって、共感する方に支えられ順風満帆に事業が進みます。

同友会に入会後、4年目で「経営指針書」を作成し、「障害者の力を生かせる場所づくり」を盛り込みました。漢字が読めない、耳が聞こえないなど様々ですが、その人に合わせた仕組みづくりを大切にし、今では産官学福連携事業で佛教大学内レストラン「あむりた」を経営しています。

グループ討論では、各地同友会の皆さんの高い志を感じました。障害者雇用という切り口でしたが、健常者も障害者も区別なく、「人間らしく生きる」ことにつきます。自社や自分自身に関わりの少ないテーマでしたが、だからこそ学びは大きく、人に対する優しさに気づかされました。

 

(有)山都屋  水谷 隆文

【第4分科会】

総合物流業として夢の実現へ

〜社員が働きやすい効果的な仕組みづくり

上田 裕子氏  (株)AZUMA(熊本同友会)

上田 裕子氏

税理士になるのが夢だった上田氏は、廃業するか否かで悩んでいた父親の会社を22歳で受け継ぎました。そんな矢先、社員が死亡事故を起し、被害者への賠償金が保険金で間に合わず高額な借金を抱え、がむしゃらに働くことになります。そして、1通のダイレクトメールがきっかけで同友会に入会し、経営指針を学ぶことで謙虚さと前向きな心を育み「よい経営環境をつくること」と、「人から認められたい」と強く思うようになります。

「人の心を伝える」という社員や取引先、顧客などすべての人に寄り添う上田氏の経営は、耐え難い試練を乗り越えたからこそできるのです。命を守る大切さと夢を実現させること、そして皆が幸せになるために教訓を仕組みに変え、労働環境を整備していく実践報告では、「人を生かす経営とは魅力ある会社、働きがいのある会社を目指すことだ」と締めくくりました。

 

(有)ソフィア企画  石塚 智子

【第5分科会】

対等な労使関係づくりこそが企業発展のカギ

鋤柄 修氏  (株)エステム(中同協会長・南地区)

鋤柄 修氏

中小企業における対等な労使関係づくりを通して、会社を発展させる経営者の責任の自覚や、社員をよきパートナーとしてお互いに認め合い、人間尊重の経営を実現することで社員がイキイキと働ける環境づくりの大切さについての具体的な報告でした。労働組合が結成されることをきっかけに対等な労使関係づくりが始まり、今では自立した社員が多く育つ社風になり、会社発展の大きな原動力になっているといいます。

鋤柄氏は会社発展のカギとして、社員が自立し、それぞれの役割を自覚し、やりがいを持って働くことが極めて重要であると強調します。そのためには、経営指針の共有、定期的な採用、継続的な共育、そしてコミュニケーションと公平な評価が欠かせません。これらに真剣に取り組んでいくことが、対等な労使関係の構築と会社の発展につながると感じました。

 

(株)リンクコンサルティンググループ  和田 康伯

【第6分科会】

同友会がめざす企業を創る

〜経営指針・採用・教育(共育)の三位一体の企業づくりから学ぶ

栗田 美和子氏  (株)クリタエイムデリカ(東京同友会)

栗田 美和子氏

会社の業績不振でダウンした社長の代わりに、社員と会社を何とかせねばと同友会の経営指針セミナーに参加した栗田氏。多くの学びを素直にパワフルに実践し続けてきた報告でした。

経営指針、採用、共育の三位一体経営を総合的に実践することの大切さを、改めて自社に置きかえながら考えさせられました。

「当社には夢がない、会社の未来像がわからない」という社員のひとこと。それをきっかけに、経営指針にある"誇りの持てる企業"とは何かを追究します。そして「経営の目的は人の幸せである」と定義し、顧客満足度を考える前に社員満足度を重視。会社の存在意義を明確にして全社で共有することで、チームとしての誇りが生まれてきたといいます。

また、10年後の自社の組織図を描いてみるなど、斬新な発想に多くの触発を受けました。自社でも素直に実践していこうと思います。

 

(株)蒲郡製作所  伊藤 智啓

【第7分科会】

未来創造は社員と共に

〜受け継ぐ者の覚悟と責務

池戸 武志氏  (株)ケイ・クリエイト(尾張北青同)

池戸 武志氏

池戸氏の入社時にはワンマン社長だったという現会長との、血縁関係が無い中での事業承継の実践から「社長の責務と覚悟」を学ぶ分科会でした。2003年に経営理念・指針を作り始めた頃から会社の雰囲気が変っていき、創刊後の大赤字で廃刊の危機に迫られた情報誌「クレヨン」も、今ではしっかり地域に根付いた媒体となっています。企業理念と社風の確立で、社員全員が同じ目線、同じ歩幅で目標に向かっています。

企業理念を確立し、指針に基づいて現在をしっかりと見つめ将来を見極めた経営をしている池戸氏は、「経営者の姿勢が全ての原点」と締めくくりました。社員がやりがいを持つこと、そして社員の働きやすい環境づくりが仕事の質を高め、お客様の信頼を高めることにつながり、新卒採用(雇用)が地域貢献につながっていくサイクルになる、と改めて学びました。

 

(株)間宮金型製作所  間宮 義彦

【第8分科会】

廃業・倒産を回避して 永続企業を目指す

〜自社の成長は、社員との共育だった

長縄 正生氏  (有)豊栄(熱田地区)

長縄 正生氏

長縄氏は、異業種から廃業寸前の赤字会社を先代から引き継ぎました。土木業については何も分かりませんでしたが、社員とぶつかりながらトコトン話をする中で、「社員が会社を好きになること」が大切だと気付いたといいます。

そして、仕事のやり方や手順を決める時には「何のためにそれをやるのか」という目的を伝えるなど、"しぶとい"手を抜かない気持ちが社員に伝わり、現場で考え行動のできる社員が成長し、会社も発展してきたそうです。

「人・物・金のうち物と金がなくなっても、最後は人、すなわち社員が残る。その社員からいかに尊敬される社長となるか。そのためには、まず社員を信頼することが重要」と長縄氏は話します。今回の報告を聞き、私たち経営者は1人だけの力に頼らず、いかに社員と思いや方向性を共有できるかが、会社を成長させるカギになると再認識できました。

 

(株)ミキ  林 俊宏

【第9分科会】

共育の本質とは

〜共に育つとは俺が育つこと

豊田 弘氏  知立機工(株)(刈谷地区)

豊田 弘氏

豊田氏は、大病を患った苦しい経験と、不遇なサラリーマン時代を通じて、絶対に社員を路頭に迷わせないこと、人がどうこう言う前にまず経営者自らが姿勢を正すこと、また、人間尊重の側面から物事を考えることを大切にしたいという想いに到りました。

「共に育つ」とは、人間そのものの本質に焦点を当てることです。人を変えることは非常に難しいが、人間は気づくことによって自らの意志で変わっていくということを、経営者は考えなくてはなりません。人の根にある人間性を養い、社員自身の足で歩んでいけるようにすること。そのためにも、まずは経営者自らが人間的に成長することが必要だと確認することができました。

私たちが豊田氏の人間性に触れて感動したように、私たちも社員と共に感動を分かち合える経営者に成長すること、そのために「企業経営と人間経営」のバランスを見ながら、よい会社づくりを行っていきたいと思います。

 

(株)ナカシマ  中島 圭

【第10分科会】

社員の幸せのための経営

〜人としての自立により誇りと輝きを

竹内 武司氏  竹内襖材(株)(刈谷地区)

竹内 武司氏

「長年愚直に一生懸命取り組んできた。社員の幸せについて一緒に考える時間にしてほしい」という竹内氏の言葉から報告は始まりました。

竹内襖材の事業は、襖の下地屋から、完成品製作、新商品開発へと変化に対応しながら発展してきました。こうした戦略を描いた経営指針書は、年配の職人さんたちにも配慮して、徐々に時間をかけて繰り返し伝えてきたそうです。

竹内襖材の経営理念は「志善至幸(善きものを志し、幸せに至る)」です。「理念に共感した人を採用し、できる人に育てる。できない人には、できるようになるまで待つ」といった方針で、社員は自立的な考えができ、提案が出てくるとのことです。

「職場は人間性を高める道場」「仕事は人間性を磨き高めるためにある」「ダイヤはダイヤでしか磨けない。人はヒトでしか磨けない」と、竹内氏は結びました。

 

アプリオリ(有)  冨田 高子

【第11分科会】

働きやすい企業づくりが社員の自主性と心豊かな成長につながる

石田 篤則氏  三敬(株)(豊川・蒲郡地区)

石田 篤則氏

第11分科会は、「労働環境の整備」を切り口にして、社員にとって働きやすい環境とは何か、どうしたら社員の自主性を引き出しやりがいのある仕事にすることができるのか、社員と共に会社の成長につなげることができるのかをテーマとした分科会でした。

石田氏は実践報告の中で、ノウハウや形だけの仕組みでは会社は良くならない、企業とは人こそが大切だと提言しました。まず経営者が本気になって、働く社員のことを考える必要がある。そこで築かれた信頼関係によって、経営理念の浸透・共有が進み、経営指針が生かされてくるといいます。

石田氏は同友会の学びによって人こそが会社の成長に不可欠であると気付き、目標を社員と共有し「はぐまむ」ブランドを展開しました。社員が働きやすい社風をつくり、全社員と目標を共有できる環境をつくること。それが経営者の大切な仕事だと学び、自社の社員との関係を見直す必要性を感じました。

 

北村牧場  北村 克己

【第12分科会】

経営指針の成文化と社内での共有(浸透)

〜「本当に大切なことは何か!」を改めて問い直す

内田 信也氏  (株)大進興業(尾北地区)

内田 信也氏

内田氏は、大手企業を退職し、専務として数字だけの計画を立てて一方的に社員に押しつけ、リストラを断行しようとするなど社員と険悪な関係になりました。悩みを抱える中、同友会での学びがきっかけで、経営というものは社屋やモノでなく、人は金儲けの手段でもなく「人を大切にすることそのものが経営」であることに気づきました。

そして、社員を幸せにする経営を追求し、数字を上から押し付ける関係ではなく、パートナーとして経営指針を共有することを学び始めました。今では「社長の誕生日を祝いたい」と社員に言われる関係になりました。

経営者は、数字のことが中心になり、社員の働く喜びや幸せのことを忘れがちです。しかし、共に生きていく上で社員とパートナーとなり、また経営指針は社員たちと話し合い共有することが大切であると学びました。

 

(有)アーティストリー  水戸 勤夢

【第13分科会】

決して諦めない、それが経営者の使命と責任

〜生命の尊厳性からの人を生かす経営

田村 滿氏  (株)高田自動車学校(岩手同友会)

田村 滿氏

高田自動車学校代表取締役の田村滿氏(岩手同友会代表理事)を報告者に迎え、「決して諦めない、それが経営者の使命と責任」について報告をいただきました。参加者の心の奥深くに届く報告で、真剣に聴き入る聴衆の姿に感動さえ覚えました。

被災地企業の報告を聴くというだけでなく、「経営の存続が危うい時、経営者の『覚悟』は」「自社だったらどうするのか」「その時への『準備』は」などを考えるグループ討論となりました。

実行委員は被災地に行き、その悲惨な状態に心を痛めながらも、それ以上の勇気をもらい、メッセージを預かってきました。それは、座長報告の最後にあった、「来て、見て、感じて、準備をして」です。そのメッセージを伝えることができ、参加者が「準備」を持ち帰っていただける分科会となったことを、うれしく思います。

 

ケーアイ労務管理事務所  中野 ひとみ

【第14分科会】

社員と共にビジョンに向かって

〜社員の自主性を生み出すカギは理念の共有

藤掛 誠一郎氏  (株)トレネッツ(名東地区)

藤掛 誠一郎氏

第14分科会は参加者76名、12グループで行われ、藤掛氏の熱のこもった発表に、参加者も熱心に耳を傾けていました。「社員と共にビジョンに向って」とのテーマで、藤掛氏が社員と二人三脚で新規事業を手掛け、紆余曲折を経て、今では社長が口を出さずとも社員が自立し、社員も事業も着々と成長しているとの報告でした。

グループ討論では、主に社員との関わり方について活発に意見交換が行われました。発表では、「社員と十分なコミュニケーションをとり、その上で、ある程度社員に任せることが社員の成長につながるのではないか」という意見が多数出ました。

藤掛氏の報告の中で、新規事業を手掛ける際の基本方針として、「売れるもの」ではなく、何よりも「コンセプトに合致しているか」ということを常に確認しながら進めてきたことが成功につながった、と言われたことが印象に残りました。

 

日本メカケミカル(株)  野中 知加子