第8分科会「地域に立脚した新たな環境ビジネスの登場」
平沼辰雄氏(株)リバイブ・社長

プロフィール
(株)リバイブ・、創業1984年資本金1200万円年商8.6億円社員数26名業種産業廃棄物収集運搬処理
1960年代は公害の時代といわれ、加害者は企業であり、被害者は地域住民でした。現在では企業も人もすべてが環境破壊の加害者でもあり、被害者でもあるのに、はっきりと意識してません。中小企業経営者として地域の環境問題(手のつけられる問題)から循環型社会に向けて自社を当てはめることから新たなビジネスチャンスが展望できるのではないでしょうか。
「ハノーバー万博」訪問
万博に廃棄物・環境問題からのパートナーとして参加しているDSD(製造業者から処理料を受けてドイツで容器包装廃棄物を回収、再利用をしている会社)のパビリオンを訪問しました。1日に約35〜60トン排出される廃棄物と会場の建設から撤去にいたる廃棄物のコントロールを、このDSDが中心となり、行っています。場内には、1500の包装廃棄物・その他の廃棄物の分別ごみ箱と、95カ所のガラスビン(白、緑、茶)・紙の分別ごみ箱が設置され、25個所の集積場へ集められます。これにより、建設から撤去までの全体で60%がリサイクルされ、40%が埋め立て処分となります。異なった国や機関に協力をあおぐことは並大抵ではなく、廃棄物問題を世界に理解させ、リサイクルを実現させたことは画期的なことだと感じました。
環境先進都市フライブルグの5つの環境政策
ドイツではNGOが評価する「環境に取り組む自治体」のコンクールがあります。これまで比較的小さな自治体が入賞していたこの賞に、人口20万都市であるフライブルグ市が「環境首都」として選ばれました。フライブルグ市の環境政策は、(1)交通、(2)エネルギー、(3)廃棄物、(4)都市、(5)その他の5つ分けられます。
(1)交通政策基本は「車の利用制限」です。市内は主要道路以外、車両を規制しています。路面電車、路線バスを拡充し、車利用者の公共交通機関への乗り換えを奨励するため、市域50km4方、総延長2900の広い範囲で使える定期券「Regio環境カード」を発行しています。この定期は他人への譲渡使用も可能で、週末には家族全員で乗り放題など、ユニークな取組みが特徴です。また、市電優先の信号官制で運行時間の短縮を図ったり路面緑化、車椅子や乳母車が乗りやすい低床車両の導入など、経済面だけでなく快適性からも、車からの乗り換え促進を進めています。
(2)エネルギー政策ごみ埋立地からのメタンガス利用、太陽光発電の導入などとあわせ、省エネ対策を実施しています。具体的には、既存の建物に関しても断熱などを施し、新しい建物に関しては断熱構造を義務化。ドイツ連邦基準より厳しいものです。さらには、屋上緑化や太陽エネルギー利用促進の実験としてエネルギー自給住宅などにチャレンジしています。
(3)廃棄物政策基本は経済負担の増加を回避することと、大気汚染防止のため、原則的に焼却をしない方針です。ごみ関連費用を増加させないため例えば、建築廃材では合板にするもの燃料にするものに分別すれば12DM(ドイツマルク)/トンですが、分別しなければ500DM/トンの賦課金が課せられるといった措置をとっています。これによって大幅にリサイクルが前進したといいます。
(4)都市政策次の世代に何を残すか、子供たちのために何をするかです。知的な施設が多く関心も高いことから、環境に関する情報収集も発信も容易になっています。建造物もひとつの環境であるという考え方から、例えば教会の塔よりも高い建物を近くに建てられないというような規制を設けています。
「まちづくち」に取り組むNPO環境団体との懇談
フランス軍の基地跡地に「住宅団地」をつくる過程について、NPO環境団体の代表のお話を伺いました。住宅団地づくりの基本計画は、市当局より作成されたものをベースに、入居希望者、すでに入居した人達で組織された「NPO」との話し合いで、内容が決定されます。そのため、基本計画の中で「NPO」の強い要求で変更になった例もあります。具体的には、団地の中心に市電を入れることになり、このことで住民は車に依存することなく、快適な移動手段を得る事ができています。
社名変更の意味と今後の展望BR>
解体工事をしていて、ゴミ処理が今後の問題になる、解体工事を突き詰めると,ゴミそのものをどうするかという課題にぶつかりました。とりあえずコスト高になることでクリアしてきたゴミ処理問題も、突き詰めて考えると社会システムの問題として解決を図らないと「将来的には事業事態が成り立たなくなる」危機感を感じました。解体屋・産廃屋というような下請け感覚では仕事にならない、しかし社会システムを変えることができない、その中でどうやって社会変革を訴えながら、社内改革を行うかを考えた上での決断でした。リバイブ(回復・復元)と名づけたのは、環境を回復・復元することが使命感と感じてのことでした。循環型社会の実現をめざして,今後も事業形態は変わっていくことと思います。
法改正により中小企業にも影響が
今年の6月に「循環型社会形成基本法」が成立しました。この法律では製造から処理まで排出事業者の責任をより明確に厳しくしたものです。これらの流れから考えて21世紀に生き残れる企業、淘汰される企業が見えてくるように思えます。例えば、包装業界を例にとって考えると、今までのような過剰包装とか廃プラ系統の包装は敬遠され、簡易包装化され、よりリサイクルしやすい包装材が主流になるでしょう。また、ドイツのように惣菜・酒・ビール・味噌・醤油などは量り売り、対面販売と買い物袋持参が主流になるのではないでしょうか。中小と大手の差別化を考えると今後のビジネスのヒントとなるような気がします。法律もお客様も環境問題を考えて,社会システムの中で「グリーン購入」が本格化するでしょう。現在は急激な経済社会の変化に直面しています。国民の意識、価値観についても、「量」から「質」へ、「もの」から「こころ」へ、「画一性」から「個性重視」へと大きく変化しています。今一度、これらの社会変化に、自社が地域と共に、自立型企業として何ができるかを考える中から21世紀を考えていきたいものです。
【文責事務局・上田】