金融アセスだより(第77回)

金融情勢を語る家森信善氏(名古屋大学教授)

円滑化法の出口戦略

中小企業金融円滑化法(以下、円滑化法)は、リーマンショック後の不況下で生まれました。もともと1年4カ月間という短い時限立法でしたが、東日本大震災等の異変のため2度延長された後、この3月末で終了しました。

昨年3月末の数字では、金融機関に対する債務者の条件変更の件数が313万件余、実行件数が289万件余であり、実行率は90%を超えます。しかも、約8割が複数回の条件変更です。期限終了を迎えたことにより今後、多数の中小企業の倒産が予想されます。

昨年11月の金融担当大臣談話は、その危機感の表れです。それは、期限終了後も貸し渋り・貸し剥がしが発生しないよう金融機関を指導すること。不良債権の定義は変更せず、金融機関がコンサルティング機能を積極的に発揮することを求めています。

求められる具体策

しかし、円滑化法の出口戦略は確立されているでしょうか。当局は、(1)金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮、(2)企業再生支援機構及び中小企業再生支援協議会の機能及び連携の強化、(3)その他経営改善・事業再生支援の環境整備の3対策を発表していますが、未だ具体化されているとは言えません。

金融機関のコンサルティングは、どれだけ実行されているのか疑問です。中小企業再生支援協議会は標準処理期間を2カ月とし、2012年度に3000件程度処理すると言っていますが、小企業向けの事業再生ファンドと同じように実現できるのか心配です。

金融庁や中小企業庁など行政に任せるだけでなく、各界の協力も必要です。例えば、消費者再生に多く利用されてきた特定調停法を利用し、裁判所を利用する方法があります。ただし、これも債権放棄の無税償却など国税庁の協力が必要で、それこそ挙国体制が必要とされます。

 

岩崎法律事務所  岩崎 光記