合同入社式・記念講演 4月1日
働くこと、学ぶこと 生活をつくること
伊藤 彰男氏 三重大学教授
元気な主人公になろう
二十一世紀は皆さんの両肩にかかっています。社会人として、どのようにこれから仕事に取り組むか、よく考えてほしいと思います。
まず「働く」とはどんなことでしょうか。また、勉強の話と思われるかもしれませんが、自分の生活をどのように創っていくかという点で、働くことの意味を考えるのは大切なことです。
まず「働く」ということは、(1)社会のなかで、労働を通じて、自分の居場所を見つけることであり、(2)自分が成長し、自立していく活動のことです。
効率の追求が働く意味を変えた
一九六〇年代以降、働き方、働く方法が大きく変化してきました。効率を追い求める姿勢や生活が当り前になってきました。これは企業社会がもたらした結果です。
この事実は、ある意味で現在の日本の繁栄を支えてきましたが、働く人達にしてみれば、たいへん厳しい労働環境を生み出してきました。
「燃えつき症候群」とか、「過労死」が相次いで生まれました。今、健康を害しながらも働く人が非常に多い世の中です。街の書店はストレスに関する本で溢れています。
若者にモノ仲間現象が
最近の若者は、自分の殻の中に閉じ込もり、他人との交流をしないため、その術を身につけていません。どうすればいいのか判らないのです。
これは本人にとっては、非常に辛い事です。「他人とはなんと解からないものか」、会話をしても相手を信じる事ができません。
また若い人達は、モノへの執着心が強く、しかもブランド品に対して、同じモノを持っている事に安心する傾向が強く、その事により仲間意識を強く持っています。
『モノを持つ』という事が豊かさだと認識しているのですが、これらは流行のすたりが激しく、長続きしません。
仕事の中身にそった「学び」を
学校は、基礎を身につける場、一つの学習の場でした。しかし社会人は今までの学習を基礎にして、仕事の中身に沿った学習を身につけねばなりません。
仕事を通じて問題を解決する方法を学ぶ。自らの仕事に対してどうブチ当たるか、どうしたいのか、というのが社会人の学び方です。
今、わからない事でも、将来につないでいって、そして経営的に学ぶ姿勢も持って欲しいです。「学校を卒業したからもういい」と言うのではなく、必死に汗を流して学んで下さい。
生活に節目を
「働くこと」「学ぶこと」が別々ではなく、生活に根ざしたものにするためにも、生活の節目が必要です。
看護学生は「戴帽式」を行っていますが、これは自分の就く仕事に対しての意義を、儀式として行うという点で感動的なものです。
このような通過儀礼が最近は少ないです。会社の中で、生活の中で、自分の節目を作って欲しいです。
そうして、先輩達と大いに論議し、身近なところで沢山のことをやって欲しいです。その中で、競争相手を見つけてもらいたいのです。
自分が心底打ち込めるものを
仕事のことが二十四時間、頭から離れないという事でなく、自分のやりたい事がどれだけあるか、自由な時間をどれだけ持っているのか。これも大切な事です。
「あなたの趣味は?」と聞かれて「趣味なしが趣味です」とか、「ゴロットしている」とか、「本を読む」〜「どんな本ですか?」と尋ねると、「週刊誌です」と。別に構わないのですが…。
自分が打ち込めるものをどれだけ持つか、心底そこに打ち込めるものを、一つといわず、いくつもつくってください。
家族の一員として、何ができるかも考えて下さい。給料の一部を家に入れる人は少なくなったようですが、皆さんはぜひ、全額とは言いませんが、来月の小遣いは無いものと思って、その分を家に入れて欲しいと思います。
トータルライフプランづくりを
さらに、働くという事を通しての充実感と、職場の一員として、どのような関わりを持つかを考えて欲しいです。また「あの人の様になりたい」という人を見つけ出して欲しいと思います。
そしてまた、身の回りや地域社会の一員としても生きて欲しいです。
最後に。感動を味わう生き方をしてほしいのです。飽くなき挑戦やチャレンジも。「自ら、他者との交わりを切らない」、自分との違いを見つけるのでなく、違いがあって当たり前です。煩わしい関係をたくさんつくって欲しいのです。
そして働く者としてのルールや姿勢・規律、言い換えれば礼儀やエチケットを身につけて欲しいのです。
いろいろと皆さんに述べてきました。それは二十一世紀に働く者の基盤を貴方達自身が創るからです。
【文責 事務局・山田】