第38回総会活動方針(1999.4.24)「自立型企業をめざして」
(T)ビジョンの実現をめざす第一歩にしよう
日本経済の規制緩和や構造転換が進む中で、大企業が得意とする大量生産品は人件費の安い東南アジア諸国で生産されるようになりました。流通やサービスの分野でもアメリカの貿易圧力によって、国内の規制緩和が進み大型店の進出や流通改革等、中小企業の経営基盤は弱体化しつつあります。このような時期に同友会では2003年までの「99同友会ビジョン」を発表し、「自立型企業づくり(第1の旗印)」と「地域社会とともに歩む中小企業(第2の旗印)」をめざして活動することを提案します。第38期の活動方針は「99同友会ビジョン」を実践する第一歩として、これからの同友会がどんな活動をすすめるかを提案します。
(U)自立型企業づくりをめざす
(1)「三位一体」を同友会で学び経営体質を強化しよう
「人間尊重の経営」を呼びかけ、仕事を通じた働きがい、生きがいを感じられる企業づくりを提案した「労使見解」(1975年)を前提に、「経営指針」の確立と、新卒者を対象にした「共同求人」、共に育つ「社員教育」の重要性を強調してきました。今後もこれらの課題は同友会運動の基礎を成すものとして重視します。21世紀に向けてさらに発展する企業づくりを進めるために、これらの3つの課題を三位一体のものとして実行しましょう。昨年からインターンシップで学生の研修を受入れています。この新しい動きを三位一体活動の発展と考え、インターンシップ(通産・文部・労働省が共同で1997年9月にまとめた定義で「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリア・職業に関連した就業体験を行うこと」としています)に参加して、地域社会の発展に役立つ企業づくりをすすめます。
(A)経営指針を確立し成文化しよう
自社が何のために存在し、社会的な存在意義は何かという「経営理念」は経営者の経営哲学であり、社員にとっては企業にかける思いの一致点です。どうやって実現するのかという「経営方針」、何を目標にしてどのように攻めるかという「経営計画」を総称して『経営指針』と言います。会に入会すれば「経営指針」を確立して経営体質を強化することは三位一体の活動の中でも一番大切な課題です。経営指針・経営計画づくり等、今年も各支部で研究会に参加を呼びかけて活動し、会員の過半数の企業で経営指針を確立することをめざします。新年度は企業の経営戦略研究にも着手し、会員の経営指針確立を支援します。
(B)共同求人で将来の経営幹部を採用しよう
「共同求人」の目標は、●原点は魅力ある企業づくり。●人間尊重の企業をめざす共育活動。●青年の自立を励ます人育て。●学校との信頼を広げる地域づくりの教育運動。●参加企業が増えることで地域の中小企業に対する評価を変える同友会運動等です。4月23・24日(総会開催日)及び、6月18・19日(2回・4日間)に「合同企業説明会」を開催します。学校訪問や学校懇談会等学校との交流を深め、参加企業は経営者としての学びを深める等、企業の経営体質強化にむけて活動します。
(C)「共に育つ」企業づくりをしよう
企業の発展を確実なものとして保証するのは人を育てる社員教育です。なかでも同友会では社員教育について「教育とは経営者にとって都合の良い人づくりではなく、社員一人ひとりの人生を創る人間教育であり、経営者自身の自己変革を伴う共育である」という「共に育つ」考え方をしています。今年も同友会では、新入社員の入社式や実力養成研修とそのフォロー研修、職場の中枢幹部を育てるリーダー研修等、派遣企業の経営者が一緒になって勉強します。
(2)独自戦略を持った「自立型企業」をめざそう
構造転換の時代の中小企業は、三位一体の経営体質強化を計っただけでは充分とは言えません。世界情勢や、経営環境の変化、業界の動向等を的確にとらえた経営戦略の研究が必要です。三位一体の経営体質強化を前提にしながらも、営業力の強化、技術力、開発力、販売力やサービスなど顧客を満足させる独自の戦略を持った「自立型の企業」をめざしましょう。この課題は企業によって様々です。業種や業態、企業をとりまく環境変化や経営者の考え方等、各社の状況に合わせて研究します。同友会では会員の状況に合わせた研究会を設け、そこを中心に会員の活動を支援して参加者を広げます。
(V)地域経済・社会の発展とともに歩む中小企業をめざす
(1)支部活動の充実をめざす
(A)地域社会とともにあゆむ同友会をめざす
中小企業は地域経済・社会の担い手として経済や環境の問題で、あるいは教育や文化・街づくりでも中心になって雇用を創り出し、消費を活性化する役割を担っています。「国民や地域社会とともに」の理念を掲げる同友会は、市民生活の発展をめざして活動します。これからの支部活動で大きな役割を持つのが、地域経済・社会とのつながりについての課題です。(地域経済とは「単に広がりで特徴づけられるのではなく労働の場、消費の場、レクリエーションの場として、一生の暮らしが具体的に展開する場」と考えています。分かりやすい単位として地方自治体に対応する区域を指します)支部や地区が対象とする地域にどんな課題があるのかをよく研究することがまず必要です。支部では会員経営者の経営体験の報告を基調にした例会、経済情勢の変化や経営課題でこれからを模索する例会等の他、会員の興味や関心に基づく多様な「研究会」や、地域経済への政策提言等、支部に参加する会員と地区への日常的支援をめざして総合的な活動をすすめます。地域で経営し生活する会員に参加を呼びかけて「研究会」を編成し、専門の学者・研究者にも加わってもらうとか、行政の政策マンに参加してもらって地域活性化のための政策研究をすすめるなど、これからの支部活動を強めます。
(B)新たな「市場創造」をめざす
現在の経済情勢を受けて、会員経営者は共同開発や業務提携、インターネットを利用した企業情報の交流、経済交流の要望など新たな市場創造の必要に迫られています。それには個別の中小企業が自立型であることと同時に、各企業の得意技をつなぎ合わせるネットワークづくりが重要です。得意技を持った中小企業がピラミッド構造に頼らないで、自立的なネットワークを創ることを「横請ネットワーク」と呼んで、これを推進します。新たな市場創造のために、関係する会員によるオープンの交流会を開催するとか、得意技交流の機会を創ること等は支部の役割です。経営課題を共有する同業会員の情報交流や、異業種を含む会員相互の市場創造等、「横請ネットワーク」を創り出すために経営戦略を研究します。
(C)政策要望を提言できる同友会運動をめざす
同友会が国の機関や各政党に「中小企業家の要望」を発表して25年になります。同友会の政策活動の目標は、●中小企業と国民生活の安定のための政策提言。●公的融資、助成制度の拡充を要望。●税制、信用保証制度、銀行の貸出姿勢等についての改善を要望。●街づくり、商店街活性化等の調査と自主的取り組み。●労働、福祉、教育等、施策の紹介活用。●国や地方自治体の中小企業支援施策の紹介と活用。●試験研究機関や中小企業情報機関の有効活用。等、中小企業をとりまく経営環境を改善し、整備することをめざしています。支部の総合的な活動の中でも、会員企業をとりまく経営環境の問題点や、地域づくりの政策課題で、同友会が地域社会を代表して政策づくりに参加したり、政策要望をさらに具体化できる力を身につけていきましょう。支部の政策活動をスタートして、他の中小企業団体や中小企業研究者、教育者、消費者等とも研究・交流して、将来に向かって中小企業の経営や市民生活を安定させる政策を提言できる支部活動をめざします。
(D)会員の様々な要望に応える「研究会」づくりを推進する
支部(や地区)の会員に共通するテーマや、会員企業が情勢変化に対応するためのテーマについて研究会を設けて研究したり対応を検討します。現在までに各支部では、(第1支部)経営指針、経営戦略、社員教育、(第2支部)ビジネスネットワーク、情報ネットワーク、経営指針、瀬戸地域活性化、遊友クラブ、DO遊クラブ、(第3支部)異業種交流、エントロピー豊明、バリアフリー研究会、(第4支部)経営計画、オフィス古紙リサイクル、大須商店街活性化、(三河支部)経営指針、三河金属部会、共育研究会、等の研究会が活動しています。支部ではさらに、こういった研究活動に加えてこれからの流通問題や、数年先を睨むとこの問題を抜いては経営できないと言われる事業系のゴミや環境保全に関する中小企業の対応問題、ISO取得等の研究会を整備して地方自治体と窓口を開きます。
(2)「あいち経営フォーラム(=全県研究集会)」を開催する
昨年、35周年記念事業として試行された「あいち経営フォーラム(=全県研究集会)」を今年度から実施します。「総会は同友会運動(活動)の実践的検証の場」として活動方針の議論と同友会運動の方向性を確認しあう性格を強化し、理事会が招集しますが、提案責任は総務会にあります。「経営フォーラムは中小企業の経営課題の実践研究の場」として、これまでに支部が取り組んできた秋の企画を各支部共同企画として毎年11月に開催し、企画面でも魅力あるものにします。各委員会と各支部の代表がフォーラム運営委員会を構成し、会員経営者の経営課題等を研究し、フォーラムのポイントや基本となる分科会構想を委員長・支部長会議も調整した上で実行委員会が活動します。毎年7月に開かれる「全国総会(第31回・東京)」、九月に開かれる「青年経営者全国交流会(第27回・愛媛)」、2月に開催される「中小企業問題全国研究集会(第30回・京都)」等、全国とも連携して愛知の総会や経営研究集会の成功をめざします。全国行事に参加することは同友会運動を大局で見ることができる役員や会員の成長につながります。支部では今後の活動強化を目標にして意識的に参加者を広げ、全国行事に触れた役員を増やしましょう。2002年(創立40周年)の全国総会を愛知で開催する準備をします。
(3)人口10万人の地域に1つの拠点づくりをめざす
同友会理念の「国民や地域社会とともに歩む中小企業」という考え方は、中小企業が県民生活を基礎的な部分で支え、地域経済・社会と密着した企業活動を進めることの大切さを示しています。日常の支部活動では地域経済・社会の経済・労働・教育・福祉・環境等、様々な課題で各種の専門家と交流し、市民生活と中小企業がともに発展する地域社会の実現をめざします。同時に支部活動は同友会運動の第一の目的・良い会社を創ることと、第二の目的・良い経営者になっていくという二つの目的だけではなく、第三の目的・経営環境を改善することを視野に入れて、中小企業支援施策の活用や政策研究等を活動内容に加え、政策提言力の向上をめざします。「人口10万人の地域に一つの拠点づくり」は、それが支部であっても地区であっても地域社会への提言力のある中小企業家団体をめざしています。会員経営者は地域社会の様々な問題で発言を求められるオピニオンリーダーをめざします。