第53回定時総会第2分科会(4月22日)
学び実践し「語り部」になろう

〜同友会で学んで、我が社は変わった!

佐々木一道氏  十一屋工業(株) (港地区)

自社に置きかえ議論をする

自分の仕事をしたい

当社は1981年に私の父が設立しました。構内作業の請負仕事で、私は、夜に学校、昼は社員と一緒に働いていました。2年後に父が他界し、事業を引き継ぎますが、数年経つと「自分の仕事がしたい」という気持ちが強くなりました。そこで自宅の前に2坪の小さな事務所を作り、溶接の仕事を始めました。

一難去ってまた一難

バブルが終わりかけた1992年、同友会に入会。その頃に事務所を拡大し20坪くらいの賃貸に引っ越しました。しかし、翌年頃からバブルの後遺症で、客先が次々と廃業していきます。売り上げも減り、毎月の現金が足りないことが2年ほど続きました。

1995年には、阪神・淡路大震災が発生。ご縁があって橋梁の耐震補強の仕事を頂きました。その後も別のメーカーから仕事を頂くことができ、それで会社も軌道に乗りました。それから10年くらいは黒字が続きました。

しかし、今度は耐震偽装の問題が起こり、建設業は再び不況になりました。

出会いが自信に

そんな時、ある工業高校の校舎の溶接の仕事を受け、その後、その高校から「溶接の講師をやってくれないか」という依頼を頂きました。2005年からそれが始まり、現在は週に5日・6時間フルで教えています。資格があると就職に有利なので、希望者にはJISの資格取得ができるよう指導しています。

会社があるのは社員のおかげと佐々木氏

経営指針の見直し

そんな関係から高卒社員を採用するようになり、社員も増えて事務所が狭くなってきたので、同友会の仲間に設計してもらい、新しい事務所を建てました。しかし、この時はまだ建設不況が続いており、受注するためには原価より安く売らないと売れない、というような状態が4年ほど続いていました。売り上げもピーク時の6割くらいにまで落ち込んでしまいました。

ここで初めて管理会計や企業変革支援プログラムに取り組み、経営指針を見直すことになりました。それまでも経営計画書はありましたが、お金があるときは資金繰りのことを考えなかったのです。

若手育成の大切さ

昨年から職人不足などの問題があり、建設費の高騰や工期の延長などが続いていますが、当社は高校生を採用して育てながら来ていますので、今年はバブル期以上の売り上げと利益を確保できると期待しています。

しかし、採用を継続していくと、教えるための場所も作る必要があり、今年は工場を建て、設備投資も考えています。溶接は一人前になるまで3〜5年はかかりますが、当社はマンツーマンで教えているので、早く熟練します。また、一人前に育つと利益も出てきますし、利益を出せないと会社を良くしていけません。今年は今までにない受注量が確保でき、耐震補強も例年の倍くらいの工事量が受注できました。

職人不足が叫ばれるなかで

建設業は、好景気ではありますが、名古屋で仕事があるのはあと3年くらいです。その後は、東京オリンピックも含めた関東での仕事を視野に入れていくと、若い人材を早く育てた会社が勝ち残るのではないかと思っています。

溶接の業界は職人が不足しており、65歳以上の人も現場の仕事をしています。しかし、高齢の職人が当社の若手の社員と同じ道具を持ってビルの10階まで上るとか、ベテラン職人たちがリタイアした会社には次の人がいないなどの問題があります。つまり、若い人材を育てることがいかに大切か分かります。今では、手塩にかけて育てた社員は、いっぱしの職人になって大変な仕事も苦に思わずに、目一杯働いてくれているので、「次の世代を継いでくれれば」と期待しています。

同友会で学んで会社が変わった

今後を見据えて

昨年、3年計画を作り、「魅力ある強い中小企業を目指そう」と、社員と話をする機会を増やしています。「社長の会社ではなく、みんなの会社」ということを強く働きかけ、不況の2年間を乗り切ってきました。その間は社員の給料は下げませんでしたが、それ以外の諸手当などは、譲れるところと譲れないところを話し合い、みんなで進めてきました。会社が今あるのは社員のおかげです。

そして、定期的に各部署での会議や全体会議も行うなかで、会社の方向性もみんなで決めようとやっています。

昔は一人の親方の下に50人くらいの職人がおり、指示するのは自分一人、そんな経営でした。しかし、それではいけないと気付き、5年かけて現在の組織を作ってきました。ですから、今は計画書も組織図もありますし、資金調達も返済計画も売り上げ目標もあり、会議で説明しながら、みんなで考えて、みんなで進める、そんな会社になっています。

同業他社の多くが高齢化で廃業していくなか、「当社だけは残って行くぞ、この業界で一番になろう」と目標を掲げ、みんなで頑張っています。

 

【文責:事務局 井上一馬】