西尾張支部例会(1月28日)
金融情勢の現状 〜金融円滑化法の終了後の課題

家森 信善氏  名古屋大学大学院教授

「10年後を見据えた経営革新が必要」と指摘する家森教授

中小企業に迫る危機

金融円滑化法(以下、円滑化法)は、金融機関に対して債務の弁済に支障を生じている中小企業または住宅ローンの借り手から申込があった場合には、できる限り貸付条件の変更(リスケ)等の措置をとるよう努める義務を課す法律で、2009年12月に制定されました。

円滑化法が今年3月に終了を迎えるにあたり、金融情勢の現状と中小企業に迫る危機を学ぶため、金融情勢に詳しい名古屋大学の家森信善教授に報告いただきました。

家森教授は、まず、バブル崩壊後に中小企業の収益率は悪化を辿り、更に2008年のグローバル金融危機によって危機的状況に陥った点を、様々な統計データを用い説明。その上で、そうした危機の深刻さにもかかわらず、ゼロ金利政策や信用保証制度、円滑化法等の政策によって企業の倒産数が抑制されてきたが、中小企業の構造問題を危機対策によって先送りしただけだと指摘しました。

お互いの役割を果たす

昨年11月には、金融担当大臣から「中小企業金融円滑化法の期限到来後の検査・監督の方針」が発表され、「すべての借り手に対して2013年3月末までに何らかの最終的な解決を求めるものではない」と、円滑化法終了後も変わらず支援していくことが示されました。

しかし、延命措置を続けるだけでは過去の政策の繰り返しです。金融機関には、資金供給だけではなく中小企業の本業支援ができるコンサルティング機能を高めること、中小企業には、高齢化社会による就労人口の減少等を考え、10年後を見据えた経営革新が必要であるといいます。

結びとして、中小企業と地域金融機関は中長期的には運命共同体であるため、両者が自助努力を基本とした上で、お互いに協力体制を築いていく必要性を訴えました。