税制学習会(7月30日)
「中小企業憲章」理念に反する課税強化とは

国民の幸せを実現する税のあり方について議論

課税強化の概要を解説

各種報道にもあるように、現在、政府税制調査会では、外形標準課税の適用範囲拡大をはじめとするさまざまな中小企業への課税強化策が検討されています。

政策委員会では、この問題に対して私たち自身が中小企業家としてどう向き合うのかを考える学習会を開催し、会員・事務局50名が参加し、議論を交わしました。

当日は、戸谷隆夫氏(政策委員・税理士)、和田勝氏(政策委員長)の2名から、専門家の視点、同友会運動の視点の両面からの報告が行われました。

戸谷氏からはまず、税とはそもそも何なのか、現在進められている議論のどこが問題なのかが論理的根拠のもとに明らかにされました。

そして現在検討されている、(1)外形標準課税の適用拡大、(2)中小法人の法人所得800万円に適用される軽減税率の廃止、(3)欠損金の繰越控除の縮小、(4)減価償却制度の定率法の廃止、(5)同族会社の留保金課税、特殊支配同族会社の役員報酬の損金不算入制度の復活についての個別解説と、それぞれの問題点を指摘しました。とりわけ税における「公正さ」の視点が強調された点が特徴的です。

同友会運動の視点から

和田氏からは、今回の課税強化に同友会が「なぜ」反対するのかを中心に報告されました。そのなかでは、中小企業憲章の視点から、今回の課税強化に対して、単に増税になるから反対なのではなく、(1)社会的・経済的に道理に合うものではないこと、(2)今回の議論は中小企業への誤った認識のもとで進められており、中小企業の実態を無視したものであること、(3)この問題が経営者のみならず、社員や地域住民の生活をも脅かすものであることが明らかにされました。

最後に豊田副代表理事からは、「今回の問題を支部、地区でも学ぶとともに、ぜひ社員とともに議論することで、我が事として捉えてほしい」との呼びかけがされ、学習会の締めくくりとされました。

 

【政策委員会】
中小企業憲章理念に反する課税強化に反対します(1)
なぜ同友会は反対するのか

※PDFファイルでご覧いただけます。
税負担のグラフ(PDFファイル)
PDFファイル(273KB)

法人税減税のための増税

マスコミ報道などで皆さんもご存知のように、2015年から段階的に法人事業税が引き下げられる方向で議論が進められています。

他方、1%の法人事業税率引き下げでおよそ4700億円ともいわれる税の減収分を補うための「代替財源」として、(1)外形標準課税の適用拡大、(2)法人所得800万円に適用される軽減税率(15%)廃止、(3)欠損金の繰り越し控除の縮小、(4)減価償却の定率法の適用廃止、(5)同族会社の留保金課税、特殊支配同族会社(1人オーナー企業)の役員報酬の損金不算入制度の復活、が持ち上がっています。

これらのうち、赤字企業にも課税する外形標準課税の適用拡大が大きな関心事だと思います。政府の課税の根拠は、法人税の「一部の大企業に偏った負担構造を是正」するというもの。しかし中小企業は社会保険料の4割、従業員への給与の所得税の5割を負担しており、日本経済の根幹を支えているのです。

社員の生活も脅かす

たとえ自社では減税でも、今回の問題を楽観視することはできません。いま検討されている問題は、自社のみならず、自社を取り巻く様々な取引先企業にも影響が出ると予想されます。同時に、給与総額も課税対象とされる外形標準課税は、経営者だけでなく共に働く社員の生活をも脅かすものなのです。その他の課税強化策についても同様のことがいえます。

私たち中小企業は、雇用を守り、社会保険料を負担するなど様々な場面で社会的役割を果たし、地域経済を支えています。そうした中小企業にさらに困難を強いることが、豊かな国民生活の実現につながるとは考えられません。

こうした考えのもとで、愛知同友会では6月16日付けで「『中小企業憲章』の理念に反する中小企業の課税強化に反対します」とのアピールを会内・会外に発表し、この問題に中小企業家として真剣に向き合うことを示しました。

税の公正さが欠如

このアピールのなかで、私たちは(1)今回の課税強化の議論は、中小企業の社会的・経済的役割を明確にした中小企業憲章の理念に反するものであること、(2)今回の議論は中小企業への誤った認識に基づいており、実態が踏まえられたものでないこと、(3)税において求められるべき「公正さ」の視点が欠如していることの3点を指摘し、運動の拠りどころとしています。

今後は、この3点の主張を会員の皆さんそれぞれに理解していただく、つまり私たち経営者自身がまず学ぶことが求められます。そして、経営者だけでなく、社員やその家族、地域住民すべてに関わる問題として向き合っていかなければなりません。

本紙では今号より3回にわたって、今回の課税強化問題について検討をしていきます。これを機に、支部・地区での学習と議論の参考にしてください。

 

 

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