請願署名スタート 「中小企業は経済を牽引する力であり、社会の主役」
中小企業憲章に反する課税強化に反対

東三河支部で行われた税制学習会(8月28日)

社員と家族を守り地域社会と共に

2015年から段階的に法人税が引き下げられる方向で議論が進んでいます。1パーセントの法人税率引き下げでおよそ4700億円の税収が減るといわれています。その減収分を補うための「代替財源」として、中小企業への課税強化策が持ち上がっているのです。

そこで愛知同友会では『中小企業憲章』の理念に反する中小企業の課税強化への反対決議をあげました。そして7月から9月にかけて数十回の税制に関する学習会を開催し、400名を超える会員が参加したのです。これらを踏まえ、9月16日の第5回理事会にて、今回の不公正な課税強化に反対する署名運動に取り組むことを決議しました。

今回の税制改正案の問題点は、地域と中小企業の維持発展を左右するところにあります。社員とその家族を守り、地域社会に根差す中小企業家の責任として、もの言わぬ存在では、本当の意味でその存在意義を示すことはできません。

企業の責務は雇用と納税

企業の社会的責任は「雇用」と「納税」です。社会全体の公益のために、適正な納税を行うことは、企業家の誇りです。しかし今回の課税強化の議論は、「取れるところから取ってやろう」という1点のみで進められています。

これでは「3割の黒字企業に税負担が偏っている」ことばかりが強調され、「中小企業憲章」の精神が全く反映されていないのです。

「中小企業憲章」に描かれている努力を果たさずに今回の税制改革が行われれば、強い者をより強く、そして弱い者はさらに弱くならざるを得ない、不公正な経済社会をつくることになるのです。

愛知同友会では2002年1月「金融アセスメント法制定署名」で集めた13万余筆の実績から、10万筆をめざしています。地域と中小企業の未来のために。

 

【政策委員会】
中小企業憲章理念に反する課税強化に反対します(2)
「税の公正」を求めて

政策委員  戸谷 隆夫

戸谷 隆夫氏(7月30日税制学習会にて)

不利是正の基本法

2010年の中同協第42回総会で採択された「中小企業憲章草案」では、「指針(5)・円滑な金融、公正な税制、適正な財政を築く」として「金融は産業育成と円滑な資金供給という本来の役割を取り戻し、政府は円滑な金融の責任を担う。公正な税制を設計し、適正な財政を実施する。その際、小規模企業や自営業者を特別に配慮する」としています。

1963年に制定された「中小企業基本法」では、中小企業の資本の脆弱性に鑑み、政府の責務として「第五条四・中小企業に対する資金の供給の円滑化及び中小企業の自己資本の充実を図ること」としています。これは、99年の中小企業基本法の改正後も引き継がれています。

自己資本の充実に逆行

中小法人の法人所得800万円以下に適用される軽減税率は、中小企業の自己資本の充実に資するものです。財務省の法人企業統計調査によると、リーマンショック後でも資本金1億円以上の企業の内部留保が32兆円増加しているのに比して、同1000万円以上の企業では4兆円減らしています。

軽減税率を廃止すれば、企業間格差が増大し、中小企業の競争力が阻害されることになりかねません。中小企業の健全な育成、資本の充実に逆行する税制は公正な税制と言えるのでしょうか。

法人事業税の外形標準課税について、政府税制調査会は「成長戦略の観点からは非効率事業からの撤退、収益力の高い事業への投資」を見直しの論点として挙げています。中小企業の7割が赤字と問題にしていますが、問題にすべきは「7割が赤字に陥る経済構造」だと思います。

2010年に閣議決定された中小企業憲章のパンフレット

ますます広がる格差

トヨタ自動車の14年3月期営業利益が過去最高を更新した陰で、下請け企業の7割はリーマンショック前の売上の水準に届いていません(8月14日付け中日新聞より)。外形標準課税を全法人に拡大することは、一部の超過収益力の高い企業を除き、大多数の中小企業の税負担を増大することになります。重層的な経済構造の下で必死の経営を続けている中小企業の腰を折ることが、公正な税制なのでしょうか。

欠損金の繰越控除制度は、企業の経営改善計画に資する上で重要な役割を担っています。中小企業は景気の動向に影響されやすく、単年度の赤字を余儀なくされることがあるからです。その後の利益で早期の回復を図るためにも、欠損金を取り戻すまで課税を見合わすことは不公正ではありません。

紙面の文字数に制約があるため、すべてには触れられませんが、今回の中小企業に対する課税の強化は、公正な税制に反するものであり、深い議論が必要だと思います。