金融委員会−金融講演会(3月7日)
消費税増税後の日本 〜今なすべき事

山口 義行氏  立教大学経済学部教授

「円安と消費税は輸出型大企業への所得移転」だと解説

厳しい増税後の見通し

立教大学の山口義行教授を招いて金融講演会が220名の参加で開催され、消費税増税前後の経済動向と、中小企業がやるべき事のヒントを学びました。

山口教授は、「アベノミクス」が実体経済に与えた効果について解説しました。

金融緩和による急激な円安によって輸出額が円建てでは増加し、上場企業の株価上昇と富裕層の高揚感で、2013年度上半期はGDP約4%の高成長を遂げました。

しかし、中小企業には金融緩和の恩恵はほとんどなく、円安による原材料高は経営を圧迫しました。また建設業が震災復興事業で手一杯の上に大量の公共工事が出されました。これに原材料高や駆け込み需要が重なり、人手不足で回せない上に採算の合わない仕事が溢れる事態を引き起こしたといいます。さらに不透明な先行き不安のため設備投資は振るわず、円安にもかかわらず輸出量も伸びず、アベノミクスは極めて限定的な効果に留まりました。

隣接異業種の可能性

一方で、小規模企業ならではの発展の可能性があることも、「隣接異業種」というキーワードと、具体的事例で紹介されました。

ある不動産会社の社長は、売上の5%分だけ新事業に取り組み、自身の趣味と本業を合わせて、車を眺めながら生活できる空間「ガレージハウス」を展開しました。そこに付属していたコンパクトな排気ガス排出装置が注目を浴びて注文が殺到し、マニア層から交通施設へ、さらに海外へも展開しました。

山口教授は、細やかなサービスは中小企業の得意分野であり、本業をできる範囲で応用して広げる「隣接異業種」の発想を生かせば、中小企業が活躍できると、参加者を激励しました。