第14回あいち経営フォーラム
【第8分科会】
採用を変えれば会社は変わる
〜計画的採用で、今も未来も生き抜く会社づくり
松浦 英士朗氏 双光エシックス(株) (名古屋第1青同)

第8分科会では計画的な採用の意義を学びました。この「計画的な企業づくり」が中小企業の課題であり、新卒採用が良いといわれても踏み出せないでいる点です。
松浦氏は社内風土が変わることを期待し新卒採用に取り組みますが、会社の将来ビジョンや教育体制が充分でないことから、新卒採用の社員が退社してしまいます。この失敗から、明確なビジョン、風土改革、教育体制構築の必要性を痛感し、社員を巻き込み1つ1つ見直しを図ります。このことを通じて社員が自主的に仕事に取り組み、お互いを思いやる風土もできていきました。
「採用が重要ではなく、実は採用活動そのものが重要なのだ」と、採用活動を通じて企業風土をつくっていくことの大切さを松浦氏は話します。まさに目から鱗で、新卒採用にトライすることで、自社の新たな進化に出合えることを学んだ分科会でした。
ナグラ産業(株) 名倉 昌孝
【第9分科会】
働く人と、働き方の多様性を認める会社づくり
〜労働人口減少を見据えた環境整備
橋本 久美子氏 (株)吉村 (東京同友会)

第9分科会では、労働人口の減少と市場ニーズの激変に危機感を持ち、さまざまな取り組みに挑戦している橋本氏の実践報告を通して、多様な人材を生かした強靭な企業体質づくりについて考えました。同様の課題を持つ会員が多かったこともあり、グループ討論も活発でした。
橋本氏は独自のアイデアから1995年に消費者座談会をスタートし、消費者のニーズを掴んだ事業展開をする中で、多様性は目的ではなく道具とし、自社の多様性を担保する制度や試みを紹介。長所短所を補い合うチームづくりや、短くまとめる会議、目標をビンゴにする等のお話が頭に残りました。
ワークライフバランスは目的ではなく道具であり、多様性は企業の競争力であり勝ち組になる戦略、との力強い言葉に共感を持ちました。
(株)ケアコンシェルジュ 江上 幸江
【第10分科会】
人を生かす経営の実践
〜経営者に求められる意識改革とは
笹原 繁司氏 綜合パトロール(株) (千葉同友会)

創業当初は、社員をいかに上手く使うかが経営だと思っていた笹原氏。同友会での学びによってその意識を改め、業務改善を目的に「講習会」を立ち上げました。
講習会では、ベテラン・新人に拘わらず社員同士が問題提起をしてグループ討論を重ねるようになりました。社員一人ひとりの良さが磨かれ、連帯感を生み、信頼関係が深まることで、社業も発展し、トラブルも減っていきました。また、社員とは表面的な付き合いだった笹原氏も次第に変わっていきました。結果、経営理念「あてにされる歓び」が、講習会を通じて経営者と社員の意識改革につながり、信頼を築いたのです。
笹原氏の報告とグループ討論を通して、私自身の未熟さに気づかされました。
(有)三州鬼瓦センター 片山 龍樹
【第11分科会】
社員の成長で喜びを共有し、めざす企業像へ
〜人を育て、文化伝承の使命感を胸に
福谷 正男氏 (株)豆福 (西地区)

豆菓子の製造卸・直売を行っている福谷氏は、近年ロボット(機械)で製造することが一般的な中、手作りで菓子を作ることに価値を見出し、健康・安全を提供することの社会的使命によって、社員と共に成長してきました。
自立型社員の育成こそが企業の発展であり、社員がやりがいを持って生き生きと働くことは商品開発にもつながりました。今後の経営において福谷氏は「日本トップクラスの菓子作り」をめざし活動していくと力強く語りました。
その後の討論では、どのように自立型社員の育成に取り組むかをテーマに話し合い、「経営者の辛抱」「社員自身が考えて行動する仕組み」の必要性など、活発に意見が交わされました。また、豆福の豆菓子が会場に運ばれ、参加者が笑顔に包まれました。
谷口鋳工(株) 谷口 晋介
【第12分科会】
同友会が目指すべき企業像と経営者の責任
〜社員が安心して働ける労働条件を目指して
吉田 幸隆氏 エバー(株) (知多地区)
八橋 昭郎氏 八橋社会保険労務士事務所 (江南・岩倉地区)

この分科会では、理念を掲げ社員と向き合い経営に取り組む吉田氏の報告から自社を見つめ直し、労務管理コンサルタントの八橋氏の報告から社会の労働構造の実態や経営者が大切にすべきことなどを学び、多角的に「経営者の責任」を考えました。
吉田氏は社員との信頼関係を築くために、一緒にSWOT分析を実施し、配置転換・資格取得制度の整備・面談を行うなど、働きやすい職場づくりに取り組みます。しかし右腕の社員の「退職したい」との言葉から、指針の中で社員一人ひとりに目を向ける大切さに気づいたと語りました。
八橋氏は、社員が安心して働ける労働環境をつくるためには、社員が幸せになれる条件を確保する努力が求められると社労士の立場から報告。そのために経営者は法律について知識を深め、定期的に就業規則を見直すなど、社員に仕事の重要さを伝えることが必要だとまとめました。
大矢伝動精機(株) 大矢 顕
【第13分科会】
縮小市場の中で自社の価値を問う
〜顧客満足に繋げる変革
馬場 愼一郎氏 データライン(株) (刈谷地区)

先代社長の父が創業し、特化して行っていた帳票印刷事業の売上が落ちていくことに危機を感じた馬場氏は、新たな事業を始めました。思うように売上が伸びない中で、自社の強みを生かせる別の市場は何かと考え、現在はダイレクトメールのデータ管理から企画、印刷、発送、その後の検証までを行っています。
失敗を通して馬場氏は、まずはやってみること、全く違う3つのルートから同じ点で好評なことがあれば「何かできないか」と考えること、社員と一緒に事業を進めること、自社に必要な付加価値額を把握することの重要性に言及しました。
グループ討論では、付加価値の創造へ何をどう変革するかを討議し、明日の実践へ繋がる分科会となりました。
せいりん総合法律事務所 竹内 千賀子
【第14分科会】
地域資源の「連携」と「循環」で新たな仕事づくりを
〜条例を生かす
清水 隆治氏 清水食品(株) (海部・津島地区)
笠原 尚志氏 (株)中西 (豊明地区)
尾ノ上 智美氏 (株)CHERRY STONE (昭和地区)
金田 学氏 愛知県産業労働部産業労働政策課主幹


第14分科会では、地域資源のレンコンを使い地域に新たなブランドをつくる取り組み、リサイクル事業の中での障がい者雇用を通じた新たな仕事づくりの様子、地域の日本酒を広く発信することで付加価値を向上させようとする経営実践が、3社から報告されました。
3名の報告を受けて、金田主幹は、「地域資源をいかに生かして新たな仕事をつくっていくかが大切」と強調。また中小企業振興基本条例は中小企業が元気になってほしいとの想いを込めたものであり、「地域の困り事をその地域特有のもので解決し、新たな仕事を生み出してもらいたい」と中小企業への期待が語られるなど、新しい仕事づくりのヒントとなる分科会でした。
松浦設計事務所 松浦 孝憲
【第15分科会】
仕事の本質が新市場を切り開く
〜6年で売上3倍、グループ3社に発展
近藤 正人氏 (株)アートフレンド (名古屋第5青同)

自社の付加価値を高める時は、事業ドメインを絞って明確にする必要があります。しかし近藤氏は、新市場創造をするためには逆に事業ドメインを拡大解釈し、自社の強みを有効活用できるような事業展開が重要だといいます。
中小企業は資金力に乏しいからこそ、経営指針を計画まで作り上げ、管理会計・キャッシュフロー・財務分析などで強靭な経営体質を構築し、新市場を当てに行きます。自社の強みを生かせる「隣接異業種」に新市場を求め、成功するまで挑戦し続けること。それには、企業の体力が勝負のカギとなります。
まず1つ大きな利益の出るものを創り出し、部門独立採算で広げていく。これが、近藤氏が次々と「新市場創造」を成し遂げてきたポイントなのだと思いました。
専門館LLP 岩田 公貴