第13期役員研修大学―第8講座(12月17日)
指針の重要性と自社実践

馬場 愼一郎氏  データライン(株)

馬場 愼一郎氏

将来像を内外に示す

馬場氏が経営指針に取り組むきっかけになったのは、まず自分を安心・納得させるため、そして社員や取引先の不安を払拭するために、会社の将来像を説得力のある数字で示したかったからだといいます。

社長に就任した当時は、とにかく目の前の経営が不安だったという馬場氏。後に、自社と取引のある金融機関や企業、そして社員さえも、口には出さずとも「この会社は大丈夫かな」と不安を感じていることに気がつきました。

しかし、自己流で経営指針を作ってみると、その指針に前向きな社員とそうでない社員に社内が分かれてしまいました。経営者としては前者のほうが可愛く思え、社員の待遇に差が出ます。さらに、前者の社員が次々に仕事をとってきたことで作業現場に一層の負荷を与え、思わぬミスが出始めました。

実践と検証を重ねて

全社で一丸となるために取り組んだ経営指針も、ほとんどの社員が横を向いてしまう状態になり、経営者にとってこれほど悲しいことはないと思ったそうです。なにより、社員が疲労とストレスを抱えながら何とか頑張っている状態では、組織としてやっている意味がありません。

最終的に目指すのは理念・方針・計画が一貫している状態ですが、取り組み始めるのはどの部分からでもいいと馬場氏はいいます。ただ、経営の本質である「社員が高い意識のもとに自発性が発揮される状態を企業内に確立」する努力を行うことと、経営者が作成した経営指針を実現してくれるのは“社員”であるという事実を念頭に置くことを忘れてはなりません。

経営指針の作成は、会社を存続するための最低条件であって、十分条件ではありません。指針の実践結果が具体的にどうであったかを常に検証し、会社の方向性を具体化し続けていくことが大切です。