現代経済の本質を学ぶ基礎講座―第6講(12月17日)
最新の欧州の経済事情

山本 いづみ氏
名城大学経営学部国際経営学科・准教授

加盟国拡大路線の限界

名城大学との連携企画「現代経済の本質を学ぶ基礎講座」を今年度も毎月第1・第3月曜日に開催中です。

昨年12月17日に行なわれた第6講座では、名城大学の山本いづみ准教授の講義で、EUにおける近年から現在にわたっての経済事情と戦略を学びました。

2000年代半ばまで加盟国を拡大し、経済力を高めてきたEUは、新規加盟国が中小国を残すのみになり、加盟国拡大による経済活性化の限界を迎えました。

これを受けて2006年には新興国などを対象にFTA締結を重視していく通商戦略「グローバル・ヨーロッパ」を発表します。これに基づきEUは韓国間とFTAの締結を決め、ASEAN加盟国やインドなどとも自由貿易の交渉を進めています。

EPA交渉の開始決定

2009年にはリスボン条約が発効し、これによってEU加盟国の知的財産権や海外投資に関する権限がEUの専権事項となり、併せてEU市民の代表者で構成される欧州議会の通商分野に関する権限が拡大され、通商戦略の統一化が図られました。

対日本戦略については、2012年11月に日本・EU間EPA(経済連携協定)交渉の開始が決定しました。EPAが締結されれば、日本からEUへの輸出関税(自動車10%、家電品14%など)の撤廃や削減が期待されます。

しかし、EUは日本の食品安全基準や知的財産権などの「非関税障壁」撤廃・緩和を求めつつ、日本の出方を見ながら関税削減を検討していく構えだといいます。

日本にとってEUは、中国・アメリカに次ぐ貿易相手国であり、EUとの交渉の動向にも目を離せない情勢と言えます。