かなわない夢はない
理念は今、ひとり歩き中!
浅野 洋吉 (株)浅野製作所(第1青同)
今年三月から三名の短大卒(男性一名、女性二名)が入社し、職場の雰囲気が少し変わってきました。同友会の共同求人活動に参加した成果です。業績は良いとは言えませんが、五年先、十年先を考え、自社の営業力・サービス力を強化していくための新卒採用です。
また社員が働きやすい環境づくりのために、新工場も建設中です(本社事務所はすでに完成しました)。
浅野製作所は初代浅野由男が八十年前に木工製品の加工所として創業しました。ポンプの木台加工から出発し、戦後、動力ポンプを手がけ始めました。現在、九〇%がオーダーメイドで、産業用ポンプなどを組み立てています。
製造だけでなく販売とサービスも
十六年前、私が入社した時は、仕事の半分が他社へのOEM製品、残り半分は先代からの客の仕事で、営業をしなくてもやれていました。七年前に前社長が亡くなり、私が社長になりました。
量産品ではとうてい大企業にかなわないし、ブランドもない。技術もさほど売りものにならない。将来企業を発展させていくには、物づくりだけでは限界があります。
販売、そしてサービスも強化していく方向をめざし、現在,この三本柱で経営を行っています。
他社の理念を参考に想いを文字に
たぶん五年前だったと思いますが、販売店会の若手経営者の勉強会がありました。そこで経営計画の話が講師の先生より出ました。その中でチラッと「企業理念」の部分に触れられました。それが経営理念をつくるきっかけとなりました。
さっそくいろんな企業のパンフレットや会社報などを集め、自分の想いにあう部分を抜き出しでつくったのが、わが社の社訓(写真)です。
「何のために仕事をしているか」「これからどうしていくのか」「どんな会社にしたいか」などを社員に伝え、認識して、ともに自分の向かう方向へ協力してもらいたいと思い、つくりました。
新井社長に負けたくない
最近、同友会の言う「経営指針づくり」のやり方とは、「どうも違うな」と、感じ始めました。特に、衝撃を受けたのは、昨年五月、第一青同の例会での太陽電設の新井社長の報告を聞いたことでした。
報告が終わり、オブザーバーとして参加していた社員の人達が「自分たちがつくった」「社長と一緒にこれからも前進する」という発言をされました。そして「これからもがんばろう」と、社員と新井社長が泣きながら抱きあったのです。感激しました。
私のつくった理念(社訓)はまだまだ私一人のもので、社員に伝わっていない。こんなに一生懸命、自分と同じ気持ちになってくれる社員は、うちの会社はいるのか,考えさせられました。
社長がいかにその気になるか
経営方針は毎年一月、経営計画書として社員に手渡してはいますが、あまり良い手応えは得られません。
ただ計画書に「新社屋をつくる」「業界の平均よりよい給料を出す」などなど、書き込んで、自分の夢をどんどん進めています。それが工場の改築、新卒の受入れなどにつながっています。
最近気がついたのは、こちらも真剣だと社員も真剣になり、こちらが甘いと社員もそれに習って「まあまあ気分」になることです。社長がいかにその気になるかが、理念浸透の一番のポイントだと思います。
もう一度「社訓」を見直しても、決してひとりよがりでないと思うし、社員が理解できるものだと思うのです。
一番変わったのは社長自身
先日「中小企業家しんぶん」(三月十五日号)で宮城の(株)みうらクリーニングの三浦社長の「理念ができて会社が変わった」という記事を読みました。
社員が変わった原因を三浦社長は「一番大切なのは社長自身が何をどうしたいのかだと思います」「経営者は情熱と感動を持って、お客様にどんなことをしてあげられるか」だと答えています。しかし三浦社長自身が一番変わったのです。「私ももっと変わらなきゃ」、こんな気持ちになりました。
半歩づつ理念が浸透
さらに、三浦社長は「一番うれしいのは、こんな事をさりげなくやれるまで、みんながレベルアップしてくれた事です」と言われています。 よくよく自分の会社を振り返ると、少しずつ変わってきているのに気がつきました。
たとえば、朝礼前に自主的に工場の清掃をしてくれたり、いろんな提案が出されるようになったり。社訓をつくって以降少しづつですが、前進をしています。
今のところは「理念はまだ一人歩き中」です。しかし、社員も一緒になって歩みを始めています。頑張る元気が出てきました。
「俺(社長)はおやじ、お前(社員)は妻だ。お互いに補いあって、いい家庭(会社)をつくっていこうよ。しかしいっしょにいてもなかなか気持ちが通じあえない。俺の気持ちはここに書いてある。ウソいつわりはない。これが社訓だ」と、社員に社訓を理解してもらおうと、このような話をしています。
◆会社概要◆
・創 業 一九一七年
・設 立 一九五〇年
・資本金 二千四百万円
・年 商 三・六億円
・社員数 十三名
・事業内容
各種ポンプ製造、附帯品卸売、各メーカーポンプ販売、サービス