金融アセスだより(第95回)

中小企業金融の歩み

1997年、金融ビッグバンに向けた金融機関の不良債権処理のための「貸し渋り」「貸し剥がし」の嵐が中小企業を襲いました。

この問題に対して、同友会は「金融アセスメント法制定」運動を展開します。個人保証など銀行と借り手の取引慣行の歪みの是正に言及し「国民と中小企業・地域に優しい金融システムの確立」をめざしました。全国100万名署名と1000の自治体で意見採択し、「リレーションシップバンキングの機能強化」への反映や、金融検査マニュアルの改定などの成果を残しています。

その後、第三者保証人の原則非徴求、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立などの監督指針が発表され、今日の中小企業金融の環境が作られています。

保証不要の前提条件

昨年12月、「経営者保証に関するガイドライン」が政府より発表されました。

中小・零細企業は企業と経営者個人が一体であるケースが多く、ガバナンス(企業統治)について外部のチェックが働きにくいという事情があります。また、中小企業は一般的に金融機関から借入をしています。金融機関はガバナンスのできていない会社に対し融資をすることはできないため、経営者保証を求めることによって、経営の規律を遵守することを担保してもらう慣行が日本で長年の間生きてきました。

経営者側から見るガイドラインの最大のポイントは経営者保証なしの融資が可能になることです。しかし、その前提条件には、法人と個人の明確な分離が必要となります。まずは個人商店から規律ある企業組織に成長することが求められるといえます。

 

(株)日研工業  出原 直朗