金融アセスだより(第91回)

実質金利=名目金利−物価上昇率が成り立たない

日銀の総裁が黒田東彦氏になって1年が経過しました。その間に、「異次元の金融緩和」が実施され、物価上昇率も2%が目前となりました。

さて、金利には、名目金利と実質金利があります。名目金利とは、実際に支払った金利です。これは金銭消費貸借契約書に明記されているもので、表面金利とも言われています。

一方、実質金利とは、名目金利から物価上昇率を引いた金利です。これまで日本経済はデフレ状態が続いたため、たとえ表面金利が1%であったとしても、実質金利はデフレ分の約1%がマイナスのマイナスで計算され、2%程度と計算されていました。

しかし、2013年度の物価上昇率は1.6%となり、名目金利が1%であった場合、金融の教科書通りに考えると、実質金利は、マイナス0.6%になるはずです。ところが現状はそうなっておらず、異常な状態です。

物価が上がっても金利下がらず

金融委員会で助言を頂いている先生に伺ったところ、日銀の「異次元の金融緩和」政策による影響、民間の低迷する資金需要等をあげ、低金利状態の理由を説明いただきました。デフレは疲弊する地域経済の結果が現れたもので、物価を上げただけでは根本的な解決には至りません。

賃上げも、7割以上の会社が赤字状態ではままならないと予想されます。また、貿易・財政赤字が定着すると、投機筋により日本国債が売り浴びせられ国債の価格の低下、長期金利の上昇という展開もあるとも聞きました。

弊社は不動産業で、お客様の多くが住宅ローンを組んでいます。それゆえお客様の予算の中に、今後支払うべき金利も含まれています。しかし、固定金利で借りているのは全体の3割程度であり、残りの7割の方は変動金利を含むものです。

賃金が上がらず金利だけが上昇すれば、お客様の不動産に対する予算が削られるだけでなく、購入そのものを断念する方も増えます。また既に購入した方のローンの支払額が増えれば景気への悪影響もあります。先行きの不透明感の増す時代。また1つ注意しなくてはならない事が増えたと感じます。

 

安藤不動産  安藤 寿