金融アセスだより(第80回)

地域再投資法の歴史

金融委員会では今年、CRA(地域再投資法)の名古屋市、愛知県での導入を目指し、公的機関、地域金融機関との意見交換を積極的に行うことを行動目標に掲げています。

もともと金融アセスメント運動もこのCRAをモデルにしており、地域で集めたお金を地域に還元しているか否かを第三者機関により監査する状況まで持っていくことを目的としています。

中京大学の由里宗之教授によれば、CRA規制の起源は1960年代に米国で高揚した公民権運動に端を発し、大都市周辺の住宅・商店・工場の住民が銀行融資において「公平機会」を求めたのが始まりとのことです。

97年のCRAの条文規定では、CRA遵守と銀行経営の安全性・健全性保持が矛盾しないことを決めました。80年代後半の銀行の大量破綻と公的資金注入に伴う銀行批判においては、CRA格付けの公表等、規制強化されました。

地域社会との協働

そして、90年代初頭の「クレジット・クランチ(貸し渋り)」問題を受け、95年に大手・中規模銀行に対し、CRA規制が再強化されます。すなわち、大手銀行によるM&A(合併・吸収)等による巨大化と都市部でのコミュニティ銀行の退潮・変質に対し、融資面でのCRA基準の対応策に取り組まざるを得なくなったといいます。

米国ではもっぱら市場主義が取りざたされますが、古く根強い伝統である「コミュニティにおける協働の習慣」も息づいています。由里教授からは、「同友会では、地域金融と地域社会に対する考察を更に掘り下げる必要があるだろう」との指摘をいただきました。

 

(株)山繊  山本 亮