金融委員会(9月9日)
個人保証と法改正の変遷

岩崎 光記氏  岩崎法律事務所

岩崎光記氏

9月の金融委員会では、現在話題になっている「経営者保証の是非」を考える上で、その背景にある個人保証についての環境・制度の変化や法改正の変遷を理解するための学習会を行いました。講師は名西地区の岩崎光記弁護士です。その概要を以下に紹介します。

経営者保証の背景

まず事業に対する個人保証では、個人資産を遥かに上回る額の保証義務を負わなければなりません。また第三者が保証人になった場合は何の対価もなく、保証が執行されれば全財産を取られることになってしまいます。さらに、期間中は無制限の保証義務や半永久的な保証を負うことにもなる「根保証」も大きな問題となっていました。

また、離縁等で会社経営から全く関係が途絶えた場合でも、個人保証が付いて回るという理不尽が存在していました。そもそも個人資産とは比較にならないほどの大きな事業資産を、個人が保証することについても疑問が呈されてきたのです。

会社と個人の明確な分離へ

こうした問題から、個人保証の保証人保護に関連してさまざまな法改正や運用改善が行われてきました。

2004年、根保証の追加規定で、極度額を定めない契約や、5年を超える期間の契約が無効化できるようになりました。06年には貸金業法の改正で、年収の3分の1を超える額の貸付が禁止されています。08年の特定商取引法・割賦販売法の改正では、常識外の量を販売された場合に売買を解除できるようになりました。

そして11年の金融庁監督指針では、第三者保証の不求原則が確立されています。それに基づき、今年からは「経営者保証に関するガイドライン」で会社と個人が明確に分離し、財務基盤が強く、経営の透明性が確保されている企業については、経営者保証を求めない動きになってきました。

また民法においても、個人保証を原則廃止する動きがあります。しかし、そのなかにある一文の「当事者間の問題に法で介入しない原則」から踏み出す改正となるため、長期にわたり慎重な議論を重ねています。