金融アセスだより(第88回)

検査マニュアル改訂

今年の4月から、金融庁による金融機関の検査が大きく変わります。

同友会が金融アセスメント法制定運動を始めたきっかけは、当時、社会問題になった「貸し渋り・貸し剥がし」でした。1997年、アジア通貨危機などにより景気が急速に悪化し、企業がバタバタと倒産しました。その時、日本にどれほどの不良債権があるのかを急いで把握するために導入されたのが、金融検査マニュアルです。

金融機関はこのマニュアルに対応した査定で、格付けをし、多額の貸倒引当金を積むこととなりました。その結果、BIS規制で決められた自己資本比率(8%)を下回る恐れがある金融機関が、自己防衛するため、貸し渋り・貸し剥がしに走ったと言われています。

地域経済再生へ

金融機関は運用の多くを国債など引当金の必要のない債権にシフトし、また格付けでよい評価が出せる先には積極的に低金利で貸出を行いました。そして、そうでない先には貸し渋るという状況が長く続いた結果、地域金融機関である地方銀行や信用金庫は預貸率が50%を割るところも出てきました。

その結果、地域でお金が回らず、地域経済が疲弊してきたことから、金融庁としても対応を検討。新しい検査マニュアルは、これに風穴を開けることが期待されています。地域金融機関に関連する方針で、「小口の査定について金融機関の判断を尊重」するとあり、同時に「金融機関の将来にわたる収益構造の分析」についても言及。地域金融機関として本来あるべきビジネスモデルの構築を促しています。また、2月1日から適用が開始された「経営者保証に関するガイドライン」に基づく対応や、これを「融資慣行として浸透・定着させていく」よう、金融機関へ求めています。

情報収集で備える

管理会計の導入や合実計画の策定など、これまで連載された内容を実践し、自社が安全な貸出先とアピールすることが大切です。

これまでの金融検査マニュアルがどのような影響を及ぼしてきたかを考えれば、今回の改訂が大きな影響力を伴うと想像できます。経営者としても、自社を取り巻く金融環境を把握することがますます重要といえます。

 

安藤不動産  安藤 寿