第53回定時総会(4月22日)
「同友会らしい」黒字企業をめざそう

真の経営課題を発見して経営指針に反映し、企業体質の強化を

議案書をもとに「同友会らしい」黒字企業づくりを語る加藤代表理事

分科会で方針を深める

愛知同友会の第53回定時総会が開催され、366名が参加しました。当日は、活動方針を深める4つの分科会、総会議事、全体会、交流会の4部構成で行われました。

分科会では「労使見解の実践」「同友会と不離一体」「中小企業の仕事づくり」「中小企業を取り巻く情勢」の各課題について、これまでの到達点と新年度の重点を深めました。

総会議事では、杉浦三代枝会長が「総会は県ごとに特徴がありますが、愛知では分科会に分かれて年度方針を様々な切り口から深めています。そのため各地区10名は総会に参加し、支部・地区で学びを共有し、各テーマを深めていただきたい」と挨拶。

その後、「経過報告」「決算報告」「会計監査報告」の承認と新年度役員の選出が行われ、会長に杉浦三代枝氏、代表理事に加藤明彦氏の再任を含め、40名の理事が選出されました。

冒頭の挨拶を行う杉浦会長

地域社会と共に歩む

加藤代表理事は「議案書の情勢と展望から自社の経営戦略を見直すと共に、正規雇用を増やす、地域に納税をする、雇用の場を作っていく必要があります。今年度は強みを生かした部会も動き出します。人づくり、新しい仕事づくりに力を入れ、同友会らしい黒字企業をめざそう」と呼び掛けました。

来賓の大村秀章愛知県知事からは、「愛知県中小企業振興基本条例を制定・施行し、1年半になりました。中小企業約2500社を対象に調査も行い、皆様の喫緊な課題、利用状況やご意見・要望を吸い上げてよりよいものをめざしています。消費税増税の影響もないとは言えませんが、愛知県は自動車関係に加え、航空宇宙産業も好調です。皆様のお力を借りながら改めてこの地を盛り上げていきたい」とメッセージを頂きました。

全体会では各分科会で深められた方針を座長報告で共有し、今年度方針を再確認。懇親会では他県、会外報告者より挨拶、広報表彰、増強活動のPRが行われました。最後に山田博比古総会実行委員長より謝辞が述べられ、新たな一歩を踏み出しました。

 

第53回定時総会特集(分科会、全体会)

【第1分科会】
違いを知り、違いに責任を持つ経営とは

〜社員と共に生き、信頼できるパートナーへ
牧野 章一氏  アイエムタクシー(株) (新潟同友会副代表理事)

牧野 章一氏

第1分科会では「人を生かす経営」の根底である労使見解の理解を深めました。

倒産寸前の会社を引き受け社内体制を整えるも、容易に改革はならず、経営指針を創る会に参加して経営理念「共に生きる」を掲げるに至った牧野氏の報告から、社員を大切にするとはどういうことか、社員との関係を問いかける本質討議で各社の実践につなげました。

すがる思いで理念づくりに

牧野氏が3人目の社長として経営を引き受けた当時、アイエムタクシーはお客様の苦情に対する感覚がマヒしたような会社でした。そこで氏はかつてのヘビーユザーを訪ねて回り、指摘を受けた乗務員の乱暴な物言いや不誠実な態度等を紙に書いて貼り出します。そうすることで、お客様からどう見えるかが判るようにし、改善を促しました。

翌年の春闘で賃金体系の見直しを提案しますが、3回も変わった経営主体に対する信頼はゼロです。係争関係は2年以上続きますが、その間、介護タクシー等の新しいサービスに着手し、売上は春闘時の1.5倍になりました。そして新賃金体系の協定を締結し、運輸規則に沿った社内体制が整いました。

しかし、社員教育では礼儀やあいさつなど当たり前のことが仕事のベースだと言っていたにもかかわらず、それが疑われるような出来事が立て続けに起ってしまいます。会社の体制は整ったのに、これ以上どうすればよいのかと、すがる思いで理念づくりに向かったといいます。

牧野氏の報告から、労使見解に基づく経営を改めて確認

経営者の責任と共育ち

経営指針を創る会で「社員を当てにする勇気がなさすぎる」といわれた牧野氏は、自分が社員の成長を止めていたことに気づきました。自分で考える人間、つまり信頼できるパートナーは「育てる」のではなく「育つ」のだということ。そのためには、社員自身の成長を考えることが経営者の責務だといえます。

経営者の考え方の練磨と成長がないと、会社や社員の成長に対する最大の抵抗勢力になると牧野氏はいいます。会社や社員の成長は、私たちの学びにかかっているということです。

社員は「最も大切なパートナー」から「最も信頼できるパートナー」へと変わりました。人格の違いを「人を生かす」ということとどうつなげるのか、報告と討論を通して本質を深耕した分科会でした。

【第2分科会】
学び、実践し、同友会の『語り部』になろう

〜同友会で学んで、我が社をこう変えた!

佐々木 一道氏  十一屋工業(株) (港地区)

佐々木 一道氏

今年度の県方針の中に「語り部づくり」との言葉があります。これは同友会の用語や組織を詳しく語ることではなく、会での学びを素直に自社で実践し、より良い企業にすることです。その実践と報告のサイクルを確立し、同友会運動と企業経営を両輪として会社を発展させてきた佐々木氏から、会で学び実践する姿勢を報告いただきました。

地道な採用と教育

佐々木氏の会社は33年前の設立当時、主に工場内の請負業を行っていました。氏は2年後に社長となるも、右往左往するばかりで父親の知り合いに助けてもらう日々だったと振り返ります。業態を変化させつつ会社を拡大しますが、バブル崩壊により取引先が次々と廃業、会社もその影響を受けていました。その頃に入会したのが同友会です。

同時期に溶接の業態に注力し始め、他社との差別化に成功。後に大手ゼネコンから高校への技術講師役として紹介してもらうまでになりました。売上は業界の好不調に影響もされますが、採用は継続して行っています。

「利益が出ている間しか、会社の中身を変える行動はとれない」という考えのもと、設備投資や社員教育にも力を注ぎました。休日に後輩を指導する社員への給料や外国人の採用など、お金と手間をかけた結果、人材不足が叫ばれる建設業界のなかで豊富な人材を抱えます。社員の平均年齢も若いことから比較的に労働賃金も抑えられ、他社への優位性を誇っています。

学びを素直に実践することが、良い企業づくりへつながる

皆でめざす将来像

また、資金繰りに伴い真摯に指針を見直すことで、社内外の評価を確かなものにしてきました。社員一人一人と向き合い、自社に対して当事者意識を持ってもらうこと。会社の将来像を皆で練り直し、ネームバリューで判断されない業界一番の会社をめざしているとの報告でした。

グループ討論では、佐々木氏がグループ長から始まり地区会長、支部長と会で率先して役を受け、三位一体の経営や時流に合わせた業態の切替えという、会での学びを素直に実践してきた結果、ここまでの成長に至ったという意見が多く挙がりました。

語り部の意義を理解すると共に、同友会は自社の発展のためにあるという本質を再確認する分科会となりました。

【第3分科会】
“地消地産”で活路を拓く

〜中小企業の仕事づくりから持続可能な地域社会を展望する

加藤 洪太郎氏  名古屋第一法律事務所(政策委員会副委員長、瀬戸地区)
吉田 敬一氏  駒澤大学経済学部教授(中同協企業環境研究センター座長)

吉田 敬一氏、加藤 洪太郎氏

愛知県中小企業振興基本条例をどう生かすかを模索し、2つの手がかりを得ました。地域の困りごとに自社の仕事を通じて関わり、その解決をめざすこと。また、「地産地消」から「地消地産」への考え方の転換です。地消地産による地域での仕事づくりの具体的実践と、そこで期待される中小企業の役割について考え、新たな仕事づくり、市場創造のヒントを探りました。

地産地消から地消地産へ(加藤氏)

加藤氏は中同協のドイツ・オーストリア視察から、地域で生産したものを地域で消費する「地産地消」から、地域で消費するものを地域生産する「地消地産」の考え方への転換の必要性を主張します。

例えばドイツ、オーストリアでは、地域の財が、産油国や電力会社等の地域外に流出するのを防ぎ、可能な限り地域内に留めて循環させる政策展開がなされています。なかでもオーストリアのギュッシングではバイオガス化プラントを設置し、地域の中小企業が地域資源の「草」を使って、地域の電力を補う取り組みが行われています。

このように、外部に依存していた電力を自分たちの手で作る、つまり地消地産の視点こそ、新しい仕事づくり、地域経済の新生には不可欠であり、その主役は私たち中小企業であるとまとめました。

地域内経済循環を高める地消地産の考え方を学ぶ

地消地産で新たな仕事づくりを(吉田氏)

吉田氏からは、岩手県住田町の事例から、地域内経済循環の向上をめざす方向性の正しさが示されました。

住田町は東日本大震災後、木製の仮設住宅を提供したことで有名です。かつては豊富な森林資源を持ち、気仙大工はいたものの、材料加工を担う製材工場等はありませんでした。そこで住田町では、生産工程に必要な工場を少しずつ地域内に整備することで生産連関を作り、地域内経済循環を高めています。

持続可能な地域経済、国民経済の構築には、地域で必要な財・サービスを可能な限り地域内で生産し、仕事とお金が地域内で回る社会を作ることが重要です。こうした社会づくりに向けては、中小企業憲章や中小企業振興基本条例に描かれる、持続可能な地域づくり、企業づくりの方向性を手掛かりに、各社が同友会らしい企業づくりに邁進することが前提となると、期待と激励が示されました。

【第4分科会】
中小企業を取り巻く情勢

〜経済のグローバル化と愛知県の産業構造変化

梅原 浩次郎氏  愛知大学中部地方産業研究所 研究員

梅原 浩次郎氏

2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の影響を受け、愛知経済は以前とは様変わりしました。地域経済に大きな影響力を持ってきた製造業は、海外生産へさらに軸足を移しており、同時に非正規雇用の問題などが深刻化、国民の生活は厳しさが増すばかりです。

そこで第4分科会では、「経済のグローバル化」「愛知経済の産業構造変化」という2つのキーワードから、歴史的視点で愛知経済への認識を深めるとともに、中小企業を取り巻く情勢と、中小企業が発展するためには何が必要なのかを、梅原浩次郎氏の報告から考える機会となりました。

雇用の海外流出続く

1990年代以降の日本経済の長期停滞理由には、輸出関連企業の新興国進出と、社会の消費力を規定する所得収入の低下が挙げられます。それに連動して国内需要が一層停滞し、第2次産業を生業とする企業は需要と低賃金を求めてアジア圏への進出を強めてきました。その影響を受け国内では産業の空洞化が進み、大多数の企業は存続のためにさらに賃金水準の切り下げ等を続けている状況です。国民は所得水準が低下している状況のなかでも、将来不安から貯蓄傾向を強めているという特徴があります。愛知県の統計を見ると、2010年の県内雇用者数が約310万人に対し、県内企業の海外雇用者数は約68万人といわれており、県内企業が愛知で雇用できたであろう相当数の労働者の雇用が海外に流出してきたのです。

愛知県の産業構造を考える際には、製造業のなかでも51%が輸送機器製造業であることを踏まえることが大切です。リーマンショックを契機とする経済危機を受け、自動車産業関連会社が多くの比率を占める自治体は市税減収という事態を招き、現在もそれが起きる前の水準には戻っていません。これまで経済を支えてきた産業の環境変化によって、経済基盤ひいては社会そのものを揺るがす事態になっているということを、私たちは認識する必要があります。

また、世界シェアの更なる獲得をめざして大企業が海外進出を積極的に行うなかで、地域経済を支えてきた中小企業も、やむを得ず海外へ進出するという事例が起きています。

地域経済を支える中小企業への期待を伝える

循環型地域経済へ

梅原氏は、国が掲げる新自由主義的成長戦略は、大企業の発展をもたらすものであっても、中小企業や国民の豊かさにはなかなか直結するものでないといいます。これからの愛知経済は大企業や輸出に依存する体制から決別して、中小企業がその一翼を担う循環型地域経済への転換が必要だといいます。

中小企業は雇用の源泉であり、地域経済を支える大変重要な役割を担っています。「中小企業が発展してこそ国民生活が安定する」という中小企業への期待が述べられました。

【全体会】
同友会らしい黒字企業づくり

〜分科会座長と代表理事のパネル討論

左から、座長の青木氏、高瀬氏、和田氏、太田氏と加藤代表理事

分科会終了後の全体会では、4つの分科会座長(第1・青木義彦氏、第2・高瀬喜照氏、第3・和田勝氏、第4・太田厚氏)および加藤明彦代表理事が登壇し、パネル討論が行われました。それぞれの分科会報告における学びのポイントをまとめ、共有するとともに、全員で今年度活動方針の重点について、全員で理解を深める時間としました。

「語り部」の礎は三位一体経営の確立

第1分科会は人を生かす経営推進部門が担当し、アイエムタクシー・牧野章一氏が報告。社員をあてにする勇気を持ち、対策志向から目的志向で社員の自主的自己管理を推進することを学びました。

組織部門が担当した第2分科会では「同友会の語り部」とは何か、前名古屋第3支部長の十一屋工業・佐々木一道氏の実践報告から学びました。「同友会の事について詳しい」ことではなく、役員自らが同友会らしい経営を実践し、指針・採用・共育の「三位一体経営」を確立することが「語り部」としての礎となることを確認しました。

幅広く参画し、学びを自社へフィードバック

経営環境改善部門担当の第3分科会では「地消地産」をキーワードに、名古屋第一法律事務所・加藤洪太郎氏と駒澤大学経済学部教授・吉田敬一氏が報告。地域の困りごとに応える形で新しい仕事づくりに取り組むことがこれからの時代に必要であり、憲章・条例にはその方向性が示されていることを確認しました。

総務・情報部門担当の第4分科会では、愛知大学中部地方産業研究所研究員・梅原浩次郎氏による報告で世界経済と愛知経済の情勢動向を分析。長年、ものづくり日本一だった愛知でも雇用の海外流出を招き、各社による雇用の創出と地域資源を生かした仕事づくりの必要性を学びました。

加藤代表理事は総会議案書の組織図・理事役割図などの見方を紹介し、県方針がどのような体系で推進されているかを解説。地区活動だけでなく、自社課題に関連する組織・会合に幅広く参画し、学びを必ず自社へフィードバックするという「学んで実践」の基本姿勢を改めて確認しました。

 

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