共育委員会 共育学習会(9月10日)
教育とは何か 〜「ヒト」から「人間」へ

植田 健男氏  名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授

「生きる、学ぶ、働く」をつなぐ経営指針の大切さを語る植田氏

名古屋大学大学院の植田健男教授を招いての学習会が開催され、70名が参加しました。植田教授は、次のような問題提起をしました。

宗谷の教育に学ぶ

日本の最北端に位置する北海道・宗谷では、約45年前、基幹産業である漁業の衰退により地域の人々の暮らしが危機的な状況にさらされた時、子どもたちが荒れました。荒れる子どもたちを力で押さえ込もうとすれば、さらに強い力での反発が出てきます。そこで、学校で起きている事実を隠さず地域に助けを求め、共に生活を語り、行動に立ちあがる運動を始めたことに宗谷の教育の原点があります。

企業における経営指針は、学校では教育課程にあたります。宗谷の教育は、何を教えるのかだけではなく、1つひとつの学校の実態に応じて、子どもたちをどのようにして育てていくのかという人間的な育ちにトータルな視野で教育課程をつくり、地域ぐるみで子どもたちを育てることの大切さを提起しています。

本来、教育とは生物としての「ヒト」に生まれてきた私たちを「人間」へと成長させていく、非常にダイナミックな営みなのです。

現実を見つめ直して

どんな場であっても、「生きること、学ぶこと、働くこと」はつながっているはずです。しかし現実には、これらがバラバラにされ、生きることと切り離されている辛さがあります。働くことが、人間として生きることの豊かさに結びついていないのです。

企業でこの3つをつなぐのは経営指針です。つまり、企業で「働くこと」を原点として、それが人間らしく「生きること」につながっていくような「学び」をつくり出していくことが大切だと思います。

私たちが今、考えなければならないことは、現実を直視し、何が課題なのかを見極め原因を探ることです。自分たちの課題から、自分の地域、それぞれの持ち場において共に考えていきたいと期待しています。