第15期共育講座 第3講座(6月27日)
「生きること」「働くこと」「学ぶこと」をつなぐ

植田 健男氏  名古屋大学大学院 教育発達科学研究科教授

教育の目的は「人間的な自立」

第15期社員と学ぶ共育講座(35社、93名が参加)第3講座、植田健男氏の報告を紹介します。

教育とは何か

「生きること」「働くこと」「学ぶこと」は本来つながっているはずなのに、バラバラに切り離されている現状があります。学びの先に、自分がどうなっていくのか、どう生きていきたいのかを考える時間も与えられないまま、ただただ知識を覚えるだけの競争の中で、働くこととも遠くかけ離れた世界に置かれています。

「教育」は、しばしば知識や技術を「上」から「下」へと教え込むだけのものとして捉えられがちですが、これでは、人間としての育ちにはつながっていきません。

山田洋次監督は映画『学校』の中で夜間中学校を舞台に、「学ぶこと」の本来の意味を描いています。働きながら学ぶ彼らは、学ぶことが喜びであり、より良く生きるために学んでいくのです。

「働くこと」は本来、より人間らしく「生きること」と深く結びついており、それは「学ぶこと」を通して深められていくという関係にあります。

共に育て合うこと

教育において大切なことは、共に育ち合っていく関係だと思います。「できない」ことで人に評価を下すのではなく、学びの中身をもっと豊かに考え、できるようにしていけるような教育的な働きかけが必要なのです。

教育の目的は、「人間的な自立」を導くことにあります。自らを含めて、他者を人間として尊重し、自分の生き方や性、身体、仕事を大事にできること。どんなに辛いことがあっても、自分の命を捨てたり、諦めたりせず、最後まで自分らしく人間としての生を全うできることこそが人間としての自立です。

人間らしく生きていくためには、知識や技術が必要なことは確かですが、人間らしく生きることと無関係に知識や技術だけを覚えても、頭でっかちになるだけで、人間的に豊かにはならないのです。私たちの学びは、「何が人間らしいか」を一人ひとりが導き出すための学びである必要があります。

一人ひとりが「人間的な自立」を自らの課題として、共に育ち合いましょう。